『ヲタクに恋は難しい』山崎賢人 単独インタビュー
この作品で、確実に引き出しは増えた
取材・文:磯部正和 写真:日吉永遠
漫画、アニメ、ボーイズラブを愛する隠れヲタク女子と、重度なゲームヲタク男子の恋を描いたWEB漫画を、福田雄一監督で実写映画化した『ヲタクに恋は難しい』。本作でゲームヲタク・二藤宏嵩を演じているのが、『斉木楠雄のΨ難』以来、2度目の福田組での映画出演となる山崎賢人だ。劇中では、歌やダンスなどミュージカルシーンにも挑んだ山崎が、本作で得た貴重な経験について語った。
歌やダンスへの挑戦も福田組なら、きっと良い感じにしてくれる!
Q:山崎さん演じる宏嵩は、クールな二枚目ながら重度のゲームヲタクという役柄でした。(山崎の「崎」は「たつさき」)
原作を読んだのですが、第1巻に取扱説明書みたいな形で、宏嵩のことが詳細に書かれていたので「これはありがたい」と思って参考にしました。でも結構シンプルな人間なんだなと思っていたので、そこまで考え込むことはなかったです。
Q:クールな宏嵩ですが、劇中では歌やダンスを披露するシーンもありました。オファーの段階で、ご自身が歌ったり踊ったりするのはわかっていたのですか?
はい。それを込みでの話でした。でも福田監督だったので、きっと良い形にしてもらえるんだろうなという絶大なる信頼はありました。安心して任せてみようと……(笑)。
Q:『斉木楠雄のΨ難』でも、一見クールなキャラでしたが、福田監督からはなにか求められることはあったのですか?
「賢人くんはメガネキャラ、冷静キャラが合っている」と言われました。そうなんだ、そういうキャラクターが合っているんだなと理解してやりました。
Q:「そんなことないのに」なんて思わなかったのですか?
それはなかったですね。福田組だからといって「どこかでふざけてやろう」という気持ちはまったくなかったです。作品全体のバランスを見て、自分の演じる役柄をまっとうしようという思いで作品に臨みました。
歌って踊る表現は、確実に芝居の引き出しを増やしてくれた
Q:ダンスや歌の準備はどのぐらい時間をかけたのですか?
ダンスは1か月ぐらいみっちり稽古をしました。歌に関しては間が空きながら3か月ぐらいかけてボイストレーニングしていきました。
Q:歌いながら踊るというのは難しいのではないですか?
確かに歌いながら踊るのはすごく難しいのですが、どちらかというと、歌うだけのシーンの方が苦手というか、じっとして歌う方が、視線がそこに集まってくるようで恥ずかしいんですよね(笑)。キーも結構高くて、叫ばないと声が出なかったので、一度ものすごく大きな声を出してしまって……。そのときは、本当に恥ずかしかったです。
Q:もともと歌うことは好きなのですか?
音楽は結構聴きますし、プライベートでも友達とカラオケによく行くぐらい好きです。最近はあまりやっていませんが、以前はよく友達とギターを弾きながら歌ったりもしていました。
Q:『キングダム』などで激しいアクションを経験していますが、ダンスに活かすことができるなと感じたことはありましたか?
それはありましたね。アクションとダンスというのは結構繋がっているなと思いました。
Q:ミュージカル的な要素が強い作品ですが、歌って踊るという表現は、お芝居をするうえで良い経験になりましたか?
確実に引き出しは増えたと思います。改めてボイストレーニングをして、声の出し方を一から学んだ気がしました。ダンスもリズムで動くことによって、コマで自分が見える感覚になったんです。一拍のリズムのなかでどれだけ動けるかというのを感覚として捉えられたことは、身体で表現するうえで、とても大きかったです。
Q:これまで経験したことがない感覚なのでしょうか。
芝居のなかで、そういう感覚になったことはこれまでもあったのですが、より研ぎ澄まされる感じというか……うまく言葉では言えないのですが、身になったという実感はありました。
共演・高畑充希は本当にすごい!
Q:歌って踊るという部分では、共演した桃瀬成海役の高畑充希さんは、ミュージカル経験も豊富で頼もしい存在だったのでは?
いやあプロですね(笑)。うまいし安定感も抜群だし、本当にすごいです。
Q:具体的にはどんなところが?
なんかナチュラルなんですよね。無理していないというか……頑張っているシーンでも、作っている感じがしないんです。
Q:山崎さんも大変なことでもサラッとこなしてしまう印象がありますが。
そうですかね? 結構頑張っている感が出てしまうことがあると思うのですが(笑)。充希ちゃんは笑いの感覚もメチャメチャ鋭い人だと思うし、ただただ「足を引っ張らないように頑張らなくては」という思いで現場にいました。
きっちりと役を突き詰めて、台本を読み込んだアプローチも今後は視野に!?
Q:作品に登場するキャラクターたちは、社会のなかで見せている顔と、自分自身の本質との二面性を持っていました。
だからこそ人間って面白いなと思います。深く考えれば難しいし、シンプルに考えればそうでもないですしね。人間関係って気の持ちようでどうにでも変わるのかなと思いますね。
Q:成海も宏嵩も思ったことを、あまりはっきり言えないタイプですが、山崎さんはどうですか?
僕も嫌だと思っていることは、はっきりは言えません。どちらかというと我慢します。でもどこかで態度には出てしまっているような気がしますね。ちゃんと見ていると、漏れ出ているかもしれません(笑)。
Q:そんな山崎さんが今後、声高にチャレンジしてみたいと思っていることはありますか?
なんでしょうね(笑)。でもこれまで現場を経験して、演じるキャラクターについて、例えば好きな食べ物とか、血液型とかバックヤードを詳細に考え抜いてやっている人と、その場の空気感でやっている人がいるなと感じていました。僕はちょうど真ん中ぐらいなのかなと自覚していたのですが、今後は、ものすごくきっちりと役を突き詰めて、台本を読み込んだアプローチをしてみたいなと思っています。
Q:楽しみですね。
映像技術もどんどん進歩していくと思うのですが、しっかりと受け入れて、自分も波に乗っていきたいです。
メガホンをとった福田雄一監督は、最初に山崎のダンスを見たとき「ダンサーの血が流れてない!」と焦ったようだが、レッスンを経て劇中では見事なステップを披露した。本人いわく「本当に楽しかった」と笑顔を見せていたが、どんな状況でも「楽しもう」とする山崎の姿勢こそが、彼の最大の武器なのだろう。「福田監督の作品は人を幸せにしてくれる」と山崎は語っていたが、そんな福田組と山崎のタッグは、ある意味で最強の組み合わせなのかもしれない。
映画『ヲタクに恋は難しい』は2月7日より全国公開