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人種差別にヒーローはどう立ち向かうのか?

 もし、スーパーマンやバットマンが実在したら世界にどんな影響を及ぼすのか? 映画専門サービス「スターチャンネル」が1月31日から日本初放送、2月1日から配信を開始する新作ドラマ「ウォッチメン」は、現実とは違う歴史を歩んだパラレルワールドを舞台に、過激化する人種差別にヒーローたちが対峙する、HBO局制作の意欲作だ。

人種差別が蔓延するアメリカ

 「ウォッチメン」では、現実とは違う歴史を歩んだ2019年のアメリカが描かれる。スーパーヒーローの存在によってベトナム戦争にアメリカが勝利し、ウォーターゲート事件は発覚せず、共通の脅威を得た米ソの和解により核戦争の脅威が回避された世界。ドラマは、1921年のオクラホマ州タルサで幕を開ける。

 現実のアメリカ史でも、最も悲惨とされる事件の舞台がタルサのグリーンウッド地区だ。かつてこの地では、 “黒人のウォール街”と称されるほど黒人コミュニティーが栄えていた。しかしその年、黒人が白人に暴行を加えた出来事(真偽は不明)をきっかけに、白人系住人による人種暴動が勃発。300人以上の黒人が殺害され、彼らの家屋・財産は徹底的に破壊され、大勢がホームレスになったが、事件の詳細が報告されたのは、21世紀初頭のことだという。

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警察官たちは黄色いマスクでアイデンティティーを隠さなくてはならない

 劇中のアメリカでは、元俳優のロバート・レッドフォードが大統領で、タルサでは暴動の犠牲者や子孫にレッドフォード賠償金が支払われている。だが、白人至上主義集団・第7機兵隊によって差別被害者を守る警察官への襲撃事件が起きるなど、過激な人種差別運動が問題化。警察官は自分と家族を守るため、マスクで顔を隠したヒーローとなることを余儀なくされている。核戦争の危機は去っても、差別はなくならなかったのだ。

「ウォッチメン」のヒーローたち

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シスター・ナイトを名乗るアンジェラと鏡のようなマスクをかぶるルッキンググラス

 主人公のアンジェラ・エイバーも、そんなヒーローの一人。といっても超人的なパワーを持っているわけではなく、もとはタルサの普通の黒人警官で、襲撃事件の数少ない生き残りでもある。事件後に表向きは引退し、漆黒の衣装とマスクの女性ヒーロー“シスター・ナイト”として活動している。

 冷徹なヒーローとして差別主義者たちに立ち向かうシスター・ナイトだが、素顔のアンジェラは、夫のカルや子供たちと共に穏やかな生活を送っている母親でもある。地元ではパン屋の経営者として暮らしているが、父親のように慕う警察署長ジャッド・クロフォードの呼び出しを受けると、店に隠した黒衣と武器を身に着け現場に急行する。

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普段は優しい母親だが、犯罪者には容赦がない

 「ウォッチメン」のヒーローたちは、基本的にスーパーパワーを持たない普通の人間。だからこそ、それぞれの事情からマスクで顔を覆った、彼らのキャラクターが際立つ。シスター・ナイトと共に活動するヒーローにも、鏡のようなマスクをかぶった尋問の天才ルッキンググラスや、真っ赤なマスクにジャージ姿のレッドスケア、着ぐるみのようなパンダマスクで顔を覆ったパンダ、海賊をイメージした女性ヒーローのパイレート・ジェニーなど、個性的な面々が集まっている。

伝説のコミック「ウォッチメン」

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 「ウォッチメン」は、伝説的コミックライターのアラン・ムーアが1987年に発表した同名グラフィック・ノベルがベースになっている。1985年を舞台に、歴史上の大事件にかかわってきたヒーローたちの暗殺事件を追う原作コミックは、文学作品としても高く評価され、SF文学の最高峰ヒューゴー賞に輝き、タイム誌の選ぶベスト100小説に選出。コミックの可能性をさらに広げた革新的な作品であり、引退した元ヒーローたちのトラウマや、倒錯した心理に迫る重厚な人間ドラマは、色褪せない魅力を放っている。

 ドラマ版にも、原作ファンがニヤリとする要素が用意されており、もちろん、原作で活躍したヒーローたちも登場。女性ヒーローのシルク・スペクターことローリー・ブレイクはFBI捜査官になっており、ある事件の捜査をするためタルサを訪れる。「世界一賢い男」と言われる実業家・オジマンディアスことエイドリアン・ヴェイトは、大勢の犠牲と引き換えに世界平和を成し遂げた後に自らの死を偽装し、現在は豪勢な城で召使いに囲まれながら、謎の実験を繰り返している。

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世界を一変させたオジマンディアスの現在は?

 一方、バットマンのように天才的な発明品を駆使するナイトオウルの所在は不明。また、あらゆる原子を操作する、劇中唯一のスーパーパワーを持った最強の存在ドクター・マンハッタンは火星に移り住んでおり、長らく地球を留守にしている。黒い液体がうごめく白いマスクのヒーロー、ロールシャッハについては、自らの正義に異常なまでに固執した名声を第7機兵隊に利用され、彼ら全員がロールシャッハのマスクをかぶり、過激な人種差別運動を繰り広げている。

ドラマ「ウォッチメン」ここに注目!

 今現実のアメリカでも、大統領の差別的な言動の影響もあり、白人至上主義者が新たな団体を立ち上げるなど、有色人種への差別が激化傾向にある。タルサでも今なお、黒人が犠牲になる事件が報道されている。ヴィラン(悪役)を捉えるだけでは解決しない問題に、スーパーヒーローは何ができるのか。コミックでは現実の米ソ冷戦時代を反映した「ウォッチメン」だが、ドラマもまさに現代のアメリカの抱える問題を描いている。

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答えのない問題にヒーローはどう立ち向かうのか?

 ドラマシリーズを企画したのは、謎だらけの展開で日本でも大ブームを巻き起こした海外ドラマ「LOST」の仕掛け人デイモン・リンデロフ。それだけに「ウォッチメン」でもエピソード毎に次々と予測不可能な事態が発生し、シスター・ナイトは、自身の現在と過去をつなぐ巨大な陰謀へと巻き込まれていく。互いにマスクで正体を隠した警察と犯罪者たちの戦いの行方は? そして、過去の歴史的な事件にかかわってきた元ヒーローたちは事件にどうかかわっていくのか。

 シスター・ナイトを演じるのは、昨年『ビール・ストリートの恋人たち』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したレジーナ・キング。確かな演技力で、冷徹なヒーローと母親の顔を持つ複雑なキャラクターを熱演する。そのほか、オジマンディアス役のジェレミー・アイアンズや、謎の老人ウィルを演じるルイス・ゴセット・Jrらオスカー俳優に加え、海外ドラマ「特捜刑事マイアミ・バイス」のドン・ジョンソン、『アクアマン』のヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世など実力派キャストが名を連ねる。(編集部・入倉功一)

海外ドラマ「ウォッチメン」はBS10スターチャンネルで1月31日より日本初放送(午後11:00~)
Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で2月1日(土)配信スタート
1月31日(金)まで第1話先行無料配信中 視聴サイトはこちら
「ウォッチメン」公式サイト
(C)2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

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