映画に見るタンクトップ女子の歴史
今週のクローズアップ
『ターミネーター2』の正統な続編である『ターミネーター:ニュー・フェイト』に、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンが復帰することが話題となっています。そんなサラの代名詞として有名なのは、戦闘服が“タンクトップ”なこと。このいで立ちは、戦う強い女性の象徴として、『ターミネーター』以外のさまざまな映画にも登場します。そんなタンクトップ女子はいつから登場したのか、その歴史を振り返ってみましょう。(編集部・香取亜希)
タンクトップ女子の始まりは
タンクトップ姿で戦うヒーローと言えば、『ランボー』シリーズのジョン・ランボー、『ダイ・ハード』シリーズのジョン・マクレーン、『X-MEN』シリーズのウルヴァリンなど有名どころがたくさん。汗臭そうで男っぽく、アクションヒーローの基本スタイルとして定番です。こんな恰好で戦うなんて男だけ……ではありません。タンクトップ姿で男顔負けに戦う、タンクトップ女子に注目してみます。
その先駆け的存在は、『エイリアン』シリーズでシガーニー・ウィーヴァーがふんしたエレン・リプリーです。1979年に公開された『エイリアン』で、白のタンクトップとパンツという完全に下着姿でエイリアンから逃げ惑うという、映画史に残る印象深いシーンがありました。とはいえその姿は一瞬で、すぐに宇宙服を着てしまうのでタンクトップのままエイリアンと一戦交えたわけではありません。その後の『エイリアン2』『エイリアン3』でもちらっとタンクトップ姿を披露はしますが、そこまでタンクトップ=戦闘服扱いではないのが実情で、『エイリアン4』に至っては、タンクトップ姿は皆無です。それでも、リプリー=タンクトップのイメージは根強く、『エイリアン4』から約20年後に公開された『エイリアン』シリーズの原点となる『エイリアン:コヴェナント』では、ヒロインのダニエルズがタンクトップ姿でエイリアンと対峙しますが、これはもちろんシリーズへのオマージュといえます。
戦う強い女の代名詞へ
1991年になり、またしてもタンクトップ女子が現れます。『ターミネーター2』のサラ・コナーです。1作目の『ターミネーター』のときは、ちょっぴりドジなただのウェイトレスだったので、タンクトップ姿ではありませんでしたが、2作目は息子を守るために戦う母なので、常にタンクトップ姿で戦闘モード。ターミネーター相手に、片手でショットガンに弾を装填するさまは、そんじょそこらのヒーローよりかっこいい! 本気の戦いにレースやフリルなど、余計な装飾などいらない! それこそタンクトップ女子の精神です。彼女の登場で、タンクトップ女子は戦う強い女の代名詞になりました。
その後の『ターミネーター3』『ターミネーター4』には、サラが登場しないこともあり、タンクトップ女子は見当たりません。『ターミネーター:新起動/ジェニシス』では、時間軸的に『ターミネーター』と同じなのですが、過去を変えられたという設定なので、すでに戦士として戦っているサラはタンクトップ風スタイル(厳密には違う!)で登場します。そして最新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』でサラは残念ながら黒のTシャツですが、ニューヒロインのマッケンジー・デイヴィスふんするグレースがタンクトップ女子を継承しています。
女らしさとセクシーさがプラス
多くのタンクトップ女子が台頭した2000年代に入り、タンクトップ女子の概念にも変化が見られ始めました。男勝りなだけが取り柄なのではなく、よりファッショナブルかつセクシーに変化してきました。この時代は『チャーリーズ・エンジェル』『キル・ビル』『アンダーワールド』など、女性が主人公のアクション映画が増えてきた時代でもあります。
そんな中、女性らしい肉感的なボディーの持ち主であるアンジェリーナ・ジョリー主演の『トゥームレイダー』の主人公、ララ・クロフトがタンクトップ女子として活躍します。抜群のスタイルがタイトなタンクトップによってより強調され、谷間が見えるわけでもないのにセクシーさが際立っています。
『ワイルド・スピード』シリーズのミシェル・ロドリゲスふんするレティも、常にではありませんがタンクトップ率が高く、車の油がしみこんだ白いタンクトップがお似合いです。ヴィン・ディーゼルふんする恋人のドミニク・トレットも基本的にタンクトップなので、2人はお似合いのタンクトップカップルで、タンクトップを着たままのイチャイチャシーンもちらほら。強いだけではなく、女性としての魅力も感じさせます。ちなみにミシェルは、『ガールファイト』『アバター』でもタンクトップ姿になっているので、誰よりもタンクトップが似合うトップ・オブ・ザ・タンクトップ女優といっても過言ではない存在です。
タンクトップをよりおしゃれに進化させたのは、『バイオハザード』シリーズでミラ・ジョヴォヴィッチがふんしたアリス・アバーナシーです。『バイオハザードII アポカリプス』では、スケスケのタンクトップにオレンジのキャミソールを着るという、タンクトップの進化系ともいえる姿を披露。『バイオハザード:ザ・ファイナル』では、肩のラインを細め女性らしさを追求したタンクトップでアンデッドたちを倒しまくりました。ただのタンクトップではないのがアリスのスタイルです。
そのほかにも2008年公開の『007/慰めの報酬』では、オルガ・キュリレンコがまさかのタンクトップに。セクシーな女性の象徴であるボンドガールが、タンクトップ姿で007と一緒に戦う時代が訪れました。
タンクトップと相性のいい最強形態とは
タンクトップ女子の歴史を理解したところで、タンクトップの着こなしにつても気になります。タンクトップ女子は基本的に動きやすさが求められるので、一番しっくりくるのは白いタンクトップにジーンズ。まさに『フェア・ゲーム』でシンディ・クロフォードが着こなしたスタイルです。シンディはスーパーモデルでもあるだけに、下手すればシンプル過ぎて普段着に見えるところをおしゃれに着こなしていました。
では髪型は? という疑問への答えは、丸刈り一択! 『エイリアン3』のリプリーもそうでしたが、記憶に新しいところでは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でシャーリーズ・セロンがふんしたフュリオサ。時代設定が現代ではないので、いわゆる王道のタンクトップではなく、さらしを巻き付けたようなデザインのタンクトップですが、丸刈りとタンクトップの最強コラボで戦い抜きました。余計なものを全てそぎ落とし、戦うことだけを意識した最強形態です。
番外編:サスペンスやホラーとの相性もいい
タンクトップ女子が活躍する作品はアクション大作に多く見られますが、サスペンスやホラーにも一定層のニーズがあります。『テキサス・チェーンソー』『10 クローバーフィールド・レーン』など、タンクトップに涙と汗をにじませながら恐怖の悲鳴をあげるシーンは最も盛り上がるシーンの一つです。
ジョディ・フォスターは『パニック・ルーム』で黒のタンクトップ(キャミソール)姿で強盗に襲われ、ジェニファー・ローレンスは『ボディ・ハント』で正真正銘の白のタンクトップ姿で殺人鬼に追われました。オスカー女優という共通点がある2人が、タンクトップ女子として悲鳴とともに逃げ惑う姿は貴重です。
リプリーから始まり数多くのタンクトップ女子たちが奮闘する姿は勇ましくて美しいです。彼女たちの今後の活躍に期待します!