映画『るろうに剣心』最終章の見どころは?ココに期待
日本の映画界にアクション革命を起こしてきた『るろうに剣心』シリーズの最新作にして完結編となる2部作、映画『るろうに剣心 最終章 The Final』(7月3日)と『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(8月7日)が連続公開される。その全貌はまだ明かされていない部分もあるが、現在発表されている情報や原作漫画の展開などから、最終章の見どころとなりそうなポイントに注目してみたい。
剣心のルーツに迫る物語
和月伸宏による人気漫画「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」を実写化した映画『るろうに剣心』シリーズ。明治維新後に「不殺(ころさず)の誓い」を立てた伝説の暗殺者「人斬り抜刀斎」こと緋村剣心が、愛する仲間との出会いや宿敵たちとの戦いを繰り返しながらも、新時代を生き抜こうとする姿を描く。原作漫画の本編は、1994年から1999年に「週刊少年ジャンプ」で連載。その物語は大きく3章にわかれており、最初のエピソードである通称「東京編」を基にしたのが2012年公開の『るろうに剣心』。「京都編」を基にしたのが2014年公開の2部作『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』。そして、最後の「人誅編」を基にするのが、今回の最終章2部作となる。
この「人誅編」は、その一部が「追憶編」「星霜編」としてOVA(オリジナルビデオアニメーション)化されたものの、原作連載中に終了したテレビアニメ版では描かれておらず、全編の本格的な映像化は初となる。剣心が過去の因縁と真正面から向き合わざるをえなくなる物語で、復讐のために襲いかかってくる義弟・雪代縁(えにし)との激闘を描くと共に、妻・雪代巴(ともえ)を斬殺してしまった過去を明かすことになる。剣心の頬の縦に入った刀傷は、暗殺した窪田正孝演じる清里明良によってつけられたことが、1作目の映画で描かれた。それが、なぜ十字傷となったのか。そこに亡き妻・巴が深く関わっていることが明かされる。剣心を演じる佐藤健は、「それら(シリーズ)全てを演じた僕の中には、雪代巴という一人の女性が内包されていました」と語っており、1作目の撮影時から殺めてしまった亡き妻を想いながら撮影に臨んでいたという。「不殺(ころさず)の誓い」を立てた理由にも深く関わる剣心と巴の物語は、シリーズの根幹にリンクするもので、最終章ならではといえる。
また、『京都大火編』で蒼井優演じる医者の高荷恵から、小さな身体で長年戦いを重ねてきた剣心の肉体を心配する台詞があったが、最終章ではそれが明るみとなり、肉体的にも精神的にも追い込まれていく。『最終章 The Final』ではその中での最強の敵・縁との激闘、『最終章 The Beginning』では亡き妻・巴との過去の物語が、それぞれ見どころとなるだろう。
新キャラクターも登場!ハマり役のキャスティング
原作ファンも納得の絶妙なキャスティングも大きなポイントとなる本作。唯一無二ともいえるハマリ役の主人公・緋村剣心役の佐藤健はもちろん、1作目から出演の武井咲、青木崇高、蒼井優、江口洋介らのレギュラーキャストが続投。さらに、2作目『京都大火編』から登場した伊勢谷友介、土屋太鳳、三浦涼介の出演が発表されている。そして、今回も豪華な新キャストが登場する。中国大陸の裏社会を牛耳る謎の武器商人で最強の敵・雪代縁には新田真剣佑。人斬り抜刀斎の時代の剣心が唯一心を許した亡き妻・雪代巴には有村架純。ほかに、縁が率いる上海マフィアの副官・呉黒星(ウーヘイシン)に音尾琢真、剣心の過去に大きな影響を残す旧幕府直属の隠密組織・闇乃武(やみのぶ)のリーダー・辰巳に北村一輝、役名は不明だが、鶴見辰吾、中原丈雄の出演も発表されている。
また、原作漫画では、剣心を苦しめる縁の同志たちや闇乃武のメンバーたち、そして、過去に深く関わる桂小五郎、高杉晋作、新選組なども登場する。ただ、縁の同志たちの中には、一部のキャラクターの名前を1作目に登場させてしまっていることもあり、原作のどのキャラクターが実際に登場するのかはまだわからない。しかし、未発表のキャラクターの新キャストがまだまだ隠されているだろうし、『京都大火編』『伝説の最期編』で剣心の師匠・比古清十郎を演じた福山雅治のような驚きの大物キャストも期待できるかもしれない。
佐藤健VS新田真剣佑の限界アクション
やはり最大の見どころといえば、アクション監督の谷垣健治が、スタントコーディネーターの大内貴仁らと共に、毎回斬新な表現に挑み、日本映画界に革命を起こしてきた超絶アクション。アクションシーンの撮影には、準備期間も撮影日数もかかり、当然ながらお金もかかる。それまでの日本映画ではなかなか実現できなかった、面白いアクションシーンを撮るための環境を整えることが、その重要性に理解のあった大友啓史監督と組むことで実現した。リアルさとケレン味をあわせ持つスピーディーな剣さばきは、従来の時代劇とは一線を画し、このシリーズを象徴する独自のものとなった。予算や物量ではかなわなくても、ハリウッドとは違う日本ならではのソードアクションとして、世界的にも高い評価を受けている。『るろうに剣心』のヒットは、アクション大作のヒットの実績が少なかったことからも、その製作環境を整えることが難しかった日本映画界に風穴をあけることに成功し、新たな道筋を切り拓いたエポックメイキングの一つといえる。
そして、役者本人が多くのアクションシーンを自ら演じており、佐藤健らの身体能力の高さにも毎回驚かされる。それらは、各役者がクランクイン前に数か月ものトレーニングを行っているからこそ、実現できたものだ。そして、今回はなんといっても新キャストの新田真剣佑に注目したい。新田は、日本が誇るアクションスター・千葉真一の息子であり、小さい頃から格闘技などのトレーニングを受けてきている。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』などへの出演はあるが、今回の縁という役は、シリーズ最強ともいえる体術を組み合わせた剣技の使い手のため、初めてそのポテンシャルを全開にした本格的なアクションを見せてくれるはず。剣心と縁の闘いは、佐藤と新田の限界に挑むようなアクションになるのではないだろうか。また、剣心の過去に登場する闇乃武たちも、剣心をギリギリまで追い詰める敵なので、それをどう表現してみせるのかが楽しみだ。
完結編となるのか!?
原作漫画自体は、最終章から数年後の物語を描く「北海道編」が「ジャンプスクエア」で連載中だが、これはあくまで本編完結後かなりの時を経た後に描かれることになった新たな物語。剣心の物語を描く原作漫画本編としては、「人誅編」で完結していることを原作者も語っているため、おそらく今回の最終章2部作が最後であることは間違いないだろう。最終章2部作を通して過去と向き合った剣心が、どのような結末を迎えることになるのか。10年近くをかけてつむがれてきた日本映画史に残るアクション時代劇大作の大団円を楽しみに待ちたい。(天本伸一郎)