アカデミー賞受賞作多数!3月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、アカデミー賞主演女優賞受賞作、アカデミー賞衣装デザイン賞受賞作、奴隷解放運動家として知られる女性の半生を描いた伝記映画、『映画ドラえもん』シリーズ最新作、ディズニー/ピクサー最新作。これが3月の5つ星映画5作品だ!
レネーに魅せられっぱなしの濃密な2時間
『ジュディ 虹の彼方に』(3月6日公開)
ハリウッドを代表する大スター、ジュディ・ガーランドの苦楽に満ちた晩年を、徹底的なリサーチとトレーニングを積んで表現し尽くしたレネー・ゼルウィガー。レネーが纏う空気は、苦境に陥ったかつてのスターの不安、悲しみそのもので、スクリーンを超えて伝わってくる。レネーの吹き替えなしの歌唱シーンは、ジュディの話し方や細かな仕草も完全に再現し鳥肌もの。冒頭から心を激しく揺さぶられるラストまで、レネーに引き込まれ続けるあっという間の約2時間。先日の第92回アカデミー賞主演女優賞受賞にふさわしい技量を示した。物語をよりドラマチックにしているのは、どん底のジュディを温かい視線で見守る世話係やファン、そしてジュディの愛する子供たちの存在で、彼等を演じる俳優陣の名演が相乗効果となり、傑作映画へと押し上げている。(編集部・小松芙未)
不朽の名作が問いかける「自分らしい幸せ」
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(※公開延期に伴い初夏公開予定)
150年以上前に発行された不朽の名作小説「若草物語」を『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンのコンビで映画化した本作は、南北戦争下につましく暮らす一家の4人姉妹の絆と成長が描かれる。自分らしく生きるため夢に向かって突き進む次女のジョーを、シアーシャがエネルギッシュにみずみずしく演じている。「女性の幸せが結婚だけではない」と時にユーモラスに時に真剣に語るジョーの言葉は、多様性が尊重される現代だからこそ相応しいテーマ。ジョーとは対照的な性格で、天真爛漫だった四女のエイミー役のフローレンス・ピューの少女から芯の強い大人の女性へと成長していくみずみずしさは、アカデミー賞助演女優賞ノミネートも納得の演技。さらに共演のローラ・ダーン、ティモシー・シャラメの存在感のある演技が作品により厚みを持たせている。また、第92回アカデミー賞で衣装デザイン賞に輝いた、4姉妹を彩る美しいドレスにも注目だ。(編集部・梅山富美子)
自由のために戦った彼女の勇気こそ現代へのメッセージ
『ハリエット』(3月27日公開)
アフリカ系アメリカ人で初めて20ドル紙幣の肖像に採用されることが決まったハリエット・タブマンの激動の半生を描く。奴隷として生まれた彼女は、一人で奴隷制が廃止されたペンシルベニア州への逃亡を果たし、家族や仲間を助けたい一心で奴隷解放運動に身を投じていく。ハリエットを演じたのは、ミュージカル「カラー・パープル」でトニー賞主演女優賞など、各賞を総なめにしたシンシア・エリヴォ。本作でも文句なしの存在感で、正義のために危険を顧みず戦い続けた女性を体現。劇中で披露される圧巻の歌声はハリエットの堂々たる英雄ぶりに説得力を与え、物語に絶妙なアクセントを加える。どんなときも勇気を失わず、多くの人の意志を代表してリーダーシップを発揮する主人公に心動かされるとともに、自由を手にするためにこれほど壮絶な経験をした人たちがいたのかと驚嘆する。今なお根深い人種や性差別などの問題への力強いメッセージとなっている。(編集部・大内啓輔)
さすがドラえもん!シンプルなメッセージが胸を打つ
『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(※近日公開予定)
『映画ドラえもん』40作目となる本作。「恐竜」というテーマは、2006年にリメイクもされた1作目『映画ドラえもん のび太の恐竜』などでも描かれたが、今作は新しいストーリー。のび太が双子の恐竜・キューとミューに出会い、6,600万年前の時代で大冒険を繰り広げる。卵から生まれた恐竜の赤ちゃんに、初めて触れたとき、初めてご飯をあげたとき……。大切な瞬間を一つ一つ丁寧に描写することで、のび太の純粋で無邪気な感受性をいきいきと表現していく。弱虫ののび太と頼りないキューが次第に重なって見えてくる成長物語はいたってシンプルだが、柔らかく胸を打つ作品のメッセージは、ドラえもん映画の真骨頂。そして、飾らない王道ストーリーをみずみずしく描き出すのは、ヒットメーカーである脚本・川村元気と今井一暁監督のタッグのなせるわざだ。木村拓哉が声をあてた謎の男もいい味を出している。(編集部・小山美咲)
兄弟愛に涙が枯れるほど泣かされる!
『2分の1の魔法』(※近日公開予定)
技術の進歩によって魔法が消えかけたファンタジーの世界を舞台に、死んだ父を“完全体”としてよみがえらせる旅に出るエルフの兄弟の姿を描いたディズニー/ピクサーのアニメーション映画。1歳の時に父親を亡くした『モンスターズ・ユニバーシティ』のダン・スキャンロン監督の父と兄への思いが込められており、下半身だけのお父さん(最初のよみがえりの魔法が不十分でそんな姿に!)、そして陽気な魔法オタクの兄の一挙手一投足が驚くほど細やかに描かれている。そのため102分という短い上映時間ながら、彼らがこれまでに築き上げてきた絆の強さを感じさせる演出がドラマチックに展開し、愛にあふれた物語に涙が枯れるほど泣かされる。好対照な兄弟の声を演じたトム・ホランド&クリス・プラットの抜群のケミストリーがその感動を一層強いものにしているのは言わずもがな。日本語吹き替え版の志尊淳&城田優もかなりのはまり役だ。(編集部・市川遥)