血みどろ花嫁!6月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、血みどろ花嫁のホラーコメディー、型にはまらない青春学園ストーリー、天才メイクアップ・アーティストのドキュメンタリー、ピュアな男女の青春映画、ベストセラー小説を映画化した恋愛映画。これが家で観られる6月の5つ星映画5作品だ!
洗練されているのに血みどろ!絶妙なバランスがGOOD
『レディ・オア・ノット』
結婚式の日の夜、嫁ぎ先の大富豪一族の伝統儀式としてゲームに挑まなくてはいけなくなった花嫁の戦いを描いたホラーコメディー。平和なゲームもあったものの、彼女が引き当ててしまったのは命を懸けたかくれんぼ……。「夜明けまでに花嫁を殺せないと自分たちが死ぬ」と信じ切って襲い掛かってくる家族たちは恐ろしくも滑稽で、「ダウントン・アビー」のような格調高き美術の中での血みどろのバトルも然り、相反するはずの要素が互いを引き立て合い、ひねりの効いたエンタメ作として楽しめる。新たなホラーヒロインとして鮮烈な印象を残したのは、ヒューゴ・ウィーヴィングの姪で女優のサマラ・ウィーヴィング。純白のウエディングドレス以上に血染めのドレスがよく似合い、クールに一人タバコをくゆらす姿のカッコよさといったら! 殺人マシンに変貌するわけではないものの、簡単にやられたりはしない、しぶとく大胆不敵なヒロインがよく似合っている。(編集部・市川遥)
6月24日(水)先行デジタル配信開始 7月15日(水)ブルーレイ+DVDセット発売
型にはまらない、自分だけの青春ストーリー
「私の“初めて”日記」
本作は、「イケてる彼氏がほしい」インド系アメリカ人の女子高生のデービーが主人公。ちょっぴり短気で自己中心的な彼女が、家族や親友、幼なじみと衝突しながら成長していくのだが、ナレーションはまさかの元テニスプレイヤー、ジョン・マッケンロー。現役時代に悪童と称されたマッケンローが、怒りに身を任せて行動してしまうデービーを否定しない語りは、思わず笑いを誘う。失敗して成長するのではなく、相手のせいにしたり、より状況を悪化させてしまう人間味あふれるデビーを、本作が女優デビューとなった新星マイトレイ・ラマクリシュナンが好演。ただの反抗期、と型にはめることができないデービーの抱える問題を、初演技とは思えないほど大胆に繊細に表現している。また、有色人種がメインキャストに多く起用されており、学校一イケている、デービーの意中の相手は日系3世という設定など、多様性の時代が色濃く反映された作品となっている。(編集部・梅山富美子)
Netflixオリジナルシリーズ「私の"初めて"日記」独占配信中
天才メイクアップ・アーティストの明暗
『ケヴィン・オークイン:美の哲学』
2002年に40歳という若さで他界した天才メイクアップ・アーティスト、ケヴィン・オークイン。シンディ・クロフォードやナオミ・キャンベル、ケイト・モスらが活躍したスーパーモデルブームを知る人は、彼女たちの美しさを引き出し、業界トップに上り詰めたケヴィンの華やかな面が印象に残っていることだろう。本作では、家族や友人、恋人、仕事仲間たちの証言によって、今まで知る由もなかったケヴィンの長年の苦悩や人柄が、花びらを一枚一枚めくるように明かされていく。それらの証言から当時の状況を容易に想像できることが演出・構成上の優れたところで、いつの間にか本当のケヴィンを知り、彼が抱えた痛みに共感し、彼の人生に思いを巡らすようになる。もちろん、メイクとファッションを目的に鑑賞するだけでも見応えは十分。完璧な美の舞台裏に圧倒される。(編集部・小松芙未)
映画『ケヴィン・オークイン:美の哲学』はオンライン配信にて緊急公開中(ビデオマーケット、music.jp、GYAO!ストア、DMM動画、Rakuten TV)
2020年アップリンク渋谷、吉祥寺ほか全国劇場にて公開予定
ピュアな男女が織りなす三角関係に釘付け!
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
頭脳明晰なアジア系の女子高生エリー、彼女にラブレターの代筆を頼むアメフト青年ポール、彼が思いを寄せる女子アスターの三角関係をアメリカの田舎町を舞台に描く青春映画。恋愛慣れしていないピュアな三人の姿を映し出しながら、「愛とは何か?」をそれぞれの視点で掘り下げていく。随所に哲学・芸術・宗教といったカルチャー要素が盛り込まれており、ストーリーに深みを与える。SNSのチャットを家の外壁に映しながら展開する会話シーンも新鮮で、巧みな演出が光る。悩める女子高生役に挑んだ、中国系アメリカ人リーア・ルイスの熱演ぶりにも注目。現代社会に生きる若者の姿をリアルに捉えた、新たな青春映画だ。(編集部・倉本拓弥)
Netflix映画『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』独占配信中
ティーン向けのライトな映画かと思いきやテーマは重厚
『最高に素晴らしいこと』
『マレフィセント』のエル・ファニングと『名探偵ピカチュウ』のジャスティス・スミス共演でベストセラー小説を映画化したNetflixオリジナル作品。一見、ただのティーン向け恋愛映画かと思いきや、扱うテーマはなかなか重め。周囲から変人扱いされるフィンチは、姉を事故で亡くしてふさぎ込んでいるバイオレットと出会い、少しずつ彼女の心を開いていくが、フィンチ自身もまたある問題を抱えているのだ。人は傷ついたとき、そばで支えてくれる誰かがいるかどうかは大きい。そっと、時にはちょっと強引に痛みに寄り添ってくれる存在。それがバイオレットにとってはフィンチだった。でも、心優しい人こそ傷つきやすかったり、明るくふるまっていても人には言えない悩みを抱えていたりする。どうして? と思わざるを得ない展開もあるが、きっと主人公たちも同じ気持ち。人が人を傷つけるのではなく、痛みに気が付いて手を差し伸べられる社会でありたいと考えさせられる映画だ。(編集部・中山雄一朗)