『午前0時、キスしに来てよ』片寄涼太&橋本環奈 単独インタビュー
マスク越しキスにそわそわ
取材・文:高山亜紀 写真:高野広美
国民的スーパースター・綾瀬楓が見初めたのは真面目な女子高生の花澤日奈々だった。人気少女コミックを映画化した『午前0時、キスしに来てよ』は、住む世界が違う国民的スーパースターとの運命の出会いで、生活が一変する女の子の現代版シンデレラともいえるラブストーリー。ダブル主演で初共演を果たしたのは片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)と橋本環奈。共にAB型で共通点も多いという2人が各々大切にしたスター感や普通らしさについて語った。
実は笑いをこらえるのが大変だった場面とは
Q:2人は初共演ですが、それまでのイメージと実際の印象は違いましたか?
片寄涼太(以下、片寄):もっとサバっとしている子かなと思っていたんです。そしたら、すごくエネルギッシュで、話しやすくてイメージが変わりました。
橋本環奈(以下、橋本):私もこれまでと印象が違いました。ステージで歌やダンスをしているイメージが強かったので、シュッとした大人の方を想像していたら、事あるごとにツッコミを入れてきて、関西色が強いと思いました(笑)。
Q:では橋本さんから見た片寄さんは楓のようなスーパースターではないのでしょうか?
橋本:どうなんでしょう。スター感が全面にあるということはないです(笑)。でも、綾瀬さんにはすごく似ています。紳士的な部分もありつつ、「ギャップ萌えを狙ってるのかな」と思うようなところもあるんです。
片寄:狙ってないです! ただ単に日々のハードルを下げて、たまにいいことをやったら「お!」と思われるようにしているというのはあるかもしれません(笑)。
Q:楓というスーパースターを演じるにあたり、心掛けていたことはありますか?
片寄:余裕があるように見せたいなというのは意識していました。監督からも「やりすぎないように」とずっと言われていたので、何でもさらっとやるようにしていました。周囲のみんながスーパースターという前提で見てくれているので、それを自然と受け入れられるよう心掛けました。
橋本:綾瀬さんが日奈々の教室に会いに来るシーンは、実は笑いをこらえるのが大変でした。「ギャーッ」と現場が騒然とするんです。確かにスーパースターがいきなり学校にやって来たらそうなるんでしょうけど、そこを歩いてくるのが片寄さんだから、私としては面白くて。カットがかかるとみんながシーンとするのもまたおかしくて(笑)。
片寄:僕は「なんだかすいません」って感じでした。でも、そこで動じちゃいけないんですよ。ニヤニヤしてしまったら、スターじゃないんです。だから、橋本さんの方は見ないようにしていました。日奈々を探しに来たシーンにもかかわらず(笑)。
2人の距離を縮めた遊園地
Q:2人はとても仲が良いですね。関係性はすぐに出来上がったんですか?
片寄:結構早かったですね。2日目くらいから、2人でひたすらしゃべってました。
橋本:遊園地のシーンの撮影が2日目で、1日中ずっと一緒にいたので、AB型談議で盛り上がりました。2人ともAB型で共通点がたくさんあったんです。
片寄:「AB型はABの自分に酔ってる」「AB型の人はABな自分が結構好き」みたいなAB型のあるある話で盛り上がりました。あんまり言うと、自分のことなので恥ずかしいんですけど(笑)。
Q:その遊園地貸し切りのシーンをはじめ、マスク越しのキスなど、劇中には夢のようなシーンが満載ですね。
片寄:遊園地貸し切りなんて憧れます。なかなかできないことですよね。車で迎えに行くところもかっこいいなって思いました。何より、マスクのキスシーンはそわそわします。
橋本:マスクのキスシーンは本当にいいシーンですよね。出来上がった作品を観て、よりそう思いました。身長差がちょうど良い感じなんです。しかも引きで見ると、周りに歩いている人も映っていて、キスするならマスクを外せばいいのに、人前だから、スターだから、マスクしたままするしかない。そういうところにキュンとしてしまいます。
Q:キスの予約の「鼻かじ」のシーンについても教えてください。あれをやろうと提案したのは片寄さんだったとか?
片寄:原作に鼻をかじる画があったんです。少しでも再現できたら原作ファンの方にも喜んでいただけるんじゃないかなという気持ちで「ちょっとやってみませんか」と監督に相談して、トライさせてもらいました。実は橋本さんには言わずにやってしまったんですよ。
橋本:日奈々としても驚くシーンだったのですが、知らされずにやったことでリアルな表情が切り取られています。狙いではあったのでしょうが、真剣に驚きました。お芝居の驚きと素の気持ちがリンクしてミックスした感じです。「あ、本当にかんできた」というちょっとした動揺も入っています(笑)。
片寄:後にも先にもあのシーンの橋本さんが一番驚いていたと思います。人の鼻をかじることは今後もないと思うので、いい体験になりました(笑)。
まるで専門家!?橋本環奈の漫画論
Q:ほかにも原作を意識する場面はありましたか?
片寄:台本のなかにあるシーンは全部「こういうシーンか」とちゃんと頭に入れてから撮影に臨んでいました。お芝居なので、全く原作通りにしなくてもいいと思うんです。結果的に違ってもいいし、同じになってもそれはそれでいい。ただ、原作はそういう動きをしているんだというのを理解した状態でいることが大事なんだと思いました。
橋本:劇中には原作で人気のあるシーンもたくさんあるので、私も漫画のシーンを現場で見るようにしていました。例えば、綾瀬さんの部屋に行ってあまりの広さに呆然とする日奈々の画などは参考にしています。
Q:橋本さんは普段から少女漫画を読むんですか?
橋本:漫画が大好きで、少女漫画に限らず何でも読みます。この作品も出演が決まる前から原作を読んでいました。自己投影して妄想して読む方も多いと思うんですけど、私の場合は憧れたりはせず、純粋にストーリーを楽しんでいます。少女漫画には「おお、無理矢理だな」というものもあったりしますが、この作品のようにちゃんと物語として成り立っているものに引き込まれますね。映画版も胸キュンシーンがいっぱいありながら、無理矢理詰め込んだ感じじゃなく、ストーリーがしっかりしているので、そこがすばらしいと思っています。
片寄:先生から見て、無理のない良い流れのようです(笑)。
橋本:誰が先生やねん(笑)。自分が出ているのに「何を言ってるんだ」と思われそうな気もしますが、太鼓判を捺していいかなと思っています!
片寄:男が言うより、女性の目線からの方が説得力がありますよね。「原作ファンの人にも観てほしい」と思いつつもどこか不安もあるんです。女性で、しかも読者の方がそんな風に言ってくれるとうれしいです。
橋本:出演していますけどね(笑)。
片寄涼太は髪の毛星人、橋本環奈は腕星人?
Q:楓はおしりに目がないおしり星人ですが、2人は何星人でしょうか?
片寄:僕はいつも髪の毛と言っています。長さとかではなく、髪に艶のある人。髪は女性の命とよく聞きますが、女性が一番魅力的に見えるところだと思います。髪がきれいな人が好きです。
橋本:私はあんまりそういうことを考えたことがないんです。強いて言うなら、腕ですかね。太過ぎず、細すぎず。男の人のたくましい、筋や血管の出ている感じの腕。体のつくりが女性と違いますから、そこに目がいきますね。
Q:楓が日奈々の「普通」に魅かれるように、2人が大事にしている日常の「普通」はありますか。
片寄:こういう仕事をしていると、ある程度のことはマネージャーさんがやってくれたりするんです。それでも最低限自分でできることは自分でしたいと思います。家では誰もやってくれる人がいないので、洗濯や洗い物をちゃんとしていますし、そういう時は「やってるな、自分」って思います(笑)。
橋本:わかります。私は小学生からお仕事をしていますが、こんな風に環境が変わる以前、中高生くらいまでに親から教わったことは忘れないようにしています。難しいとは思いますが、その頃の生活水準をできるだけ変えたくないんです。ゴミ出しの仕方がわからないとか、そういう大人になりたくないです。人間として大事なことを失いたくない。でも、考え過ぎると「普通って何?」ってなっちゃうんですよね。
片寄:意識し始めると、そこはもう普通じゃなくなってしまうから、悩ましいところですよね。
まるで少女漫画から飛び出したような美男美女カップルなのだが、口を開くとコメディ映画のようなマシンガントークが炸裂。「わかるわかる」「あるある」と相手の話に相槌を打ちながら、ぽんぽんと会話が進んでいく。頭の回転の速い2人はどちらもボケとツッコミ両方をこなし、ノリツッコミも完璧で、楓と日奈々も真っ青な名コンビぶり。今回はロマンティックなラブストーリーだったが、バディムービーでの共演も観たいかも。
(C) 2019映画『午前0時、キスしに来てよ』製作委員会
映画『午前0時、キスしに来てよ』は12月6日より全国公開