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映画たて・よこ・ななめ見!

ウーマン村本、声を上げることの大切さを熱弁!

映画たて・よこ・ななめ見!

 ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、村本がオススメの映画で韓国動員数1,200万人を記録した『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』をななめ見! 政治に対して、怒りの声を上げることの大切さを、村本が熱く語ります。(取材・文:森田真帆)

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』

 1980年に韓国で起きた光州事件でのドイツ人記者と韓国人タクシー運転手の実話を、『JSA』『密偵』などのソン・ガンホらの出演で映画化したドラマ。光州へ取材に向かうドイツ人ジャーナリストと彼をタクシーに乗せた運転手とのやり取りを、コミカルかつシリアスに描く。

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コメディーじゃなくて衝撃作

タクシー運転手
韓国の名優ソン・ガンホが主演!Well Go USA Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

中川パラダイス(以下、中川):この映画、ジャケットだけ観るとけっこうハートフルな感じするやん。コメディーやと思って観たから、あんな重い話と思っていなくてしんどかったわぁ。

村本大輔(以下、村本):そうなん(笑)?

中川:前に観た、黒人と白人がタクシーでドライブに行って、仲良くなっていく映画あったやん。あんな感じのちょっと笑えるほのぼの映画やと思っていたもん。衝撃受けたわ。

村本:いやそれ、『グリーンブック』やん! 全然違うわ! タクシーちゃうしな。オレは『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』観たら号泣やで! って友だちに言われてDVDを買ったんだけど、DVDを観るきっかけがなくてそのまま放置していたのよ。でも改正案のハッシュタグが話題になっていた時に、韓国人の友だちから「韓国では民主主義を手に入れるために一度国民が血を流しているんです。本当の痛みを味わうことがないと、人々は立ち上がらないんじゃないか」って言われたの。それがこの映画に出てくる光州事件のことやったんやけど、全然知らんくて、Netflixで配信中の『26年』っていう映画を観て初めて何が起きたかを知ってさ。それでもっと知りたくて『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』を観たから、どんな映画かはわかっていたわ。中川と違って!

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オレが吉本のタクシー運転手!

タクシー運転手
1980年に起きた光州事件。Well Go USA Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

中川:それで、村本は泣いたん?

村本:泣いたよ! めちゃくちゃ泣いたわ、もう号泣しまくり! 主人公の運転手さんが、最初は若者が暴徒化するから悪いんやとかいっていたやん。あれってさ、デモしている若い人たちに外野から文句ばっかり言っている日本のおっさんにそっくり! あんなに文句ばかりだったおっさんだったのに、現地で戦う若者に出会って、そこに住む人たちに出会ったことで考えが変わって、仲間のためにとどまることを決める。その瞬間がめっちゃぐっときたわ。

中川:僕は号泣ってほどではないけど、もちろん感動はしましたよ。でももう感動というよりも驚きの方が大きかったと思う。こんなことあったん!? って思った。だって、警察って正義の味方じゃないですか。その人たちが、若い人たちのこと殺すとか、そんなん今まで全く知らんかったから、ショックの方が大きかった

村本:あの光州って韓国の中心のソウルからはだいぶ離れていたやん。だから情報も閉鎖されて、ソウルに住んでいる人たちは実感がない。この話しって今の沖縄問題にも通じるところがあると思うねん。あそこで反対運動している人たちって、沖縄とは関係ない左翼の活動家ばっかりとか中国の人が金をもらって座り込みしているとか、そういう話もあるけれど、オレは実際に行ってみたことがある。辺野古も車から3時間かかる程遠いから那覇の人でもその話を信じている人がいたんやけど、実際に行ったら座り込みしているのって、地元のおばあとか、ほんまにその土地を守ろうとしている人ばかりやねん。実際にそこに行ってじゃないと、わからないことがある。そういうことを考えたらもう、オレ自身が、吉本のタクシー運転手やわ

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おにぎりとサーターアンダギー

タクシー運転手
Well Go USA Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

中川:村本が言うように、やっぱり現地の人との交流ってめっちゃ大事やと思うわ。タクシー運転手のおっちゃんも、現地の若い子たちと話してなかったらラストのああいう行動はとらんかったと思うし、あのおにぎりくれたお姉ちゃんとの交流があったから、情が沸いたと思うな。村本も実際に行って、そこにいた人たちと話したから気持ちが動いたところはあったんやないん?

村本:あったと思うよ。だってオレもタクシー運転手と同じように、沖縄のおばぁが作ったサーターアンダギーをもらってさ。あのお姉ちゃんのおにぎりと一緒やん。まぁ、その時はダイエットしていたから後輩にあげたけど(笑)

中川:食べへんのかい!

村本:でもさ、やっぱり学生とかほんまにボコボコにされて、殺される覚悟して戦っていたわけやん。覚悟で考えたら、沖縄の人たちだってほんまに死ぬ覚悟で戦っていると思うねん。でも、それをスマホのニュースで見たときには、冷笑する方が楽だからみんな、そういう人たちのこと笑うし、他人事に考える。そうすることで結局、関わっている人たちが孤立してしまうっていう構図は、この映画も現在も変わらんと思うねん。

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声を上げることから始める

タクシー運転手
オレらも怒りの声をきちんと上げよう!Well Go USA Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

中川:日本も昔は学生運動とかあったやん。でも、今って村本が言うようなデモとかよりも、Twitterとかで声を上げるみたいな方が多いと思うねん。

村本:Twitterで声上げても、結局みんな冷笑したり、バッシングしたりするやん。それはオレ自身が身をもって体験しているからわかるけどさ。

中川:今もさ、政治家が自民党員に税金から200万円給付金を渡していたみたいなのが話題になっているやん。それに対して、みんな怒ったコメントを書くやろ。

村本:いや、みんながみんな書かんやろ。だって、そう言う怒りの声をあげられる奴って、ずっと行動ができるやつらなんやもん。じゃぁお前、書くんか?

中川:いや、書けへん。

村本:書かんやん! オレがすげぇなって言うのは、アメリカで中絶が反対されたときに、女性だけじゃなくてどんな人も一緒に声を上げるところ。日本って、当事者ばっかりやん。ジェンダー問題は女の人ばっかり、沖縄問題は沖縄の人ばっかり、LGBTも当事者の人ばっかり。みんな、どこか他人事の感覚が強いけど、今回のブラック・ライヴズ・マターの問題にしても、アメリカは白人の人たちも一緒になって怒っている。セレブもみんなが怒っていて、この国の痛みは、みんなの痛みって思っているから一緒に声を上げているでしょ。でも日本人って、沖縄のことは大半の人が他人事に感じている気がすんねん。この国は、オレは痛くないから知らんってる感じが強い

中川:まぁ、確かにそうやな。

村本:日本人って、すぐにろくに知りもせんと言うなって言うやろ。オレはあれが良くないと思うねん。知らなくてもええし、まずは知ろうと思うことから始めればええねん

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見て見ぬ振りや沈黙は一番の悪

タクシー運転手
行動あるべし!Well Go USA Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

村本:映画の話に戻るけどさ、光州に戻るっていう決意、パラダイスできると思う? あの状況下で、そんな行動できるかって言ったら、ほんまに難しいと思う。オレやったら、大事な娘も待っているのでとかまずは身近な人を大切にしないととか言って、後ろめたい気持ちで逃げてしまう気するわ。

中川:でもさ、あそこで帰れる人おらんのんちゃう? だって命の危険性もあるわけやん。もちろん地元の人たちに情が湧いたのはわかるけど、それでも殺されてしまうかもしれないってときに戻れるかって言ったら、僕は正直無理やと思うし、あれはあの運転手さんだからこそできたんちゃうかな。だって、実話を基にしてるわけやろ。あの人だからやと思うわ、やっぱり。

村本:まあ確かに怖すぎるもんな。やっぱり知らん方が楽ってところはあると思うわ。だって情報規制されて、ニュースも嘘で塗り固められていたわけでしょ。もしかしたら、現実なんか知らずに嘘の報道を信じて、テレビに向かって文句だけ言っている方が楽だったかもしれない。でも、彼は知ってしまったし、あそこで正義のために倒れていった若者も目にしてしまったわけだから。知りすぎると、人間として行動することを取っちゃうから。

中川:正義感が勝つか、恐怖心が勝つかかと思うねん。僕はやっぱり怖い。僕の場合は、どうでもいいから言う必要がないっていうのもあるし。

村本:それが、自分の国の問題っていう自覚のなさやと思うねん。それって結局教育なんじゃない? パラダイスみたいな人って、マジョリティーやと思うねん。自分たちが国の主権者なのに、怒りを表さないから変わらない。オレはフランスやイタリアのコロナの対応が早かったのって、怒る国民やからやと思うねん。フランス人もすぐにストライキ起こすし、緊張感あるやろ。マスク2枚もらった不満もTwitterでいうくらいやん。それで選挙になったらまた行く奴は行く、行かん奴は行かない。この構図はずっと変わらんと思う。日本人なんてさ、給付金についても「10万円かい!」くらいやん。でも国民のこともっと怖がっていたら、すぐにもっと振り込むと思う。でも何しても怒らんと思うから、公文書も捨てるし、マスク2枚になるし、お金ももらえない。もっと普段から怒っていないと、緊張感を持たせないと。中川みたいなやつが、怒らないからいいやって思われるんやと思う。国民が怒りくるえば、政治家はもっと怖がると思うわ。

中川:なるほどな。何も言わんから、もしかしたら次は8万円でええやろってなるわな。

村本:結局戦争が起きてしまったのも極端な話、みんなが見て見ぬ振りを続けてしまったからやと思うねん。キング牧師が、「最大の悲劇は、悪人の暴力ではなく、善人の沈黙である。沈黙は暴力の陰に隠れた同罪者」って言っていたけど、ほんまにそうやと思う。例えば、いじめられている子がいじめっ子から石を投げられているのを止めなかったら、石はどんどん投げられ続ける。でも、自分も石を投げられる覚悟で、それを止められるかって話。そこで見て見ぬ振りしているやつは、いじめているやつと同じと思う。だから、ちゃんと声を上げるって大切だと思うわ。

※記事内容には個人の意見が含まれています。

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ウーマンラッシュアワー・プロフィール

2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。

村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。

村本大輔ツイッター

中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。

中川パラダイスツイッター

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