東日本大震災、記憶や教訓を風化させない─映像を観て思う
東日本大震災から11日で9年を迎えますが、いまだに被災地では帰宅が許されていない地域、避難指示が解除されても居住は許されていない地域、また生活インフラの整備も追いついていない地域もあります。震災を風化させないよう、震災に関するテーマを扱った作品を紹介します。
「復興」って何だろう?
『春を告げる町』3月21日公開
東日本大震災の発生直後に全町避難となった福島県双葉郡広野町にフォーカスしたドキュメンタリー。東京オリンピック聖火リレーのスタート地点になっている「ナショナルトレーニングセンター Jヴィレッジ」があるこの町に暮らす人々の営みを映す。
福島第一原子力発電所で戦った
『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』(公開中)
多くの関係者への取材を基に書かれた門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を実写映画化。世界を震撼(しんかん)させた東日本大震災による福島第一原子力発電所事故発生以降も現場に残り、日本の危機を救おうとした作業員たちを描く。
映画『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』公式サイト
人は放射能と共存できるのか?
『サマショール ~遺言 第六章』(公開中)
福島第一原子力発電所の事故で、避難指示が出された福島県飯舘村を取り上げたドキュメンタリー。東日本大震災から6年が過ぎ、故郷で放射能と共に生きようとする人々を映し出す。前作『遺言 原発さえなければ』でも組んだ、フォトジャーナリストの豊田直巳と野田雅也が監督を務めた。
電話線はつながっていないが“天国につながる電話”
『風の電話』(公開中)
岩手県大槌町に設置された、会えなくなった人に思いを伝えるための「風の電話」を題材に描くロードムービー。東日本大震災で家族を失った主人公が、さまざまな人と接した後に風の電話を訪れる。主人公を『恋恋豆花』などのモトーラ世理奈が演じ、ドラマ「就活家族 ~きっと、うまくいく~」などの三浦友和、『任侠学園』で共演した西島秀俊、西田敏行らが出演。
震災の痛みを抱え続けてきた家族の再生の物語
東日本大震災で長女が行方不明になった家族の一日を描くヒューマンドラマ。震災以来時が止まっている一家が、再び歩き始めようとする。『スプリング、ハズ、カム』などの吉野竜平監督がメガホンを取り、脚本も担当した。出演は、河合瑠果、松木大輔、村田美輪子をはじめ、駒澤晴信、守屋惠美、しゅはまはるみら。
震災後、仏教は果たして必要とされているのか?
『サウダーヂ』などの富田克也監督が、曹洞宗の若い僧侶の苦悩と東日本大震災以降の仏教の意義をドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜて描いた異色作。修行を共にした兄弟子と弟弟子の物語を軸に、曹洞宗の開祖・道元禅師が著した「典座教訓」の教えをひもとく。
復興プロジェクト「東北三部作」最終章
『薄暮』
『Wake Up, Girls!』シリーズやアニメ「らき☆すた」などの山本寛監督が、東日本大震災の復興プロジェクトとして手掛ける東北3部作の最終作となるアニメ。福島県を舞台に、バイオリンの演奏が得意な女子高校生と絵を描くことが好きな男子高校生の恋模様が描かれる。
大災害時における障害のある人の状況と支援者の活動を描く
東日本大震災で被災した障害のある人たちと支援者の実話を基に映画化した群像ドラマ。震災後の障害者の状況と、支援者の活動が劇映画として描かれる。メガホンを取ったのは、大林宣彦監督作『花筐/HANAGATAMI』などに携り、ドキュメンタリードラマなどを手掛けてきた松本動。
亡き人の魂を慰め、生者を元気づける祈りの舞
『廻り神楽』
東日本大震災で被災した岩手県の三陸海岸で継承されてきた黒森神楽の軌跡を追ったドキュメンタリー。国の重要無形民俗文化財である神楽のありのままの姿を映し出す。ドキュメンタリー映画をはじめ人類学や民俗学の映像を手掛ける大澤未来と、ドキュメンタリー映画の企画・制作・配給などをしてきた遠藤協が共同で監督を務めた。
14人の被災者たちが自らの言葉で語る思い
『福島は語る』
『飯舘村 放射能と帰村』などの土井敏邦が監督を担当し、福島第一原子力発電所事故の被災者たちに迫るドキュメンタリー。100人以上の証言者の中から、母親や農業従事者、仮設住宅で暮らす人々などが思いの丈を口にする。
震災後の福島の農家を舞台にした都会の青年の成長譚
東日本大震災後の福島県で農業を営む人々の姿を、福島県出身の渡邉裕也監督が描くヒューマンドラマ。渡邉監督の祖父の姿をヒントに、福島の農家で働き始めた都会の青年が成長していく姿を映し出す。『太陽を掴め』などの吉村界人が主演を務め、『女の子ものがたり』などの大後寿々花や、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』などの萩原聖人らが脇を固める。
震災により長引く避難のため伝統の「盆唄」消滅の危機となったが…
『盆唄』
東日本大震災から4年がたち福島県双葉町で避難生活を過ごさなければならない人々が伝統の「盆唄」消滅の危機に奮闘する、唄や音楽に迫ったドキュメンタリー。かつてハワイに移住した人々に福島の盆踊りが継承されていることを知った双葉の人々が、盆唄を披露するため、マウイ島に出向く。『ナビィの恋』などの中江裕司が監督を務め、アニメパートの声を余貴美子、柄本明、村上淳、和田聰宏らが担当している。