アポロ11号、月面着陸から50年!宇宙に魅了された映画たち
今週のクローズアップ
ブラッド・ピットが宇宙飛行士を演じる映画『アド・アストラ』が9月20日に公開を迎えます。第76回ベネチア国際映画祭でコンペティション部門に出品され本作でモチーフになっている事柄を中心に、宇宙を舞台にした映画を紹介していきます。(編集部・大内啓輔)
『アド・アストラ』2大スターが共演!
『アド・アストラ』では、トミー・リー・ジョーンズとブラッド・ピットという2大スターが父子役で共演を果たします。地球外知的生命体探求に尽力した父(トミー)の背中を見て育ったロイ・マグブライド(ブラッド)は、父と同じ宇宙飛行士の道に進みますが、尊敬する父は地球外生命体の探索船に乗り込んだ16年後に消息を絶ってしまいます。あるとき、父は生きていると告げられ、父が太陽系を滅亡させる力がある実験“リマ計画”に関係していたことも知ることに。
壮大な映像美
宇宙を舞台にした映画では、まずは宇宙空間をいかに描くか? ということが重要な要素となってきます。『アド・アストラ』では、これまで『裏切りのサーカス』『ダンケルク』などの話題作に携わってきたホイテ・ヴァン・ホイテマが撮影を務めており、リアルで深遠な宇宙を表現しています。2014年のクリストファー・ノーラン監督による『インターステラー』でも撮影を担当した彼の手腕を見て取ることができます。
2013年には、その映像表現で絶賛を集めたアルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』が公開されて大きな話題を呼びました。古くは1968年、宇宙を哲学的な表現で描いた『2001年宇宙の旅』などを経て多彩な表現が模索されてきた“宇宙映画”の歴史のなか、この作品をきっかけに映画での宇宙表現は格段の進化を遂げたといっても過言ではありません。
また、今年の2月に日本公開された『ファースト・マン』では、人類初の月面着陸に成功したアポロ11号の船長ニール・アームストロングの人生が描かれました。大ヒットを記録したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再び組んだ本作では、コックピットからのショットを多用しながら、CGに頼らず実際の宇宙映像などを使用するというこだわりで壮大なイメージが作り出されました。茫漠とした空間ではなく、宇宙飛行士の視点からの宇宙という“状況”を描くことで、新たな表現に挑んでいます。
宇宙空間でのサスペンス
そんな宇宙という限定的な空間だからこその緊迫したサスペンス展開も必見です。『ゼロ・グラビティ』では、サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが共演するという豪華さでしたが、ここでは絶体絶命の窮地に立たされ、いかにして地球へと帰還するか、ということがリアルに描き出されます。映画を観たあとは、まさに身体に重力(グラビティ)を感じてしまうほどの映像体験をもたらしました。
過酷な運命を背負った移民女性を描いた『エヴァの告白』などのジェームズ・グレイが監督を務めた『アド・アストラ』は、父をめぐる真相を追い求めるというサスペンスにもなっており、宇宙という未知なことも多く、制限された空間での物語が展開していくことで、その緊迫感がいやおうなしに増していくことになります。「宇宙版・地獄の黙示録」と表現されることもあり、その重厚な物語展開にも注目です。
地球外知的生命体の探求
そんな本作では、ロイの父親であるクリフォードは地球外知的生命体探求に尽力した人物という設定になっています。その父をめぐる謎が物語を引っ張っていくわけですが、父親を演じるトミーは宇宙に縁の深い俳優でもあります。日本のテレビCMでもお馴染みになったトミーと宇宙人をめぐるイメージを形成したのは、ウィル・スミスとのコンビで知られることになる『メン・イン・ブラック』シリーズです。
地球外生命体をめぐる都市伝説や陰謀論をパロディー化し、UFOや宇宙人といった存在を荒唐無稽に描き出した同シリーズ。トミーは続編である『メン・イン・ブラック2』『メン・イン・ブラック3』にも引き続き出演し、人気を博しました。今年、キャストを一新した第4作『メン・イン・ブラック:インターナショナル』が公開され、シリーズの根強い人気を証明してみせました。
なお、そのトミーはクリント・イーストウッドが監督と主演を務め、ジェームズ・ガーナー、ドナルド・サザーランドといったスターの共演で話題になったスペース・アドベンチャー『スペース カウボーイ』にも出演するなど、やはり宇宙とかかわりの深い人物といえます。ちなみにサザーランドは『アド・アストラ』にも出演しており、ロイの父の旧友であるプルイット大佐役を務めています。
地球外生命体を敵として描くか、もしくは友好的な相手として描くかということや、サイエンスフィクションとしてどこまで“本気”か、ということに違いはあれ、スティーヴン・スピルバーグやリドリー・スコットといった映画作家たちをはじめ、さまざまな作り手たちの想像を掻き立て、多くの作品が生み出されてきました。
父子の絆
そんなトミーが父を演じ、ブラッドが子となる『アド・アストラ』ですが、宇宙と“父子の絆”めぐる物語でいえば、ここでも思い出すのはクリストファー・ノーラン監督による『インターステラー』です。本作では、マシュー・マコノヒー演じるクーパーら有人惑星間航行する宇宙飛行士のチームをはじめ、その娘・マーフとの“時をかける”親子の愛が描かれました。
ノーラン監督自身、グレゴリー・ペックが主演を務めた往年の名作『アラバマ物語』を参照したと語るように、普遍的な人間ドラマが新たな映像技術によって語り直されています。『アド・アストラ』では、宇宙を舞台にした父子の絆がどのように表現されているのか、そこも見逃せないポイントです。