完結編公開!ランボー、戦いの歴史
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シルヴェスター・スタローン主演の人気アクション『ランボー』シリーズ第5弾にして完結編『ランボー ラスト・ブラッド』が6月26日に全国公開! ロッキーに並ぶスタローンの当たり役であり、1982年の1作目公開から、40年近くにわたって過酷な戦場を生き抜いてきた、孤独な戦士の戦いの日々を振り返る。(編集部・入倉功一)
ジョン・J・ランボー(シルヴェスター・スタローン)
1947年7月6日アリゾナ州生まれ。1964年に17歳でアメリカ陸軍入隊。ベトナム戦争に従事し、陸軍特殊部隊グリーン・ベレーで指揮官サミュエル・トラウトマン大佐によって鍛えられた戦争のプロ。ゲリラ戦、小型火器の扱いを得意とし、衛生兵でもありヘリ操縦も可能。悪天候や食料不足にも耐えられる。トラウトマンいわく「ヤギの吐いたものも食う」。
シリーズ2作目『ランボー/怒りの脱出』によると、先祖は先住民とドイツ系。59人の殺人歴と銀星章2つ、名誉負傷賞4つ、名誉勲章とされているが、そのほかにも、戦場における活躍に対して、数えきれないほどの勲章を得ていることが示唆されている。
寡黙でめったに感情を表に出さないが、過酷な戦場の体験によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ、ベトナム帰還兵への理不尽な扱いを体験したことで、心に大きな傷を抱えている。当初、クリント・イーストウッド、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマン、スティーヴ・マックィーンなどが主演候補にあがっていたが、暴力的な内容や脚本との折り合いがつかないなど、さまざまな理由から離脱。そこに『ロッキー』の成功以降、伸び悩んでいたスタローンが志願し、二つ目の当たり役に出会うことになる。
『ランボー』(1982)
1981年、ベトナム帰還兵ジョン・ランボーは、かつての戦友デルモア・バリーの家を訪ねるが、彼の母親から、バリーがベトナムの化学戦の影響により、ガンで死亡したことを聞かされる。戦友はみんな死んだ。オレゴン州の小さな街・ホープに立ち寄ったランボーは、街の保安官ティーズル(ブライアン・デネヒー)から、「不愉快な流れ者」というだけで、街を追い出されてしまう。「この街では俺が法律だ」というティーズルの理不尽な扱いに怒ったランボーは、命令を無視して街に引き返し逮捕される。
警察署で高圧放水を受け、カミソリで無理やりヒゲを剃られそうになったランボーは、拷問に苦しんだベトナムの記憶がフラッシュバック。一気に戦場へカムバックすると、グレーンベレー仕込みの格闘術で署員たちをなぎ倒し、山中へと逃亡。追跡してくる署員たちを、ナイフ一本でDIYしたワナで次々と撃退していく。ついにティーズルを捉えたランボーは、彼の喉元にナイフをあてて言い放つ。「お前なんか殺すのは簡単だ。この山じゃ俺が法律なんだ」。事態収拾のためホープに到着した、ランボーのかつての上官トラウトマン大佐は、ティーズルに「ランボーを助けにきたわけじゃない。あなた方を助けに来た」と伝えるのだった。
その後、州警察と州兵の包囲網もすり抜けたランボーは、M60機関銃を手にホープのガソリンスタンドを爆破し、送電線を破壊して街を混乱に陥れた。警察署でティーズルを追い詰めるランボー。駆け付けたトラウトマン大佐に「戦争は終わった」と投降を呼びかけられたランボーは、涙ながらに訴える。「何も終わっちゃいないんだ! 俺にとって戦争は続いたままなんだ! 帰国したら空港で非難ごうごうだ! 赤ん坊殺しとか悪口の限りを並べやがった! あいつらは何だ? 戦争も知らずに! 俺は世間じゃのけ者だ! 戦場じゃ100万ドルの兵器を操縦してた。でもここじゃ駐車係の仕事さえない! 戦場には親友がいた。ここでは独りだ」
ランボーの涙は、命をかけたのに国からも見放され、後遺症と偏見にさらされたベトナム帰還兵たちの叫びだ。トラウトマン大佐に連れられて投降したランボーは逮捕され、軍刑務所に収監される。
『ランボー/怒りの脱出』(1985)
事件後、軍刑務所で肉体労働を強いられていたランボーのもとにトラウトマンが現れ、恩赦と引き換えに、ベトナムの捕虜収容所に戻り、Missing in Action(戦闘中の行方不明者・略称:MIA)となった、囚われのアメリカ人捕虜の救出任務を依頼する。一時的に軍に復帰したランボーは、タイの作戦本部を訪れるが、CIAのマードック司令官は、捕虜の写真を撮るだけで何もするなとランボーに命令する。
ベトナムに降下したランボーは、現地ガイドの女性情報員コー・バオと合流。降下時のトラブルでカメラと装備を失ったが、ナイフと弓矢を手に収容所へ向かい、アメリカ人捕虜を救出。回収場所にたどり着くが、マードックはハナから捕虜を救出する気などなかった。ランボーを置き去りにしたマードックは、激高するトラウトマンに「忘れられた亡霊に簡単に金は出せない」と言い放った。
収容所に連れ戻されたランボーは、ベトナム軍を支援するソ連軍のポドフスキー中佐から、捕虜の命と引き換えに本部へ無線連絡をさせられ、応答したマードックに告げる。「マードック……首を洗って待ってろ!」
その後、ランボーはコー・バオに助けられるが、彼女は敵の銃弾に倒れてしまう。怒りが頂点に達したランボーは、得意のゲリラ戦で次々に敵兵を殺害し、奪ったヘリで捕虜を救出すると、ポドフスキー中佐のヘリも破壊して帰還した。M60機関銃で本部を破壊したランボーは、マードックに、残された捕虜も救うように警告する。
作戦完了したランボーをトラウトマンは「名誉勲章ものだ」と賞賛するが、彼は、捕虜たちこそ勲章にふさわしいと訴える。「俺の望みは彼らの望みです。この地までやってきて勇敢にも全てを捧げた彼らの。彼らが愛したように国からも愛されること。それが望みです」と。
ベトナム帰還兵の苦悩を描く人間ドラマから、一気にアクション超大作へと舵を切った本作は、世界中で大ヒット。バンダナに鍛え上げた筋肉を強調するタンクトップなど、世間で知られているランボーのイメージを作ったのもこの2作目からだ。前作では1名だけだった(それも直接手にかけていない)キルカウントも一気に増加し、ランボー=大作アクションのイメージを植え付けた。
脚本は、『アバター』のジェームズ・キャメロン。この翌年、キャメロンは同時期に監督を務めた『エイリアン2』を発表。SFホラーだった『エイリアン』を戦争アクションに仕立て上げ、世界中で大ヒットを記録した。劇中、「あなたは何のために戦うの?」と尋ねるコー・バオに、ランボーはつぶやく。「俺は消耗品(エクスペンダブル)なんだ。招かれたパーティーをすっぽかしても、誰も構わないのさ」
『ランボー3/怒りのアフガン』(1988)
釈放後もタイに留まっていたランボーを、再びトラウトマンが訪ねてきた。トラウトマンは、アフガニスタンでソ連と対抗する反政府組織にスティンガーミサイルなどの最新武器を供給する任務にランボーを勧誘する。「君は戦いに血を燃やす兵士だ」と説得するトラウトマンにランボーは「務めは果たしました。俺の戦争は終わったんだ」と告げる。
しかし、自ら作戦に赴いたトラウトマンは、待ち伏せに遭い敵の捕虜となってしまった。それを知ったランボーは、大佐を救出するためアフガン入り。アメリカのサポートもなく、現地ゲリラからも、トラウトマン一人のために部隊は出せないと協力を拒まれたランボーだが、ソ連軍の基地に潜入。トラウトマンと共に基地を脱出する。ソ連軍に追い詰められ、絶体絶命の危機に立たされるものの、馬を駆って加勢に訪れたゲリラの協力を得て、ついにソ連軍を撃退。トラウトマンと共にアフガンを後にした。
イスラエル陸軍の全面協力もあって、大量の兵器が登場するまさに超大作アクションとなった本作。しかし、プレミア上映を前にソ連のアフガン撤退がはじまり、アメリカとの間に友好関係が築かれたことで、時代遅れの映画となってしまった。さらに後年、ランボーが協力した反政府ゲリラの一部は、現実ではアメリカと対立し、アメリカ同時多発テロ事件へとつながる皮肉な結果となる。評価も芳しくなく、大金を投じたにもかかわらず興行収入もふるわなかったことから、『ランボー 最後の戦場』まで、実に20年の時を要することになった。
『ランボー 最後の戦場』(2008)
前作でトラウトマンを救出した後も、ランボーは故郷に帰らず、タイのミャンマー国境付近で、ヘビ狩りやボートの運搬業をしながら暮らしていた。そこに、タイからミャンマーの紛争地帯まで行きたいという、アメリカの牧師会のメンバーがやって来る。ミャンマー軍は、少数民族のカレン族を、地雷をばら撒いた水田を銃で脅して走らせるなど、ドン引きするほど非道な方法で虐殺していた。彼らは、迫害に苦しむカレン族に、医薬品や聖書を渡す活動をしていたのだ。
「武器は支給するのか? しないなら何も変わらない」と一度は依頼を突っぱねるランボーだったが、牧師会メンバーの女性・サラの「世界は変えられないかもしれないけど、人の命を救うことは決して無意味じゃないはずよ」という訴えに心を動かされ、彼らを危険地帯まで送る。そして、予想通りサラたちはミャンマー軍に捕まり、ランボーは救出のために雇われた傭兵チームをミャンマーに送り届けることに。ランボーも自作のマチェーテ(山刀)と弓矢を携え、共に再び戦場へと足を踏み入れる。
敵軍の物量に及び腰になる傭兵チームのケツを叩いたランボーは、サラたちが囚われているアジトに潜入すると人質を救出。ジャングルに放置されていた第2次世界大戦時の不発弾で追跡部隊を退けると、先行した傭兵チームを捕らえたミャンマー軍も、重機関銃で血祭りにあげる。最後は、敵の指揮官の腹を裂いて殺害。救出され、婚約者と抱き合うサラを見つめるランボーはその後、ついにアメリカに戻り、故郷アリゾナの実家に続く道を歩いていた。彼の戦争はついに終わったのだ。
戦場で人体が破壊されるさまを克明に描写した本作は、規模は縮小したものの『怒りのアフガン』から打って変わって、暴力の恐ろしさと戦場の残酷さが明確になり、1作目にあった社会派アクションとしての一面を取り戻した。
そして『ランボー ラスト・ブラッド』へ!
完璧なフィナーレと思われた『最後の戦場』だったが、当時のプレミアでスタローンは「メキシコで行われている集団拉致を題材にした現代的なウエスタン」という次回作の構想を明かしていた。その言葉の通り、真の完結編として製作されたのが『ランボー ラスト・ブラッド』だ。
故郷へと戻ったランボーは、亡き父R・ランボーの牧場で、家族のような絆で結ばれた、旧友マリアとその孫娘ガブリエラと共に暮らしていた。ガブリエラの成長を見守り、ようやく家族を手にしたランボーは、ロン毛も卒業し、平穏な日々をすごしていた。しかし、そんな大切なガブリエラが、メキシコで人身売買カルテルに誘拐されてしまう。怒りの導火線に火がついたランボーは、愛する者のために再び戦場に舞い戻る。1作目を思い出すトラップの数々に、『最後の戦場』なみの暴力描写も健在。まさにシリーズの総仕上げとなる、“ラストランボー”映画の登場だ。(編集部・入倉功一)
映画『ランボー ラスト・ブラッド』は6月26日より全国公開