人間失格なダメ人間でもいい!ウーマン村本の不良品論
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は日本文学史上もっともスキャンダラスな生涯を過ごした太宰治の生きざまを描き、蜷川実花監督と小栗旬がタッグを組んだ、映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』を鑑賞してもらいました!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆)
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
「走れメロス」「斜陽」などで知られる作家・太宰治の「人間失格」誕生に迫るドラマ。写真家で『ヘルタースケルター』などの監督を務めた蜷川実花がメガホンを取り、酒と女に溺れながらも圧倒的な魅力を持つ男の生涯と、太宰をめぐる正妻と2人の愛人との恋模様を描く。
パラ兄夫婦は、「夫婦失格」!?
村本:沢尻エリカさんが演じている愛人が言う「愛されない妻より、ずっと恋される愛人でいたい」って言葉は響いたな。
中川:僕は宮沢りえさんが演じる奥さんに関して、夫の帰りを待っている気持ちってこんな感じなんかなって想像したなぁ。
村本:お前の奥さんと、太宰の奥さんは全然違うからな! 太宰の奥さんは、ちゃんと夫の才能を認めて、愛人の存在も本当は絶対に嫌なのにお仕事の一環だからってことで耐えて耐えてきたわけ。お前の奥さん、お前の才能なんて絶対に認めてないやんか! それにあの奥さんは蚊帳の中でずっと待っていたけど、お前んとこの嫁はすぐに飲み行くやんか! お前んところのタイミングは、お前が蚊帳の中に入った瞬間に嫁が飲みに出て行くから、蚊帳の中で交代やねん。もう夫婦して人間失格! 夫婦失格や!
中川:僕の奥さんだって、才能認めてくれていると思うよ! 多分やけど(笑)。
村本:あの玄関でのセックスシーンは良かったね。
中川:僕も玄関でしていた時期はあったけどもうないな。
村本:きっと今頃宅急便屋さんと玄関でしてるわ!
中川:逆に興奮する!
村本:しかし、パラダイスのとこと違って、あの奥さんは本当に素晴らしいと思う。ていうかさ、男と女は結局母と息子みたいな関係になるんやなって思ったわ。太宰が奥さんに甘える描写とか観ているとさ、もう究極なわけよ。太宰も奥さんの前では安心して子供になれてさ。あの関係はいいよな。しかし二階堂ふみは最初からヤバい感じしかなかったけどな。あんな「家の前で待ってるよ」とか言われたらめっちゃ怖い。
太宰の生き方に共感!
中川:でもあんなに大っぴらに不倫したり、心中したりしていたってさ、今の時代やったら、謝罪会見をせなあかんやつやん。
村本:太宰がこの時代に生まれていたら絶対に面白くない人になっちゃいそうやな。いや、でも太宰は今の時代でも謝罪せえへんのちゃう?
中川:太宰ってちょっと村本っぽいなって思ったわ。結構メンヘラに好かれるしな。
村本:おれの場合はメンヘラに好かれるんじゃなくて、メンヘラを作ってしまうメンヘラ製造機やねん。なんでやろな。みんな相談に乗ってくれるはず! って思ってしまうのかも。おれの場合は、とうとう親父までメンヘラになってしまった。普段、親父は兄弟の前だとけっこう破天荒キャラなんやけどさ、おれが「元気?」って聞くと「元気じゃない」って言ったり、「お金ある?」って聞くと「お金ない」って言ったり(笑)。
中川:僕はずっと村本は太宰のようなメンヘラ収集機と思っていたけど、製造機やったんやな。それは恋愛でもそうなん?
村本:恋愛に関しては、正直おれがメンヘラになってしまうの。本当の愛を知ってしまったら、すごいメンヘラになる。だからこの話はこの辺にしておこ!
ダメ人間を肯定してくれる映画
中川:ぼく、初めて映画を観て原作本を読みたいって思ったかもしれん。原作ていうのとはちょっと違うかも知れないけど太宰治の「人間失格」読んでみたくなったわ。この映画って、「人間失格」を映画化したものなんかなって思っていたんだけど、実際に観たら「人間失格」が出来上がるまでの様子が描かれていて、読みたいなって思ったね。
村本:おれはもうここに来るタクシーの中で読みながら来たくらい。太宰治の生き方って、欲望のままに生きて、女にも溺れて、三島由紀夫にも説教されてなかなかカッコ悪い。こういう奴おるやん! 心中にしてもさ、女には覚悟があるのに男には覚悟がなくて。「死にたい」ってめっちゃ言っているメンヘラ男。ファッションいかれ野郎に女たちが「私も一緒に死ぬ!」って言って集まってきている。でもこの人、めっちゃ人間のみじめったらしいところがすごく出ていて、人間らしいねん。だからダメでもいいっていうさ。自分が不良品だって思っている人たちが、勇気もらえる作品だと思うよ。
中川:村本はけっこう共感するとこありそうやな。太宰はあの時代の炎上キャラやろ? 村本も炎上キャラやんか!
村本:恨み、嫉妬、妬み、太宰が持つ太宰気質みたいなの、おれ持っているもんな。編集者に先輩作家の悪口とか言っていたやん。でも多分あの時、太宰が自分は悪口を言っているって分かっていたと思うわけよ。自分もよく先輩のこととか、同僚のこと言っちゃってさ。自分の中では悪口だって十分分かっているのに言っちゃう。でも太宰のすごいところはそんなダメな自分をちゃんと理解している。だからこそ、不良品に寄り添えるんだと思う。そこはエリートの三島と全然違うところだったと思うよ。
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』は9月13日より全国公開
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』公式サイト
(C) 2019『人間失格』製作委員会
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ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。