間違いなしの神配信映画『ハンス・ジマー ライブ・イン・プラハ』Netflix
神配信映画
音楽編 連載第7回(全8回)
ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回は音楽編として、全8作品、毎日1作品のレビューをお送りする。
兄貴肌で友情に厚い、巨匠ハンス・ジマーの心意気に感動
『ハンス・ジマー ライブ・イン・プラハ』Netflix
上映時間:138分
監督:ティム・ファン・ソメレン
出演:ハンス・ジマー
大ヒット映画のサントラ・スコアを数多く手がけ、オスカーやグラミー賞などにも輝く現代の巨匠・作曲家であるハンス・ジマー(1957年ドイツ・フランクフルト生まれ)がハリウッドを飛び出し、2016年5月6日にチェコのプラハにあるO2アリーナで行った壮大な自作曲ライブの模様を完全収録。凄腕ミュージシャンぞろいの大編成バンドやチェコ・ナショナル交響楽団&合唱団を従えて、本人もただ指揮をするわけではなく、プレイヤーのひとりとしてギターやピアノを弾きながらステージ狭しと大暴れ。曲間のMCでは制作の裏話をしゃべり倒すなど、サービス満載で魅せる138分だ。
以前から業界内では面倒見の良さで知られ、後進の育成にも積極的。自身が率いる作曲家グループ「リモートコントロール」の若手に作編曲を手伝わせ、有望株をスタジオに売り込む後押しも続けているというジマー。友情にも厚く、本公演でも1曲目の『ドライビング Miss デイジー』『シャーロック・ホームズ』『マダガスカル』のメドレーが終わった後で、現在まで約35年以上に渡って一緒に音楽を作っている大切な仲間の2人を先ずメンバー紹介。親しかった故トニー・スコットへ捧げる『クリムゾン・タイド』『天使と悪魔』のメドレーの次は、兄のリドリー・スコットが「朝の9時に電話してきて、剣闘士(グラディエーター)の映画を作ろう」と誘ってきたエピソードを披露。その『グラディエイター』メドレーでは途中にギター協奏曲を実験的に挿入するなど、サントラとは違うコンサートならではの楽しみも盛り込んでくる。
ゲストも多彩で、元祖『ライオンキング』メドレーでは「サークル・オブ・ライフ」の冒頭でレボ・Mが登場してあの雄叫びで客席を沸かせ、『マン・オブ・スティール』あたりから目立つギタリストがいるなと思ったら、元ザ・スミスのジョニー・マーだったりする。もちろん人気楽曲『パイレーツ・オブ・カリビアン』メドレーでは会場も大盛り上がり。エレクトリックなクラリネット協奏曲風に趣を変えた『アメイジング・スパイダーマン2』も聴き逃せない。
最大のハイライトは『ダークナイト』メドレーの演奏に添えられた作曲秘話。ジョーカー役のヒース・レジャーの訃報に際して「曲を抑え気味にしようか迷ったが、やはり彼の演技に本当に敬意を表すなら、カミソリの刃や割れたガラスのような鋭さが必要だと、思いとどまった」と語る場面は必見。そして『ダークナイト ライジング』上演中のコロラド州オーロラの映画館で起きた銃乱射事件の犠牲者と遺族を悼みつつ「あれから世界は何も変わっていない。今宵はプラハから腕を伸ばし、心を込めてこの音楽をお届けします」とオリジナル曲「オーロラ」を披露する場面も感動的。
クライマックスを飾る『インターステラー』と『インセプション』メドレーはほとんどプログレッシブロックのステージを観ているような圧巻の一大スペクタクル。こんな凄い映画音楽コンサートを体験したの、初めてかも!(東端哲也)