間違いなしの神配信映画『ロマンティックじゃない?』Netflix
神配信映画
ラブロマンス編 連載第7回(最終回)
ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回はラブロマンス編として、全7作品、毎日1作品のレビューをお送りする。
王道ロマコメじゃあり得ない!恋愛を皮肉っていた女性がヒロインに!?
『ロマンティックじゃない?』Netflix
上映時間:88分
出演:レベル・ウィルソン、リアム・ヘムズワース、アダム・ディヴァイン
ロマンチックコメディーは、ハリウッドのお家芸として幾多のヒット作を生み出してきた。乱暴にくくると「本人(だけ)が予想もしなかった相手と結ばれる」というプロットを延々と繰り返しているのだが、定番化や形骸化に陥らないよう、いつの時代も新しい切り口を探求してきたジャンルと言える。
古い例えで恐縮だが、例えばロマコメを代表する『プリティ・ウーマン』(1990)でブレイクしたジュリア・ロバーツは、後にジャンルの常識を疑う批評的な怪作『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997)に主演しているし、ロマコメの敏腕脚本家だったリチャード・カーティスは監督デビュー作『ラブ・アクチュアリー』(2003)でお約束感のある9つのストーリーを同時進行させる離れ業で世間を驚かせた。
本国アメリカでは劇場公開され、日本ではNetflixから配信されている『ロマンティックじゃない?』もまた、「ロマコメとはこういうもの」という価値観の解体と再構築に挑んでいる。レベル・ウィルソン演じる主人公ナタリーは王道ロマコメではおよそあり得ないタイプで、子どもの頃に憧れた「いつか王子様が」的ファンタジーと現実は違うと思い知り、他人に軽く扱われることも甘んじて受け入れている自己評価の低い女性だ。
「いや、それもまたロマコメの定番でしょう」と言われるかも知れないが、そういう主人公が“美しく花開く”のがオールドスクールな定番であって、ナタリーはビジュアル的にも内面的にも「陽気に振る舞う太った親友キャラ」に近い(実際のところ、本作は多くのロマコメに出演してきたレベル・ウィルソンの初主演作でもある)。
そんなナタリーが頭を強打したことで「王道ロマコメの世界」に迷い込み、現実世界に戻れなくなってしまう。住んでいる下町はカラフルな花であふれ、感じの悪い隣人は応援してくれるゲイキャラに変貌していて、行く先々にイケメンが現れ、ナタリーの魅力に気づいて賞賛してくれる。
これが天国かと思いきや、ナタリーにとっては居心地の悪い地獄! ナタリーは「ロマコメの世界」から抜け出すために、イケメンとの恋愛を成就させて物語を終わらせようと決意するが……。
劇中では当然ながら、有名ロマコメ映画のオマージュやパロディーが頻出。先ほど挙げた『プリティ・ウーマン』はもちろん、逆説的アプローチの『ベスト・フレンズ・ウェディング』もしっかり引用されていることにはロマコメの歴史の大きさを感じざるを得ない。そしてそれらの遺産を笑い飛ばすと同時にリスペクトを示し、お約束の裏をかきながら現代ならではの着地点に落とし込み、ジャンルの爽快さは失わない。
相当に高いハードルを設定したものだと感心するし、演出・脚本・演技のウルトラC的なバランスの良さにも助けられ、一つの解答にたどり着いていると感じた。ロマコメというジャンルは今後も更新され続けるだろうが、本作は現時点での一つの総括であり、時代を映す鏡として機能していると思っている。(村山章)