映画ONE PIECE、キャラクターの魅力~ゾロ,ナミ,ウソップ,サンジ,チョッパー編
前回のルフィに続き、映画『ONE PIECE』を通して「麦わらの一味」のメンバーたちの心境や戦闘スタイルの変化を追ってみたい。(大山くまお)
剣豪・ゾロの戦闘スタイルの変遷
まずは、ロロノア・ゾロ(中井和哉)。「三刀流」の剣士であり、世界一の大剣豪を目指している男だ。
劇場版第1作『ONE PIECE ワンピース』(2000)ではまだそれほどクールでもなく、ルフィ(田中真弓)の愉快な相棒といった感じ。ルフィと一緒におでんを食べて涙を流して喜んだり、自分のおでんを横取りしたルフィと殴り合いのケンカをしたりしていた。
それが次作『ONE PIECE ねじまき島の冒険』(2001)からどんどん無口になる。『ONE PIECE 珍獣島のチョッパー王国』(2002)では、「最強」を名乗るホットドッグ将軍(郷里大輔)を「三刀流」の「龍巻き」で撃破。
『ONE PIECE 呪われた聖剣』(2004)はゾロをメインに据えたストーリー。ゾロは幼馴染のサガ(中村獅童)に「三刀流」から「焼鬼斬り(やきおにぎり)」を放つも通用しなかったが、最後はルフィの応援を得て「一刀流」でたたっ斬った。なお、この作品では犬猿の仲のサンジ(平田広明)とお互いに名前で呼びあっている。
『ONE PIECE ワンピース オマツリ男爵と秘密の島』(2005)では、海賊たちの仲間割れを誘うオマツリ男爵(大塚明夫)の策略にかかり、サンジと完全に決裂。こっちのほうがらしいと言えばらしい。『ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵』(2006)ではメカ島の防衛システムから放たれた1,000本の矢を「三十六煩悩鳳(さんじゅうろくポンドほう)」でなぎ払い、マジ将軍(加藤浩次)を「龍巻き」で吹き飛ばした。原作の過去のエピソードを映画化した『ONE PIECE ワンピース エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊たち』(2007)では、全身刃物人間のMr.1(稲田徹)相手に苦戦するが、「一刀流」の居合「獅子歌歌(ししソンソン)」を初披露して勝利している。
「FILM」シリーズに突入すると戦闘スタイルもさらにド派手になる。『ONE PIECE FILM ワンピースフィルム STRONG WORLD』(2009)では、強敵のシキ(竹中直人)にいきなり「七十二煩悩鳳(ななじゅうにポンドほう)」を放っていく。最後は「九刀流」の「阿修羅 穿威(アシュラ うぐい)」でDr.インディゴ(中尾隆聖)を葬った。『ONE PIECE FILM GOLD』(2016)では、ダイス(ケンドーコバヤシ)を「一刀流」の「黒刀 死・獅子歌歌(こくとう し・ししソンソン)」で斬り捨てた。
敵の副将クラスと一騎打ちをすることの多いゾロだが、戦闘スタイルはどんどんパワーアップしており、一対一では負けることがほとんどなくなっている。また、「三刀流」が印象的だが、いざというときは「一刀流」で決着をつけることが多いようだ。
ナミが激怒した相手とは?
ナミ(岡村明美)は麦わらの一味の航海士。元は海賊専門の泥棒で、お金やお宝に目がない。
1作目『ONE PIECE』では伝説の海賊ウーナン(野沢那智)が残した宝を奪うことに夢中。『ねじまき島の冒険』ではダイヤモンドクロックに目の色を変え、『珍獣島のチョッパー王国』ではバトラー伯爵(江原正士)から宝物の情報を得るために「子分にでも何でもなっちゃうわ!」と陽気に言い放った。この頃のナミは、善悪のことはあまり考えず、ひたすら金とお宝を得るために邁進していたようだ。
そんなナミだが、『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』(2003)では、無力さゆえ自分の命を軽んじる少年アナグマ(酒井美紀)に激怒。ゾロの刀を突きつけ、「生きてる意味がない? 生きていける状況があるんだったら、四の五の言ってんじゃないよ!」と怒鳴りつけた。劇場版全作を通じて、ナミがここまで怒ったことはない。戦災孤児であり、育ての親を殺したアーロン一味の元で必死に生き延びてきたナミだからこその怒りだった。しかし、『オマツリ男爵と秘密の島』では、オマツリ男爵の策略にかかり、助けに来てくれたウソップ(山口勝平)を平手打ち。敵に「短気で怒ってばかり」と言われる始末だった。
ナミがヒロインらしさを見せるのは、『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜』(2008)。瀕死の高熱を発して手当を受けたナミは、Dr.くれは(野沢雅子)の助手をしていたチョッパーに優しい声をかけて彼の心を癒やした。『STRONG WORLD』では、シキの囚われの身に。我が身を犠牲にしてでも故郷の「東の海」を守ろうとする姿が印象的だった。『GOLD』では、旧友のカリーナ(満島ひかり)にチーム(仲間)を信じることの大切さを訴えかけた。
戦闘にはほとんど参加してこなかったが、『ONE PIECE ワンピース エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊たち』(2007)以降は、ウソップが考案した「天候棒(クリマ・タクト)」を使って敵を撃退している。
臆病者から戦士に成長したウソップ
「麦わらの一味」の中でもっとも変化したのが、臆病なお調子者のウソップ(山口勝平)かもしれない。
『ONE PIECE』ではまったく戦闘に参加していなかったが、『ねじまき島の冒険』では果敢に戦闘に参加。泥棒の少年アキース(矢島晶子)に向かって「助けられて当たり前だなんて思うヤツは、俺は大っ嫌いだ!」と語る熱さと捨て身の勇気を見せる。最後はパチンコ技の「火炎星」で敵を撃破してみせた。
『エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊たち』では、ミス・メリークリスマス(金月真美)とMr.4(高塚正也)の猛攻でボロボロになるが、ルフィが死んだと嘲笑され、「男には、どうしても戦いを避けちゃならねぇときがある。それは仲間の夢を笑われたときだ」と名言を吐き、チョッパーとの連携技「ウソッチョハンマー彗星」で逆転勝利を飾る。
『STRONG WORLD』ではウソップの戦闘力も格段にアップ。強敵のシキに対しても臆さずに「火の鳥星」を放つ。新世界編となる『ONE PIECE FILM Z ワンピース フィルム ゼット』(2012)からは「緑星」を何度も使用し、「竹ジャベ林」では海軍の軍勢を撃退した。サウザンドサニー号のガオン砲も見事に操り、狙撃手としての腕を遺憾なく発揮。『GOLD』ではバカラ(菜々緒)相手に苦戦するが、機転をきかせて反撃。「何をしに帰ってきたの?」と問うバカラに「仲間を救うためだ!」と堂々と答え、見事に倒してみせた。実は戦士としての成長が一番大きいのがウソップだ。
優しい男・サンジ
逆に、いい意味で変わらないのが「麦わらの一味」のコック、サンジである。とにかく女好きの彼の行動は、いちいち筋が通っており何より優しい。
初登場の『ねじまき島の冒険』では、ナミの身体にオイルを塗ったり、ハニークイーン(林原めぐみ)が全裸で登場するとエキサイトしたりしていたが、溺れている子どもを見つけると真っ先に助けに行く優しさも見せた。『デッドエンドの冒険』でもナミに怒鳴られて落ち込むアナグマに優しい言葉をかけて、生き抜くことの大切さを説いた。
『呪われた聖剣』ではサガの味方になったゾロと対決するが、非情を貫いたゾロの勝利に終わる。逆に言えば、サンジは非情に徹することができなかった。『エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜』では高熱に苦しむナミを人一倍心配し、雪崩に巻き込まれても身を挺してナミを守ろうとした。サンジの優しさはポーズだけではない。『STRONG WORLD』でも、さらわれたナミを心配して1週間もまともに寝ていなかった。ただし、女好きが仇になる場合もあり、『GOLD』ではバカラの色香に惑わされて運気を吸い取られてしまう。
変わらないのは蹴り技中心の戦闘スタイルも同じ。『ねじまき島の冒険』では靴を失って苦戦するが、最後はブージャック(田の中勇)を蹴り技で圧倒。他にも数々の敵を蹴り倒している。
『STRONG WORLD』ではニコ・ロビン(山口由里子)を花嫁にしようとするスカーレット隊長(銀河万丈)に激怒し、「悪魔風脚(ディアブルジャンプ) 野獣肉(ヴネゾン)シュート」で決着をつけた。『Z』ではビンズ(香川照之)相手に大技「恋のメテオストライク」を叩き込んで圧勝。『GOLD』ではロビンを人質にとったタナカさん(濱田岳)に激怒し、「悪魔風脚(ディアブルジャンブ) 一級挽き肉(プルミエール・アッシ)」で勝利した。女好きを怒らせたら怖い。
臆病なんかじゃないチョッパー
「麦わらの一味」の船医、トニートニー・チョッパー(大谷育江)は『珍獣島のチョッパー王国』から登場。最初は怖がってばかりいて冒険を拒否していたチョッパーだが、王冠島のモバンビーや珍獣たちに「動物王」に祭り上げられ、動物たちを虐待するバトラー伯爵一味と対峙することになる。クライマックスではランブルボールを使った「腕力強化(アームポイント)」の「刻蹄 桜(こくてい ロゼオ)」などでバトラー伯爵を攻め込んだ。
『エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜』はチョッパーが「麦わらの一味」に加わるまでのストーリーだ。ルフィとサンジに料理されそうになって逃げ回ったりしていたが、ルフィからの「仲間になれ、バケモノ!」という呼びかけに心動かされる。チョッパーはただ仲間が欲しかっただけなのだ。
「FILM」シリーズからはチョッパーの戦闘力も上がり、『STRONG WORLD』ではシキに「刻蹄 桜吹雪(こくてい ロゼオミチエーリ)」を放ち、『Z』では「毛皮強化(ガードポイント)」から大量の銃を撃ちまくる「チョッパー戦車」を披露した。
医者としての姿勢が際立っていたのは『Z』だった。意識を失って漂流していたゼット(大塚芳忠)を、信念を持って治療する。その後、ゼットが襲いかかってきて「麦わらの一味」は大きなダメージを負い、チョッパーは自分を責めるが、ゾロもサンジもチョッパーの信念を責めることはなかった。
基本的に争いごとを好まない性格だが逃げ回っていたのは最初だけで、あとは勇敢に戦っているチョッパー。まだ劇場版では披露していない「怪物強化(モンスターポイント)」に変形する日は来るのだろうか?
新作『劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』』でも「麦わらの一味」は間違いなく大暴れするはずだ。彼らの活躍を楽しみに待ちたい。