『ヒロアカ』原作・総監修の堀越先生に聞く!キャラ設定のヒミツ
今週のクローズアップ
映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』が、いよいよ12月20日に公開されます。総監修を務めた原作者の堀越耕平先生に、主人公のデクや爆豪など、人気キャラクター誕生のヒミツや、設定の裏側を聞いちゃいました!(編集部・小山美咲)
「僕のヒーローアカデミア」とは?
総人口の約8割が“個性”と呼ばれる超常能力を持って生まれる世界を舞台に、“無個性”で生まれた緑谷出久(通称:デク)がヒーロー輩出の名門校に入学し、最高のヒーローを目指して成長していく姿を描く。原作漫画は「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)で連載中、累計発行部数2,500万部を超える人気作。テレビアニメは第4期が放送中で、劇場版は今作が2作目となる。
<デクと爆豪!誕生のヒミツ>
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』で中心に描かれる緑谷出久と爆豪勝己の、キャラクター誕生エピソードが明らかに!
Q:主人公のデクは読者が自分を投影しやすいキャラクターだと感じます。デクというキャラクターはどうやって生まれたのですか?
まず自分が描けるキャラクターというのを振り返った時、デクのようにちょっと内気な、ふさぎ込むじゃないですけど、内にため込んじゃうようなタイプが、僕にとっては一番描きやすかったんです。
Q:いわゆる初めから強くてポジティブなヒーロー像とは対照的ですね。
僕はどろどろになりながら地面を這いつくばってでも前に進んでくような話が好きで、そういう主人公を描きたいという思いがありました。
Q:デクの幼なじみである爆豪は、連載開始当初はあまりのとがりっぷりに衝撃を受けました。
やばいですよね。あんな言動は許されないですからね……。結果的に人気キャラになっておりますが、わりと今でも不思議です。
Q:キャラ設定としては、どういう意味合いを持っていたのですか?
最初は、デクが自分より上でいばり散らしているカースト上位の人間を追い越すためのキャラクターとして設定しました。学校に入って、そいつもデクとは違うベクトルで成長していくという風に考えていたんですけど、早々にデクと戦わせたところで、爆豪が泣いたんですよ。そこから思っていたよりも、こいつはちゃんと描いてあげれば良いところも出てくるんじゃないかなっていう、おいしそうなところが見つかりました。当初はもっと爆豪は嫌な奴のまま進めるつもりでした。そうなっていたら絶対人気は出なかったと思います。
Q:最初の何巻かはダークサイドに行ってしまうんじゃないかという心配もありました。
僕は最初から爆豪を闇落ちさせる気は全然ありませんでした。ヴィランにさらわれた時なんて「闇落ちするんじゃないか」と言われていたから、あえて「落ちないよ」とやってやろうと思いました。
Q:敵連合に誘拐されたエピソードで、爆豪が1年A組の仲間の手を取った場面は印象的です。迎えに来た切島の手をちゃんと取りました。
あそこは悲しいシーンでもあるんです。デクは、はなから(自分の手を取ってもらうことを)あきらめていますよね。お前ここ頑張れよ! って言いたくなっちゃうんですけど、より確実な選択を取ったという。
Q:デクにある意味心を折られて、そこからまた再起したことで爆豪もヒーローらしくなっていきました。人気も高いですね。
そこで爆豪がちょっと許されちゃったのかなという感じがあったんですよね。全然許されていないですけど。謝んなきゃいけないですよ、デクには。嫌いって人も多いと思います。二極化してるんじゃないかな……。
<気になるキャラ設定の裏側>
今作はデクが通う雄英高校ヒーロー科1年A組のメンバーが総出演し、校外ヒーロー活動に取り組む姿が見どころ。魅力的なキャラクターの背景とは?
Q:クラス単位での活動が多く、キャラクター同士のやり取りも楽しいです。描いていて、一番動かしやすいのは誰ですか?
やっぱり切島とか上鳴とか、芦戸かな。みんなに向かって「ちょっとあれやろうよ」って最初に言えるやつらは描きやすいです。物語を引っ張っていってくれるので。
Q:先導役、盛り上げ役みたいな存在でしょうか?
そうですね。デクはあんまり中心に立つタイプじゃないし、みんなが知らないところでひとり悶々と悩みを抱えたまま進んでいっちゃったりするので、そういうところで周りのキャラクターがわーっと盛り上げてくれることがフォローになっているかなと思います。
Q:アニメ化されてから、キャラクターを描く上で何か変化はありましたか?
例えば爆豪とか、描いている時は声を想像すらしてなかったんですけど、今はもう完全に脳内で岡本(信彦)さんの声でしゃべっています。こういうしゃべり方をしているならこういう表情をしてるだろうなと、描きやすくなりました。爆豪が特にですが、どのキャラクターもそうですね。
Q:キャラクターの見た目については、やはり高校1年生ということを意識されているのでしょうか?
最初の頃はわりと意識していました。最近は画の変化というか、書き込みの感じも変わってきちゃって、ちょっとガタイが良くなってきてるんですけど、それはみんなが成長してるってことにしとこう(笑)。
Q:例えば、今後2年生3年生、プロヒーローになっていく過程があったらみんな変わっていくのでしょうか?
極力変化は抑えたいとは思います。描くとしたら、ですけどね。
Q:キャラクターと家族の関係が丁寧に描かれている印象があります。デクや轟、お茶子、飯田など、それぞれ設定はどのように?
自分と両親の思い出をそのまま使ったり、友達とその家族の話をした時に印象に残った話をちょっとふくらませていったり、基本自分の思い出の中から作っていきます。たぶん根本は似通っているんじゃないかな。
Q:家族はあまり登場しないまま進んでいく物語もありますが、「ヒロアカ」はきちんと描かれていますね。
それを言うと、主人公たちが子供だというのをちゃんと描きたかったんです。子供がヒーローを目指して頑張っているというのを。そこでやっぱり親とか兄弟が出ないのは子供感がなく、独り立ちしているように見えちゃうので、あえて出しているというのもありました。家族は扱いが難しいですよね。
Q:「ヒロアカ」のストーリー上で、世界観を守るためにやらないと決めていることはありますか?
意外とないかも。決めていないですね。どうにでも転べる。あるとしたら、少年誌的に腕が切断された時の切断面を描かないとかですね(笑)。
【取材後記】
この劇場版にはとっておきのアイデアが盛り込まれていることから、「原作の終わりをどうしよう……」としきりに心配していた堀越先生。しかし映画の公開を待ちわびている様子で、週刊連載の執筆に忙しい中でもアニメの制作に携われたことは大きな意義があったようでした。堀越先生が「ある種『ヒロアカ』の最終回」とも言っていた映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』は、ハンカチを握りしめて観る1作です!
(C) 2019「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C) 堀越耕平/集英社