ウーマン村本のイチオシ『37セカンズ』
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門最高賞(観客賞)などを受賞した村本オススメの映画、『37セカンズ』について語ります!(取材・文:森田真帆)
『37セカンズ』
手足が不自由な主人公が外の世界へ飛び出し成長していく過程が描かれる。監督はアメリカで映画を学び、本作で長編デビューを果たしたHIKARI。主演をオーディションで選ばれた実際に障害のある佳山明が務め、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、渋川清彦、板谷由夏らが脇を固める。
目をつむりがちな真実
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中川パラダイス(以下、中川):障害者用の風俗ってあるんやなぁ。全然知らんかったけど、ちゃんと性欲を処理できる場所があってちょっと安心したわ。
村本大輔(以下、村本):脳性麻痺の友だちがいて、ずっと性欲があることを言いづらかったらしいねん。男は性欲があって当然みたいなところあるけど、女性でも障害者でも欲求があるということをちゃんと描くことが素晴らしいと思うねん。一人の女性が声を出していることに対して肯定するような映画やな。
中川:そもそも女性に性欲があるとかって男性は目をつむりがち。男の価値観がひっくり返ることが嫌なんだと思う。僕だって考えたくないもの。
村本:よう言うわ! お前んとこの嫁が一番性欲の塊やんか! だって家に帰ったら、嫁が浮気を心配して、玄関先で押し倒されるんやろ。
中川:そうやで。15セカンズで!
村本:そんなところでこの映画の神聖なタイトルを使うな!
パラ兄のおかんはスーパー過干渉ママ!?
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村本:ヒロインのお母さんは、めっちゃ彼女のことが心配で仕方がなくて、過干渉気味やん。パラダイスのおかんも相当過保護やもんな。
パラ兄: そうやで。末っ子だから、めっちゃかわいがられたわ。考え方は映画の中のお母さんに似ていたと思うわ。例えばさ、僕にとっての友だちは人生経験を積む為の存在だけど、おかんにとっては悪の道に導く悪影響と勘違いして心配するところがあったね。
村本:新聞紙の話、めっちゃすごいよな。
中川:そうそう。僕、昔めっちゃお腹が弱い子で、すぐにうんこ漏らしてたん。だからいつうんこ漏らしてもいいように、おかんがエレベーターから玄関まで新聞紙敷いてくれてたんや。
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村本: その結果が中川やもんな。毒息子を育てる毒親やんか! オレの家庭は真逆でさ。小学校の時から、あなたの人生はあなたの人生、私のとは違うからっていう人だった。この映画のヒロインは、母親の束縛からの反抗やったけど、オレにとっての反抗は、おかんのことがめっちゃ好きだから、振り向いてほしくてする反抗やった。
ヒロインの生き方に共感
![37セカンズ](https://img.cinematoday.jp/a/TG5VKICv1RvD/_size_640x/_v_1590047641/4.jpg)
パラ兄: 僕ねぇ、あのヒロインの声がめっちゃタイプやった。すごいアニメ声やん。声高くてさ。かわいいねんなぁ。
村本: オレはやっぱり、彼女の生き方が好きやなぁ。あの生き方は芸人にも通じるところがあんねん。オレたち芸人が不満や怒りをネタにしていくように、彼女もマンガ家を目指す中で、実体験を経てエロいモノが描けるって言われるわけやん。それで自分も体験したいって、自分の知らない夜の世界へ飛び出す。それは、オレが福島とか沖縄とか行って自分に足りないモノを探しにいくのと同じだと思う。オレも彼女と同じように、行動を起こせる人間になりたい。それに、その旅の中で、彼女はいい出会いも多かったやん。介護士の男の子とかさ、歌舞伎町の人とか刺激的!
パラ兄: あの介護士の男は優しすぎると思ったけどな(笑)。
![37セカンズ](https://img.cinematoday.jp/a/TG5VKICv1RvD/_size_640x/_v_1590047641/5.jpg)
村本: お前は薄情な男やからな! お風呂も入れてたけど、あんなイケメンが入れていることが、一番女の子をムラつかせてるんちゃうかと。いや、逆になんかあったかもしれんやん。描かれていないだけでさ。37セカンズの裏テーマは旅行の裏で37回セックスしてるんちゃうか?
パラ兄: タイ旅行とかすごいし、オレならあんなにお世話でけへんわ。
村本: お前はどこまでも正直な男やな。普通そう思っても言われへんわ。オレ、沖縄に脳性麻痺の友だちがいて、オーストラリア旅行に誘われたけどやっぱり下の世話とか考えたときに躊躇してしまった自分がいた。正直さ、今はなんでも金で解決してるけど、劇中の介護士の彼のことをもっと見習うべきなんやろな。みんなが彼のような行動ができる時代になればいいよね。
![37セカンズ](https://img.cinematoday.jp/a/TG5VKICv1RvD/_size_640x/_v_1590047641/6.jpg)
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ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。