敵キャラしか登場しないとはシリーズ史上初!?その誕生に迫る
今週のウォーキング・デッド
「ウォーキング・デッド」シーズン10、第2話はこのシリーズ中でかなりの異色作! 今シーズンは、最初から変化球が続いてる! 第2話の重要ポイントはココだ。(平沢薫)
※ご注意 なおこのコンテンツは「ウォーキング・デッド」シーズン10について、後半の「もう観ちゃった方向け」はネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。
今週のウォーキング・デッド~シーズン10第2話
<これから観る方向け:ネタバレなし>今回の新キャラ、“囁く者”のガンマはかなり重要人物になりそう!?
監督は、前シーズンの最終話、今シーズン第1話の前回に続いて、グレッグ・ニコテロが担当。彼はシリーズの最初から特殊メイクを手掛けつつ、2012年からエピソード監督に進出、このシリーズの劇場版も監督することが決定、今や重要エピソードといえば彼が担当するようになった感じも。
特に今回は、エピソードを見終わると、なるほど第1話と同じ監督が手掛けるべきエピソードだと納得がいくはず。
また、今回も新キャラが登場。“囁く者”の一員、“ガンマ”が初登場する。演じるゾーラ・バーチは、スカーレット・ヨハンソンと親友コンビを演じた『ゴーストワールド』(2001)でゴールデン・グローブ賞にノミネートされた個性派女優。新作には、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のエミリア・クラークと共演するフィリップ・ノイス監督のサスペンス『アバブ・サスピション(原題) / Above Suspicion』(2019)が控えている。
彼女が演じるガンマは、いよいよ迫る戦闘の中で、かなり重要な役目を果たしそうな気配が!?
<もう観ちゃった方向け:ネタバレあり>“囁く者”たちだけ描く異色エピソード!脚本の仕掛けもスゴすぎる!
シーズン10は、最初から飛ばしてる。前回は宇宙から始まったと思ったら、今回はエピソードの最初から最後まで、敵キャラしか登場しない。そんなエピソードは、このシリーズ史上初だろう。
とにかく描かれるのは、“囁く者”のみ。アルファ(サマンサ・モートン)とベータ(ライアン・ハースト)の出会いといった彼らの歴史を描きつつ、彼らの心理がたっぷり描かれる。特に“囁く者”のリーダー、アルファの娘リディアに対する複雑な心理が掘り下げられる。娘に自分と同じようになってほしいと願う一方で、同じにはなってほしくないとも思う、アルファの苦悩が切実に伝わってくるのは、アカデミー賞の主演・助演の両方にノミネート歴のある演技派女優サマンサ・モートンの演技があってこそ。
また、ベータがかぶる人皮製の仮面が、ウォーカーと化した彼の愛する人の顔の皮膚だったことも判明。ベータがどんな人間だったのかも描かれる。
そして、そこから見えてくるのは、“囁く者”の実情だ。彼らは冷酷に行動し、「われらは何も愛さず われらは自由」と自分たちの信条を唱えながら行進するが、実際は愛を知り、それを失うことを恐れる人々なのだ。中には信条に疑問を持ち始める人々も出てきている。そんな中、アルファは、境界線を破った人々に教訓を与えると宣言するが、それは縄張りを守るためではなく、自分たちの信条の正しさを、自分たち自身に証明するためなのだ。これからドラマは戦いに向かうだろうが、この第2話で“囁く者”の心理を知った今、この戦いがこれまで以上にドラマチックに見えてくるのは間違いない。
そのうえ、今回の魅力はそれだけじゃない。とにかく脚本がスゴイ。いつも「ウォーキング・デッド」は脚本の巧みさで唸らせてくれるが、今回はシリーズの中でもかなり脚本にワザがある。
まず、1つ目のワザは、2つの時代、2つのストーリーが同時進行するという構成。2つ目のワザは、その2つの物語の内容が見事に“対”になっていること。「7年前のアルファとベータの誕生」と「現在のオメガの誕生」が、対比的に描かれていくのだ。3つ目のワザは、この2つの物語に共通点があること。その共通点は“親のわが子への思いのドラマ”。これがアルファの誕生とオメガの誕生の両方に深く関わっている。
そのうえ、もう1つワザがある。それは、今回の2つのドラマのうちの「現在のドラマ」が、第1話で描かれたミショーン(ダナイ・グリラ)たちのドラマと同じ時間に起きていた、という設定だ。途中で、空を落下する人工衛星が横切る場面を見せて、「ああ、これがあの時なのか」と同時刻の出来事だと示しておいて、ラストシーンに第1話のラストシーンと同じ場面を持ってきて「そういう設定か!」と唸らせる。この脚本、スゴすぎる!
いったい脚本は誰なのかと思ったら、ストーリー・エディターはシーズン9から参加しているジェラルディン・イノア。脚本は、このシーズンから初参加したニコール・ミランテ=マシューズ。彼女はドラマ「NCIS ~ネイビー犯罪捜査班」やドラマ「Marvel ルーク・ケイジ」などの脚本や製作を手がけてきた人物で、今シーズンから本作の製作にも参加する。新たなスタッフたちが今後のドラマをさらに面白くしてくれるに違いない。そんな期待が高まってしまうのだ。