デビューから10年~菅田将暉大特集~
実は、今年は俳優生活スタート10周年イヤーでもある菅田将暉。変幻自在のキャラクターと多才ぶりで、いつまでも飽きさせない若手俳優の筆頭株ですが、まだ26歳ということで、先々どこまでいくのかが楽しみで仕方がありません。そんな彼の出演映画を年代順に、追っていこうと思います。(村松健太郎)
はじめに:フィルモグラフィーを公開規模ごとに仕分け
菅田のフィルモグラフィーの特徴を示すため、公開規模ごとに作品仕分けをしていきます。
300スクリーン前後=【】
100から200スクリーン前半=()
100スクリーン以下=<>
このように、出演作品の規模感で仕分けすることはナンセンスかもしれませんが、菅田に関しては意味をなします。年代と規模で仕分けしながらキャリアをさかのぼると、実に変幻自在に、軽やかに作品の規模のボーダーラインを飛び越えていることがわかります。
2019年は連ドラ主演でスタート!
俳優デビュー10周年イヤーの今年はまず主演ドラマ「3年A組ー今から皆さんは、人質ですー」からスタート。視聴率以上の反響を呼びました。そして今年の映画1作目は『永遠の0』(2013)の山崎貴監督による大作戦記ドラマ【『アルキメデスの大戦』】です。
本作の菅田は舘ひろし演じる山本五十六にスカウトされる数学の天才・櫂直(かい・ただし)。航空戦力の充実を目指す山本から大型戦艦建造派の計画分析を依頼された櫂直は、見積もりの穴を見つけ、そこから大型戦艦建造計画とその後の戦争を防ごうと動きます。櫂直は天才ではありますが、そのために変人でもあり、周りの人をかき回していきます。その上である決断を迫られます。のちに大和と呼ばれることになる大型戦艦を巡る物語ですが、大掛かりな戦闘シーンは冒頭だけで、実は非常にロジカルなドラマとなっています。
終盤の舘ひろし、國村隼、小林克也、橋爪功、田中泯と言ったベテランとの舌戦シーンも戦闘シーンに劣らずハラハラドキドキさせてくれます。
この大作の後に控えるのが一転して50スクリーン規模の<『タロウのバカ』>。『セトウツミ』ですでに競作済みの大森立嗣監督最新作です。共演にはインフルエンサーとして注目を浴びるYOSHIと、菅田の監督デビュー作となるショートフィルム「クローバー」で主演を務めるなど信頼の厚い仲野太賀。
そして、早くも来年2020年の公開がアナウンスされたのが18年間に及ぶ男女の出会いと別れの物語【『糸』】。中島みゆきの「糸」から着想を得た小松菜奈とのダブル主演作品です。
ここからは菅田出演映画を総まとめしていきます。
「仮面ライダーW」でデビュー
デビューは平成仮面ライダーシリーズの11作目「仮面ライダーW」。桐山漣とのダブル主演作で菅田にとっては文字通りの演技デビュー作でした。「W」は架空の都市“風都”を舞台にした探偵ライダーで、原点回帰的な作風は高評価を受け番組終了から約8年、続編漫画「風都探偵」が連載されています。連載誌の表紙を桐山漣と共に飾ったこともファンを喜ばせました。
その「W」の劇場版作品2009年の【『仮面ライダー×仮面ライダー W(ダブル)&ディケイドMOVIE大戦2010』】、そして2010年の【『仮面ライダーW(ダブル) FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ』】でスクリーンデビュー。その後、計6作の「W」に出演します。
2011年、一連の「W」関連作が一段落すると他の作品へと動き出します。仮面ライダー以外の最初の出演映画となったのが(『高校デビュー』)。実は、数少ない学園恋愛映画だったりします。学生役は多いのですが、恋愛ものは少なく、王道の少女漫画的映画というと本作と“最後の高校生役”宣言をした『となりの怪物くん』くらいになります。特筆ポイントは脚本を『銀魂』シリーズの福田雄一が担当していること。ちなみに、2019年のアメコミ映画『シャザム!』では福田監修の日本語吹替版でメインボイスキャストを務めています。
2012年には人気ドラマシリーズの映画化作品【『麒麟の翼 ~劇場版・新参者~』】に松坂桃李と共に出演。これ以降、共演が続く松坂と初共演です。その後、出演したのが<『王様とボク』>。事故に遭いそのまま12年間眠り続けた6歳の心を持った18歳の少年の役で松坂とは幼なじみで親友の設定です。なお、今年4月クールに放送された松坂の主演ドラマ「パーフェクトワールド」(フジテレビ・関西テレビ)では、菅田が主題歌を担当したほか最終回に出演したのも記憶に新しいです。
2013年の芥川賞受賞作品の映画化<『共喰い』>では日本アカデミー賞新人賞を受賞するなど高い評価を受け、映画俳優としての立ち位置を確立させ始めます。同じ年の秋に公開された<『男子高校生の日常』>では野村周平と吉沢亮という今となってはかなり貴重な並びを見ることができます。この映画と同日公開だったのが松本潤主演の【『陽だまりの彼女』】。舞台挨拶を“はしご”したことも話題になりました。
朝ドラで知名度アップ!
2014年3月にかけて朝ドラ「ごちそうさん」に出演し売れっ子になっていきます。映画では賞レースを賑わした綾野剛との共演作<『そこのみにて光輝く』>に出演。翌年公開された、山田孝之の怪演が話題になった(『闇金ウシジマくんpart2』)でも綾野と共演しています。女装姿を披露した(『海月姫』)の出演はその後、趣味となる服飾の仕事に大きくはまるきっかけになりました。
2015年はふり幅が広く、本領発揮と言ったところです。森川葵と共演したロードムービー<『チョコリエッタ』>があり、その後は人気コミックの映画化【『映画 暗殺教室』】、福田雄一監督・脚本の<『明烏 あけがらす』>、綾野剛・松坂桃李と再共演した(『ピース オブ ケイク』)があります。朝ドラに出てお茶の間で広く知られるようになった一方で作品群はバラエティー豊かです。
2016年は映画9本のラッシュ
2016年は9作の映画に出演する多忙ぶりで、その一方で2作のドラマにレギュラー出演しました。行定勲監督の異色のサスペンス(『ピンクとグレー』)で始まったこの年は、<『星ガ丘ワンダーランド』><『ディストラクション・ベイビーズ』>といった作品が連続公開された後に、ヒット作の続編【『暗殺教室~卒業編~』】に出演。仮面ライダーシリーズを除くと初の続編出演です。<『二重生活』>、<『セトウツミ』>の後でまたメジャー大作の【『何者』】、【『デスノート Light up the NEW world』】に出演、そして小松菜奈との共演作(『溺れるナイフ』)で怒濤の映画出演ラッシュを締めました。
音楽活動も開始
2017年は大河ドラマ「おんな城主 直虎」に出演。アニメ作品『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』でメインボイスキャストもこなし、舞台出演もしています。映画ではまず(『キセキ -あの日のソビト-』)。人気バンド覆面バンドGReeeeNの楽曲「キセキ」の誕生秘話を絡めた青春劇で、今作では横浜流星、成田凌、杉野遥亮の4人がグリーンボーイズ名義でCDデビューを果たしました。その直後から本格的にアーティスト活動を開始することになります。
春の【『帝一の國』】と夏に【『銀魂』】と大型ヒット作に出演する一方で秋には寺山修司の戯曲を基にした<『あゝ、荒野』前篇・後篇>に主演して映画賞の主演部門を独占しました。『銀魂2 掟は破るためにこそある』の冒頭でそのことをいじられる展開があります。『あゝ、荒野』はその話題性と反比例して劇場公開数が少ないことが議論を呼びました。その後、又吉直樹の芥川賞受賞作の映画化【『火花』】に出演しています。
2018年も連ドラ、朝ドラに出演する一方で、最後の制服姿宣言をした王道学園ラブコメ【『となりの怪物くん』】、そして大ヒット作の続編【『銀魂2 掟は破るためにこそある』】に再登板。その後、趣里のブレイク作となった<『生きてるだけで、愛。』>で相手役を務めました。
そして2019年に『アルキメデスの大戦』と『タロウのバカ』。2020年には『糸』があります。
まとめ
と、駆け足で40作品を見ていったところで、その作品の仕分けを確認すると見事なまでの【】=大が19作品、()=中が7作品、<>=小が14作品となっています。
大規模作品とそれ以外の作品が19対21で分かりやすく半分半分。さらにどの年を見てもバランスよく散らばっているのもわかります。役どころもデビュー作の仮面ライダーから、等身大の若者まで何でもあり状態です。同時並行でドラマやアーティスト活動、ラジオ出演、ショートフィルムの監督やプロデュース、服飾の仕事もこなしており、多才な彼が今後どのように進化するのか、気になるところです。