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アジアの注目作目白押し!4月の5つ星映画5作品はこれだ!

今月の5つ星

 今月の5つ星映画は、ゴールデン・グローブ賞女優賞受賞作、行定勲監督最新作、韓国新進監督の長編デビュー作、山田孝之最新作、ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画。これが4月の5つ星映画5作品だ!

山崎賢人と松岡茉優が演じる不器用な男女に魅了される

劇場
(C) 2020「劇場」製作委員会

劇場』(公開延期)

 「ピース」の又吉直樹の恋愛小説を、行定勲監督が映画化。山崎賢人が劇作家を目指す青年・永田、松岡茉優が彼を支える恋人の沙希を演じた。不器用な男女のラブストーリーを通して描かれる、人と人の関係、夢と現実の狭間は、スクリーンから温度さえ伝わってくるほど生っぽくて痛々しい。主演の山崎は、どうしようもないダメ男を人間味たっぷりに演じた。『キングダム』「グッド・ドクター」などで近年さまざまな表情を見せてきた山崎だが、まだまだ引き出しがあることに驚く。無精ひげと無造作な長髪という見た目だけでなく永田の危うさやもろさがリアル。その相手役を務めた松岡も、彼女にしか演じられなかったと思えるような役の飲み込みっぷり。派手な出来事は起こらないなか、そんな2人の演技に魅了されていく。そして、前半の一つ一つの出来事が、クライマックスの展開に効いてくる演出。静かに、かつ痛烈に作品のメッセージが突き刺さる。(編集部・小山美咲) ※(山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記)

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韓国映画界の豊穣さを実感!長編デビュー作にして傑作

はちどり
(C) 2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.

はちどり』(公開延期)

 ベルリン国際映画祭をはじめ世界各国で50以上もの賞に輝いている本作は、1994年のソウルに暮らす14歳の少女ウニの孤独と成長を描いた作品。自身の体験を基に本作のメガホンを取ったキム・ボラ監督は、思春期の渦の中にいるウニの痛みや不安定さを繊細に表現した。触れたら傷ついてしまいそうなガラスの10代を描きながらも、鬱屈とした暗いだけの描写へと走らなかった点が素晴らしい。監督が向ける温かな眼差しが全編を通して印象的で、その温もりはヒロインだけでなく思春期を経験した全ての観客までも包み込むだろう。家族描写からは男性優位社会での女性の生きづらさも読み取ることができ、韓国で勢いを増しているフェミニズムの波も感じられる。監督はこれが長編デビュー作。『パラサイト 半地下の家族』だけでなく、こうした新たな才能を世界に送り出せる韓国映画界の豊かさに改めて圧倒される。(編集部・吉田唯)

山田孝之の父親っぷりに涙が止まらない

ステップ
(C) 2020映画『ステップ』製作委員会

ステップ』(公開延期)

 数々の小説が映画化されてきた重松清の「ステップ」を『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』の飯塚健監督が山田孝之主演で映画化。突然妻に先立たれた主人公・健一(山田)が、シングルファーザーとして娘の美紀とともにゆっくりと成長していく10年間が丁寧に切り取られている。素朴な父親にふんした山田の表情、子育ての喜び、辛さ、親子の成長など泣かせる要素が満載の映画だ。健一の義父役の國村隼、美紀を預かる保育士役の伊藤沙莉、健一の同僚役の広末涼子ら共演者それぞれの演技も光り、泣きっぱなしの2時間になる。単純な感動ものではなく、飯塚監督の時にはフッと笑わせて観客をリラックスさせる演出と、それに応える山田のたしかな演技と爽やかさが作品全体に軽快さをプラスしている。『闇金ウシジマくん』シリーズなどにおける怪演の印象も強い山田の、これまでにない素朴な父親っぷりは俳優・山田孝之の振り幅の大きさを感じさせる。(編集部・海江田宗)

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ゾンビ映画の枠を超えて鳴らされる現代人への警鐘

デッド・ドント・ダイ
Credit : Abbot Genser / Focus Features (C) 2019 Image Eleven Productions, Inc. (C) 2019 Image Eleven Productions, Inc. All Rights Reserved.

デッド・ドント・ダイ』(公開延期)

 警察官が3人しかいない田舎町で巻き起こるゾンビ映画。ビル・マーレイアダム・ドライヴァーティルダ・スウィントンなどジム・ジャームッシュ作品に出演してきた顔ぶれが揃い、一癖も二癖もあるキャラクターたちが物語を盛り上げる。パロディーやコメディー要素もふんだんに盛り込まれ、ゾンビが町にあふれてきてもどこかのんびりとした雰囲気が漂う。これまで西部劇やヴァンパイア映画というジャンルの枠組みを借りつつ、新たな解釈を施してきたジャームッシュの試みとあり、こんなゾンビ映画もあるのかと驚く。だが、ただただ笑ってばかりもいられないのは、この映画に登場するゾンビという存在が突きつける、現代人への警鐘が響いているからだ。街を埋め尽くすコーヒー・ゾンビ、WiFiゾンビ、ギター・ゾンビ、シャルドネ・ゾンビなど、生前の物欲に従って行動する彼らは、今を生きる私たちを写した鏡なのだと痛感する。(編集部・大内啓輔)

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優しい嘘をめぐる、家族の葛藤と愛の物語

フェアウェル
(C) 2019 BIG BEACH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

フェアウェル』(公開延期)

 『ムーンライト』『ミッドサマー』といった話題作を連発するスタジオ・A24の新作は、新鋭ルル・ワン監督の実体験から誕生した心温まるドラマ。末期ガンで余命宣告を受けた祖母に真実を打ち明けようとする主人公ビリーと、嘘を貫き通そうとする家族の葛藤と愛情を活写する。真実を伝えられず、もどかしさを募らせるビリーを演じたのは、『オーシャンズ8』『クレイジー・リッチ!』などのオークワフィナ。パワフルな役柄が多かった彼女が、優しい嘘に翻弄される繊細な主人公を体当たりで演じており、アジア系女優で初めてゴールデン・グローブ賞女優賞を受賞したことも納得させる。誰も傷つかない優しい嘘を巡って、感情をぶつけ合う家族と共に、東洋と西洋の文化の違いをユーモアを交えて表現したルル監督の手腕にも驚かされる。家族のあり方を改めて考えさせられる、ハートフルな傑作。(編集部・倉本拓弥)

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