上半期No.1ブレイク俳優・横浜流星特集
今年上半期ブレイク組を代表する若手俳優が横浜流星。1月期のドラマ「初めて恋をした日に読む話」でピンクの髪の由利匡平(ゆりゆり)役でレギュラー出演、深田恭子の教え子で恋の相手役でもあるキャラクターを演じきって、ドラマの視聴率以上のインパクトを世間に残しました。そして今年も折り返したところで話題の2クールサスペンスドラマの後半戦「あなたの番です-反撃編-」に二階堂忍役で参戦、その勢いのまま主演映画『いなくなれ、群青』が公開されます。(村松健太郎)
今年は『愛唄 -約束のナクヒト-』『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』『チア男子!!』と、すでに3本の出演映画が公開されてきましたが、本作『いなくなれ、群青』は横浜にとって『兄友』『愛唄』に続くいわゆる“単独主演”作品で、座長として作品を背負って登場しています。
映画は河野裕の同題小説(階段島シリーズ)の映画化で、原作はそれこそ新海誠監督作品のようなファンタジックな世界観で、これを実写でやるのはどうなのか? とも感じました。しかし、横浜の持つ、独特の“線=繊の細さ”(線というより、繊細の繊の字がぴったりです)が物語の舞台となる謎の多い“階段島”の不安定さ、危うさを体現しているようで、実写でも原作の世界観を成り立たせることに成功しています。
スーパー戦隊シリーズからブレイクまでの道のり
彼のキャリアを振り返ると、10代前半には俳優デビューを飾っています。その一方で、極真空手・初段の実力者で2011第7回国際青少年空手道選手権大会13・14歳男子55kgの部で優勝(世界一)するという成績を残しています。
俳優として大きな転機になったのが、伝統のスーパー戦隊シリーズの38作目「烈車戦隊トッキュウジャー」。ここでトッキュウ4号ことヒカリ役を一年間演じました。
松坂桃李や千葉雄大、山田裕貴といった成功例もあり、“特撮モノで注目を浴びて”というのは若手俳優のブレイクの方程式のようですが、戦隊モノは一度に変身する人数が多かったり、巨大化ロボットパートがあったりといわゆるドラマパート(素顔パート)が少なくて、出演者が個として前に出るには意外に難しかったりするのですが、横浜はその壁を乗り越えてみせました。ちなみに「トッキュウジャー」は志尊淳も輩出しているのでなかなかスゴイ戦隊ですね。最近の戦隊シリーズは前後の作品や仮面ライダーシリーズとのコラボレーション企画も多く、2016年頃までトッキュウ4号を演じ続けます。
その一方で、横浜は学園モノに活躍の場を移行していきます。人気コミック・ライトノベルを原作にした学園モノ(いわゆるキラキラ映画)は特撮でブレイクした若手俳優の受け皿役になっていて、いいステップの場になっています。横浜も『オオカミ少女と黒王子』『honey』『兄友』と立て続けにこのジャンルに出演、劇中のポジションも着々と上げていきます。
このジャンルでの彼の最新作が『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』。同作は2014年の剛力彩芽主演、山崎賢人共演の『L・DK』からキャストを総入れ替えの続編という、ちょっと変わった作りの映画でした。横浜はこの続編から登場する新キャラクター・久我山玲苑を演じています。“ゆりゆり”のピンク頭に先行する形で赤髪姿を披露していました。
キラキラ映画も肝心の原作がなくなってきて、それに入れ替わるように作られるようになったのが“恋愛要素をメインから外した”学園モノ。元々はヤンキー映画やスポーツモノから始まったと思うのですが、これらの映画が扱うような全国制覇といった出来事ほどでないにしても、日々の大小の事柄に(イケメンが演じる)若者たちが悪戦苦闘する事柄は、それはそれでドラマをちゃんと生みます。
横浜の出演作でいえば『虹色デイズ』『青の帰り道』『チア男子!!』などがそれに当たるでしょう。またその流れの中の映画であり、音楽映画でもある『キセキ -あの日のソビト-』は、人気覆面グループGReeeeNの結成秘話やヒット曲を基にしたストーリー。そして、翌年にも姉妹編的な「GReeeeN」映画プロジェクト第2弾『愛唄 -約束のナクヒト-』に出演しています。
『キセキ』の公開時に横浜は、菅田将暉や成田凌、杉野遥亮と共にグリーンボーイズ名義で音楽番組にも出演。2018年には「今日もいい天気feat. Rover (ベリーグッドマン) / 未完成」でソロ歌手としてもCDデビューしています。
作品を担う俳優へと成長
これまでに紹介した作品群や『全員、片想い/イブの贈り物』などのように、今までの作品は主演といっても主演グループの一員的な立ち位置が多かった横浜ですが、今年に入ってからはウェイトの大きい立ち位置を獲得していきます。
『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』では『キセキ』に続いて杉野遥亮と共演。ヒロイン・西森葵(上白石萌音)と久我山柊聖(杉野)の関係に不満を持つ柊聖の従兄弟の玲苑を演じました。憧れの従兄弟・柊聖の恋人として葵は相応しくないと言っているうちに葵に惹かれていき奇妙な三角関係を作っていくキャラクターでした。『チア男子!!』では「動物戦隊ジュウオウジャー」出身の中尾暢樹とW主演として映画全体を背負う立場にもなっていきます。
同じく今年の公開作品で、横浜が本格的に学生役を超えて、一世代上の若手社会人=野宮透として主演した『愛唄 -約束のナクヒト-』。病に侵されながら最後に運命の恋に出会う役どころで、この映画の核を担いました。そして、9月6日公開の主演作『いなくなれ、群青』です。
横浜流星の“繊の細さ”が物語を紡ぐ『いなくなれ、群青』
“魔女”が支配するという謎の多い島“階段島”で偶然の再会を果たした高校生の七草(横浜)と真辺由宇(飯豊まりえ)。七草はこの謎だらけの状況に納得できない由宇と共に島の謎、島を支配するという“魔女”の正体を追っていきます。
横浜は矢作穂香、松岡広大、中村里帆、松本妃代といった同世代の共演者を時に先頭に立って率いてみせ、時には一歩引いて周りを引き立たせてと主演俳優として、主役として映画全体をけん引します。
物語はファンタジックな世界観でアニメーション向きの題材ですが、原作からいくつかの部分をアレンジして映画にうまく落とし込んであります。さらに“現実と地続きでありながらも、どこか違う土地の感覚のある場所”で本格的なロケが行われたことで、“ここではないどこかにある”階段島の風景がうまく映像化されています。劇中のキャラクターなどもどこにでもいそうでいて、その一方でどこか極端な部分を持つように造形されていて、現実の延長線上にあるファンタジー世界を創り上げています。
そんな『いなくなれ、群青』の真ん中で映画を支えるのが横浜流星です。“線が細い”というとネガティブな響きがありますが、彼の持つ独特の“線=繊の細さ”は儚さや不安定さを持つ“階段島の物語”の主人公としては最適です。飯豊(実はスーパー戦隊出身)が演じる由宇が直情的なキャラクターのヒロインなので、主役カップルのキャラクターの対比も鮮やかです。
これからどうなる?勢いの止まらない横浜流星
とりあえず、当面はドラマ「あなたの番です-反撃編-」と映画『いなくなれ、群青』ということになりますが、Instagramのフォロワーも100万人を突破したとのことで、今の彼の勢いは止まりそうもないので、今年の内でもまた新しい作品について何かあるかもしれません。
過去のキャリアから見ればアーティストとしての音楽活動や映像よりも先に演者としてデビューしていた舞台などでもまたその活躍を見たいところです。ちなみに、横浜流星というインパクトのある名前、本名だそうです。