コロナ禍で働く英雄たち!7月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、新型コロナウイルスと戦う人々のドキュメンタリー、スタジオコロリドの最新アニメーション、テイラー・スウィフトのドキュメンタリー、スパイク・リー監督の最新作、『呪怨』シリーズ初の連続ドラマ作品。これが家で観られる7月の5つ星映画5作品だ!
コロナ禍で誰かのために働く英雄の姿が伝えるメッセージ
「真の英雄たち ~新型コロナウイルスと戦う人々~」
全世界に広がった新型コロナウイルス感染症の影響により誰もが自宅で過ごす中、感染のリスクにさらされながら命を助けるために働き続ける「新たな英雄たち」に密着したドキュメンタリー。ニューヨークにある救急病院では何が起きているのか。異常な長時間労働で誰もが臨戦態勢の病院で働き、帰宅してからは休校中の子どもたちの自宅学習の面倒を見る様子に胸が熱くなる。医療従事者だけでなく、人々のライフラインとなる食料品店を営む経営者、自らも働く機会を失う中でホームレスを支援する財団を運営する人、自宅の台所を化学教室に変えて遠隔で授業を行う公立校教師など職種は様々。コロナ禍でも希望を失わずに誰かのために前を向く「真の英雄たち」の姿が、大切なメッセージを伝えている。番組の最後には、シンガーソングライターのアリシア・キーズや『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』などのケヴィン・ハートから英雄たちにサプライズが届けられ、ホッコリする。(編集部・海江田宗)
「真の英雄たち ~新型コロナウイルスと戦う人々~」はAmazon Prime Videoにて独占配信中
スパイク・リーが投げかける新たなメッセージ
『ザ・ファイブ・ブラッズ』
スパイク・リー監督の最新作。ベトナム戦争から半世紀、帰還兵である4人の黒人が再びベトナムを訪れ、戦地に隠した埋蔵金と命を落とした隊長の亡骸を探すためにジャングルへと足を踏み入れる。黄金をめぐるさまざまな思惑が引き起す群像劇はエンターテインメントあふれる物語展開に仕上がっており、35ミリフィルムで再現された戦場のシーンも迫力がある。もちろんリー監督作品とあり、人種差別の問題と絡めて泥沼化したベトナム戦争が語られていくことになる。老齢の帰還兵がかつて残してきたものを回収する、という物語がそのまま、現在のアメリカが抱える負の遺産とつながっていく展開は感動的だ。Black Lives Matter などの現在のムーブメントも問題の本質はまったく変わっていない。憎しみの連鎖をいかに断ち切り、前に進むことのできるのかという監督の力強い思いを感じる。(編集部・大内啓輔)
岡田麿里らしい繊細さとファンタジックな猫の世界
主人公の美代(志田未来)は、不思議な猫のお面を被ることで猫に変身できる。題名の「猫をかぶる」はそのお面を被る行為だけでなく、彼女が“本性を隠す”ことも意味している。同級生から謎人間扱いされるほど陽気に振る舞う彼女は、実は親の離婚や父の婚約者に気を使い、本当の自分を出せないでいるのだ。そうした思春期の心の痛みを繊細にすくいとりながら、ファンタジックで温もりのある世界に仕上がっているのは、脚本家が「あの花」『ここさけ』の岡田麿里だからだろう。美代と同級生・日之出賢人(花江夏樹)のボーイミーツガール映画としても楽しめ、恋愛描写は爽やかかつ甘酸っぱい! 好きな人以外は文字通りへのへのもへじに見える、恋の盲目さを表現したシーンなど、アニメーションならではの描写も面白い。もちろん、猫映画らしい楽しみも満載。特に猫の世界は飲み屋街のような親しみやすさと幻想的な要素が融合していて、夢が膨らむ。(編集部・吉田唯)
Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』独占配信中
もう我慢の限界!アメリカが誇る“優等生”が自由になるまで
『ミス・アメリカーナ』
アメリカで最も人気のあるシンガーソングライターの一人、テイラー・スウィフトの半生を追ったドキュメンタリー。「みんなから愛される」ことを追い求めて努力を重ね、16歳でデビューしたテイラーが、優等生ぶりをメディアやSNSでたたかれ、体重の増加、恋愛歴、さらにはセクハラ訴訟を起こしたことでバッシグにさらされる様はなかなかのエグさで、単なるサクセスストーリーを追うドキュメンタリーとは一線を画している。カメラは、そんな状況にあってもいい子であることに徹してきたテイラーが、「正しいことをしたい」と殻を破り、本当の自分を歌にしていく姿を克明に捉えている。2018年に話題を呼んだ、SNSでの政治的発言解禁の瞬間も収められており、我慢も限界とばかりに「口に貼っていたテープは必要なくなった」「差別主義者を拒否したことで批判されてもかまわない」と堂々と語る彼女の晴れ晴れとした表情は、芸能人の政治的発言が騒がれている、今の日本人こそ目にするべき。一人の女性の成長を追った人間ドラマとしても秀逸な一本。(編集部・入倉功一)
伽椰子とは一線を画す、じわじわ“くる”恐怖が見もの
「呪怨:呪いの家」
ハリウッドリメイクも制作された大ヒットホラー・シリーズを、Netflixで初めて連続ドラマ化する本作。監督を務めたのが、映画『きみの鳥はうたえる』などで高い評価を受け、先ごろ星野源のMVを手掛けたことでも話題の若手監督・三宅唱。これまで自ら脚本を執筆してきた三宅監督が、高橋洋&一瀬隆重の脚本で、初のホラーに挑んだ。「関わると呪われる」一軒の家を巡って複数の人々が入り乱れる物語である点はこれまでのシリーズと共通しているが、ドラマ版は実際に起きた事件を取り入れているところが肝。また、四つ足で迫りくる悪霊・伽椰子をはじめとする従来のお化け屋敷的な演出に比べると、得体のしれない存在が徐々に姿を現していくようになっていて、連続ドラマの「続きが気になる」という醍醐味(だいごみ)をたっぷり堪能できる。虐げられる者を象徴する女子高生を熱演した里々佳は、圧倒的な存在感!(編集部・石井百合子)