どうなる?2020年以降のスパイダーマン
2019年を振り返り、最もスクリーンに登場したアメコミ・ヒーローは、スパイダーマンでした。アカデミー賞をとった『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)、史上最もヒットしたアメコミ映画となった『アベンジャーズ/エンドゲーム』、そして全世界興行成績11億ドルを突破した『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』です(Box Office Mojo 調べ)。さらに期待が高まる、2020年以降のスパイダーマン映画はどうなる?(文:杉山すぴ豊)
ホッと一安心! MCUに残ったスパイダーマン
名実ともに大人気ですが、2019年の夏ごろにはスパイダーマンの映画化権を持つソニー・ピクチャーズとアベンジャーズ系の映画、いわゆるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を展開するディズニーが契約合意に至らず、この先スパイダーマンがMCUに登場しないかも、という事態になりました。
一応説明しておくと、スパイダーマンもアベンジャーズ、アイアンマンも共にマーベル・コミックスのヒーローで、コミックの世界では共演していました。しかしマーベルが映画部門を整備し、後にディズニー傘下となってMCUを展開する前に、スパイダーマンの映画化権をソニー・ピクチャーズに渡していたため、ディズニーのアベンジャーズにソニーのスパイダーマンは登場できなかったのです。
映画会社が異なるわけですから当然ですよね。しかしファンの声にも押され、ディズニーとソニーが協力しトム・ホランド出演という形で仕切り直しとなった新スパイダーマンは、MCUの方にも出られるようになったわけです。ですから『アベンジャーズ/エンドゲーム』はディズニー映画、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』はソニー映画ですが、両者は同じ世界観でつながっているという奇跡的な連動が実現できたわけです。
しかし、この関係が破綻し、今後スパイダーマンはMCUに出ることはない(逆に言えばMCUの他のヒーローキャラがソニーのスパイダーマン映画に出ることもない)となりかけたのです。結局、これは回避され、もうしばらくはソニーのスパイダーマンはMCUの住人としても活躍できそうです。とはいえソニーはMCUと関係なくスパイダーマンおよびスパイダーマンのコミックに登場するキャラで映画を作る権利は持っています。
そうした中で生まれたのがアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』であり、またスパイダーマンのライバルキャラであるヴェノムを主人公にした『ヴェノム』(2018)だったわけです。この2作はMCUとは今のところ別の世界観でのお話になっています。
ファー・フロム・ホームなどの続編はファンの望みに応えられるのか?
こうした状況を頭に入れながら、今後スパイダーマン映画がどうなっていくのか予測してみましょう。まずスパイダーマン映画は、今のところ3つの作品の公開日が決まっています。
1)2021年7月16日『スパイダーマン:“ホーム”3』(仮)
2)2022年4月8日『スパイダーマン:スパイダーバース2』
3)2020年10月2日『ヴェノム2』
『スパイダーマン:“ホーム”3』とは『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』に次ぐ3作目。前2作が“ホーム”という単語が入るからきっと“ホームなんちゃら”というタイトルになると思い、ここでは『スパイダーマン:“ホーム”3』と勝手に呼称します。これは前述のとおり、ソニーとディズニーの合意が延長されたので、めでたく3作目が作られることになりました。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のラストでスパイダーマンことピーターの状況はとんでもないことになりますよね。
あの後の続きということで楽しみです。ここでファンが期待しているのは、別のヒーローが本作に登場すること。というのもピーターにはベック(ミステリオ)殺しの容疑がかかっているわけですよね。となると弁護士が必要です。マーベルの世界には2人の弁護士ヒーローがいます。デアデビル(盲目のヒーロー)、そしてシー・ハルク(ハルクのいとこが緑色の怪力女子になる)です。従ってどちらかがピーターの弁護士という形で登場するのではないかと。
実際、マーベルはディズニーの動画配信サービス「Disney+」でシー・ハルクのドラマシリーズを配信予定なので、その可能性はありですね!
なおトム・ホランド演じるスパイダーマンは本作とは別に、もう一本のMCU映画に出すことができる、との契約だそうです。例えば『キャプテン・マーベル2』とかに登場するかもしれません。『アベンジャーズ/エンドゲーム』でスパイダーマンとキャプテン・マーベルはお互いあいさつしていましたから。
『スパイダーマン:スパイダーバース2』、パラレルワールドにいるさまざまな世界のスパイダーマンが集結するこのシリーズ。先日、監督自ら今度の続編にはレオパルドンが出る、と発表し話題になりました。レオパルドンとはスパイダーマンが操縦する巨大変型ロボット。
実はスパイダーマンは1978年に日本の東映で実写特撮ドラマ化され、その東映版(日本版)スパイダーマンはレオパルドンに乗って巨大化した怪人と戦うのです。コミックの方では、この東映版スパイダーマンも、ある別次元のスパイダーマンということで存在が認められているのです。それがついにスクリーンに登場です!
実写版スパイダーバースを切望!
来年の『ヴェノム2』。トム・ハーディが前作に続き主演です。今度はヴェノムよりさらに凶悪なモンスターのカーネイジが登場。ヴェノムと壮絶バトルとなります。この作品はソニーがスパイダーマンのコミックに登場するキャラの映画化権を持っているため実現できた企画です。本作はMCUとは別の世界観のお話なので、スパイダーマンは登場せず、です。
しかしソニー的にはここにトム・ホランドのスパイダーマンを出すことは可能なのです。というのも先のディズニーとソニーの契約には、トム・ホランドのスパイダーマンはMCUにも、またソニー独自が作るスパイダーマンの世界観の中にも登場できる、みたいなことが許されているようなのです。従って『ヴェノム2』にスパイダーマンが出てこないとも限らないのです。
ソニーは『ヴェノム2』に先立ち2020年7月31日に、やはりスパイダーマンのコミックに登場する、吸血鬼系ダークヒーローを主人公にした『モービウス(原題) / Morbius』を公開することになっており、ここにスパイダーマンの存在が示唆される可能性もあります。
ちょっと複雑なのですが、でも最近のゴジラだってアニメ版、ハリウッド版、『シン・ゴジラ』(2016)とあったわけで、いろいろな形でスパイダーマンが楽しめるのも「あり」でしょう。
僕が個人的に期待しているのは、いつか実写版スパイダーバースを作ってほしいということ。さまざまな世界・次元のスパイダーマンが集合という設定を使って、トビー・マグワイアのスパイダーマン、アンドリュー・ガーフィールドのスパイダーマン、そしてトム・ホランドのスパイダーマンが共演。さらにエマ・ストーンで実写版スパイダー・グウェンの映画化を望みます(笑)。
杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)プロフィール
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、東京コミコン等のイベントで発信。現在「スクリーン」「ヤングアニマル嵐」でアメコミ映画の連載あり。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。