GWにじっくり観たい映画特集2020~名作映画編~
いままで観る機会がなかった王道の名作映画をゴールデンウィークにチェックしてみるのはいかがだろう。美男美女が出そろう恋愛ものから、マフィア映画、感動の女性賛歌など、長い時を経ても多くの人から支持を得続けているのは理由がある……そんな不朽の名作をご紹介します。(文・平野敦子)
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不朽の名作映画
『哀愁』(1940)
ヴィヴィアン・リーといえば『風と共に去りぬ』(1939)のタフなヒロイン、スカーレット・オハラ役が有名だが、彼女のクラシカルな美貌を最大限に引き出した作品と言えばこちら。第一次世界大戦下のロンドンを背景に、戦争によって引き裂かれた男女の悲恋を映し出す。陰影に富んだモノクロームの映像で映し出されるヴィヴィアンと、ハリウッド屈指の美男子ロバート・テイラーの美男美女っぷりにウットリ。かなわぬからこそ美しく純粋な男女の熱き思いがほとばしる、古典的ラブストーリーの最高傑作。堕ちていく美貌のヒロインの悲運に号泣必至の名作中の名作だ。
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『ローマの休日』(1953)
“永遠の妖精”として今なおスクリーンの中で輝き続けるオードリー・ヘプバーンと、ハリウッドを代表する二枚目俳優グレゴリー・ペック共演のロマンティックコメディー。とある国の王女が偶然出会ったアメリカ人新聞記者とお忍びで、束の間のローマの休日を楽しむ様子を活写する。短い前髪とサイドをカールした“ヘプバーンカット”で、キラキラ瞳を輝かせながらスペイン広場の階段や「真実の口」などの名所を闊歩(かっぽ)する王女の姿がなんとも言えずかわいらしい。王女と新聞記者の身分違いの恋はほろ苦くて甘酸っぱい。
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『東京物語』(1953)
日本を代表する映画監督小津安二郎のメガホンの下、原節子や笠智衆、杉村春子らおなじみの俳優たち共演で贈る人間ドラマ。田舎から老夫婦が上京するものの、彼らを手厚くもてなすのは血がつながった実の子供たちではなく、戦死した息子の未亡人だけという皮肉に満ちた家族の姿を紡ぎだす。小津監督の人間の本質を鋭く見抜く力は、まるで現在の格差社会や家族崩壊などの社会問題を予見するようなストーリーによく表れている。人が生きていく上で感じる孤独感はもとより、愛すべき登場人物たちの愚かささえも温かく包み込む、味わい深い小津監督の代表作だ。
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『ゴッドファーザー』(1972)
シシリアン・マフィアの世界を描いたマリオ・プーゾのベストセラー小説を映画化し、一気にフランシス・フォード・コッポラ監督の名前を世に知らしめた不朽の名作。3部作の第1作となる本作では、マーロン・ブランドやアル・パチーノやロバート・デュヴァルら豪華俳優陣の演技バトルが楽しめる。否応なくマフィア同士の仁義なき戦いに身を投じ、血を流さずにはいられない男たちの美学を、ニーノ・ロータによる物悲しい名曲「愛のテーマ」が盛り上げる。陰謀と裏切りと殺戮の嵐が吹き荒れる中、頂点に立つゴッドファーザーの圧倒的なパワーと存在感にゾクゾクする。
『ゴッドファーザー』はNetflix 、Amazon Prime Video、U-NEXT、Huluほかデジタル配信中
『セーラー服と機関銃』(1981)
『翔んだカップル』(1980)の相米慎二監督と薬師丸ひろ子が再びタッグを組み、赤川次郎原作の同名小説を映画化。ひょんなことからヤクザの跡目を継ぐことになったごく普通の女子高生が、四人の子分たちを従え、対立組織に戦いを挑む姿を映し出す。撮影当時17歳だった薬師丸の女子高生パワー全開! セーラー服姿の彼女がマシンガンをぶっ放す危うい美しさはもとより、彼女がつぶやく名ぜりふ「カ・イ・カ・ン」も強烈な印象を残した。普通の高校生活では絶対に味わえないスリル満点の日々の中、次から次へと災難に見舞われながらも、次第に凄みを増していく女子高生の成長ぶりが見事だ。
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『羊たちの沈黙』(1991)
アンソニー・ホプキンスと言えばイギリスを代表する名優だが、彼の俳優としての運命を決定付けたのが本作のハンニバル・レクター博士役だ。ジョディ・フォスター演じるFBIの訓練生クラリスが、元精神科医で殺人鬼のレクター博士のもとを訪れ、猟奇殺人事件解決の糸口を探るサイコサスペンスに目が釘付けになる。一見エレガントに見えながらも、内側にはプリミティブな狂気を抱えた男を演じるホプキンスの迫力たるや神がかっている。予定調和も勧善懲悪も吹っ飛ばし、常識さえも笑い飛ばすかのように、したたかに存在する“悪”のパワーが、観る者を未知の世界へと誘惑する。
『レオン』(1994)
『グラン・ブルー』(1988)のリュック・ベッソン監督が、ハリウッドで初メガホンを取ったバイオレンスアクション。ニューヨークで孤独に生きる殺し屋と12歳の少女の逃避行と、凶暴なまでの純愛を描く。本作で寡黙な殺し屋を演じたジャン・レノと、達観した大人の顔と、無邪気さをあわせ持つ少女を演じきったナタリー・ポートマンのコンビは最強! 登場シーンは多くないものの、強烈な悪役として映画史に残るゲイリー・オールドマンの徹底したクズぶりにも注目。少年の心を持った大男の殺し屋と、成熟した大人の女の顔を持つ少女を待ち受ける、過酷な宿命があまりにも切ない。
『レオン』はNetflix、Amazon Prime Video、U-NEXTほかデジタル配信中
『オール・アバウト・マイ・マザー』(1998)
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が、セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルスらお気に入りの女優たちと組んで手がけた感動作。最愛の息子を亡くした母親が、自らの悲しみを乗り越えていく旅路をカラフルな色彩と共に描き出す。現代社会が抱える麻薬、同性愛、エイズ、親子間の不和などの問題を巧妙に物語に織り交ぜながら、最終的に女性が持つしなやかさ、そして前向きな明るさにスポットを当てる。一見するとどうしようもなく暗い話だが、メゲずに重苦しい現実を笑い飛ばすのがアルモドバル流。第72回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた必見作。
『オール・アバウト・マイ・マザー』はU-NEXTにてデジタル配信中
『猟奇的な彼女』(2001)
キム・ホシクのインターネット小説を基に、ラブストーリーの名人クァク・ジェヨン監督が描くロマンティックコメディー。ルックスは完璧なのに「ぶっ殺されたい?」が口癖の凶暴な“彼女”に、バカがつくほどお人よしの大学生キョヌが振り回される。彼女を演じるのは、さらさらのロングストレートヘアと、9頭身のスレンダーボディーが魅力のチョン・ジヒョン。この作品は彼女の純粋さとセクシーさ、コケティッシュな魅力なしには成立しない。純愛ものを得意とする韓国映画の王道を行く、楽しくて、ホロリとして、最後には大きな感動が待つラブストーリーに号泣必至。
『猟奇的な彼女』はNetflix、Amazon Prime Video、U-NEXTほかデジタル配信中
『フラガール』(2006)
松雪泰子、蒼井優、豊川悦司ら豪華キャストが共演する感動のヒューマンドラマ。昭和40年代、福島県いわき市の町おこしとして考え出された“常磐ハワイアンセンター”誕生秘話を、笑いと涙を交えて映し出す。炭鉱の町に、誰も見たことがないフラダンスを定着させようと悪戦苦闘するダンス教師と、ひたむきな娘たちの踊りへの情熱がほとばしる姿にしみじみ感動。松雪演じる都会的な元花形ダンサーと、いかにも純朴そうな蒼井らが演じる娘たちの対比も面白い。実話をベースに描かれる、フラダンスへの熱い思いと、女性たちのパワー炸裂のストーリーに勇気をもらう。
『フラガール』はNetflix、Amazon Prime Video、U-NEXTほかデジタル配信中