『ターミネーター2』愛が炸裂!11月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、大人のラブストーリー、『ターミネーター2』の正統続編、インド発ブラックコメディー、ゾンビコメディー、名作ホラーの続編。これが11月の5つ星映画5作品だ!
追い詰められるほど輝く福山雅治の美しさ
『マチネの終わりに』(11月1日公開)
芥川賞作家・平野啓一郎が2015年から2016年にかけて発表した同名連載小説に基づく本作。映画化に挑んだのは、現在月9「シャーロック」が放送中、ドラマ・映画『昼顔』をヒットさせた西谷弘監督&脚本家・井上由美子の名コンビ。スランプに陥る天才ギタリスト・蒔野聡史(福山雅治)と婚約者のいるジャーナリストの小峰洋子(石田ゆり子)、互いに人生のターニングポイントに差し掛かった40代の男女の軌跡を追う物語で、原作ではモノローグが多くを占めていることからも映像化が困難だったことは想像に難くない。「6年の間に会ったのはたった3度だけ」「舞台は東京・パリ・ニューヨーク」といった設定からロマンチックな物語を想起させるが、西谷&井上コンビの作品だけに決してきれいなだけではない。蒔野と洋子に降りかかる試練のサスペンスフルな描き方は『昼顔』シリーズで追い詰められる人妻と高校教師を彷彿とさせ、愛だけではどうにもならない現実の厳しさを突き付ける。そして、何といっても目を引くのが福山雅治の美しさ。愁いを帯びるほど美しく輝き、俳優としてのキャリアも熟した今だからこそ演じられた役だ。(編集部・石井百合子)
サラ・コナー復帰は成功!正統の名に恥じない第3弾
『ターミネーター:ニュー・フェイト』(11月8日公開)
SFアクションの金字塔『ターミネーター2』の正統続編は、シリーズが本来の魅力に立ち返った、正統の名に恥じない3作目になった。最大の貢献は、リンダ・ハミルトンが復帰したサラ・コナーの登場だろう。アーノルド・シュワルツェネッガーふんするT-800は魅力的なキャラクターだが、あくまで指令を遂行する存在。だからこそ彼の人間的な部分が感動的だったわけが、主人公はあくまで、絶望の運命に抗うサラだった。本作のサラは前作以上の苦しみを背負っており、リンダの熱演に圧倒される。また、そんな彼女から、未来を変える「特異点」の役割を引き継ぐダニー(ナタリア・レイエス)をはじめ、新キャラクターも実に魅力的。特に、未来の強化兵士グレースを演じたマッケンジー・デイヴィスのアクションは本作随一のカッコよさ。新型ターミネーターを演じたガブリエル・ルナも大健闘で、人間社会に溶け込むために浮かべるほほ笑みが実に不気味だ。アクションは絶え間がなく、ティム・ミラー監督の T2愛も炸裂しており、意表を突かれるジョン・コナーの登場など、シリーズファンの心をぐっとつかむ描写も満載。『ターミネーター2』以降に製作された続編では最も満足のいく内容となるはずだ。(編集部・入倉功一)
インドのブラックユーモアが効きすぎる!
『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』(11月15日公開)
芸術を追求するため、盲目のふりをする変わり者のピアニスト・アーカーシュが、悪女・シミーが夫を殺した現場に立ち会ってしまったことから巻き起こるインドを舞台にした奇想天外なサスペンス。事件に首を突っ込みすぎたアーカーシュは、本当は「見えているのではないか」とシミーに疑問を持たれ、さまざまな手法で盲目であることを試される。2人がお互いの腹の内を探り合う会話には緊張感が漂うが、本当は目が見えているという事実を知っていると、どこか滑稽で笑わずにはいられない。また、アーカーシュ役のアーユシュマーン・クラーナーの見えない演技は繊細でリアル。代役を使わずに挑んだピアノの演奏は圧巻で劇中、殺人現場で必死にアーカーシュが演奏するシーンは、感動と恐怖と笑いが一挙に押し寄せる。さらに、美しき悪女・シミーの熱演が光るのは、人を殺すことに罪の意識を感じず、冷徹で最低最悪な女性なのにもかかわらず、どこかチャーミングな部分もある悪役を茶目っ気たっぷりに演じるところ。敵も味方も、愛おしくなってしまう不思議な作品だ。(編集部・梅山富美子)
10年のブランクを感じさせない4人組のケミストリー!
『ゾンビランド:ダブルタップ』(11月22日公開)
自ら考案したゾンビから身を守るための“32のルール”を慎重に実践して生き残ったおたく青年コロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)、ゾンビ殺しが異様に上手いタラハシー(ウディ・ハレルソン)、美人詐欺師姉妹(エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリン)の4人組が、10年ぶりにカムバック! 演技派ぞろいとあってそのブランクを全く感じなさせないケミストリーで、続投のルーベン・フライシャー監督がとびきり笑えてハートもあるゾンビコメディーに仕上げている。前作で悲惨な最期を遂げたビル・マーレイをいじり倒すところから、人気ゾンビ作品への言及までポップカルチャーの小ネタも満載で、ショッピングモールの冷凍庫で10年(!)身を隠してきたという新キャラのギャルも最高。かなり個性が強いキャラにもかかわらず、ゾンビランドの世界に完璧に馴染んでいる。ゾンビはこの10年で進化を遂げてグロさを増しており、映画の最初からびっくりさせる仕掛けも楽しい。(編集部・市川遥)
40年前のトラウマと対峙するダニーの恐怖を体感する
『ドクター・スリープ』(11月29日公開)
スタンリー・キューブリックによって映像化された『シャイニング』の続編となる、スティーヴン・キングの同名小説を映画化。前作の舞台となったオーバールック・ホテルでの恐怖から40年、ダニー(ユアン・マクレガー)は父と同じくアルコール中毒に苦しみつつも、断酒セミナーに参加するなど新たな生活を送ろうとしていた。しかし、同じく異能力シャイニングを持つ少女と出会ったことで、子どもの命を奪いその気を吸って生きる魔性の者たちとの新たな戦いに挑むことに。キューブリックの注釈入り設計図をもとに再現したというホテルをはじめ、劇中でダニーの追体験として登場する『シャイニング』の再現シーンのクオリティーは高く、見応えがある。『シャイニング』をめぐる記憶を共有していればなおさら、その恐怖はリアルなものとして身に迫ってくるはずだ。同じくキング原作の『ジェラルドのゲーム』で監督を務めたマイク・フラナガンの手腕は確かで、映画『シャイニング』のイメージを引用しつつも単なるパスティーシュに留まらず、トラウマと対峙するダニーの恐怖が巧みに表現されている。ダニーがホスピス職員となって死にゆく人たちに寄り添う場面など、随所に散りばめられた死のイメージも物語に重厚な雰囲気を与えている。また、ベッドの上でトラウマに悶えるマクレガーの姿はどこか『トレインスポッティング』のワンシーンを想起させ、映画の細部に到るまで仕掛けられた小ネタを探すのも一興だろう。(編集部・大内啓輔)