夏休み映画特集2020~劇場洋画編~
2020年の夏の洋画は良作が目白押し。そう快な青春映画や背筋が凍るホラー映画など猛暑を忘れさせてくれる作品に、強烈なキャラクターが登場するノワールアクションや世界各地でロケを敢行した手に汗握る熱い作品まで、夏をいっそう盛り上げてくれそうです!(文・岩永めぐみ)
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『カセットテープ・ダイアリーズ』7月3日公開
監督・脚本:グリンダ・チャーダ
キャスト:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ギール
117分
ブルース・スプリングスティーンの音楽との出会いに人生を大きく変えられた移民の青年の成長を、全編にスプリングスティーンの音楽をちりばめながら描いた青春ストーリー。主人公は1980年代のイギリスの田舎町に暮らすパキスタン移民の高校生。周囲の人からの偏見や保守的な父親の教えに閉塞感を抱いていたときに、スプリングスティーンの音楽に出会います。監督のグリンダ・チャーダは『ベッカムに恋して』でもそうだったように、移民の若者が葛藤しながら自分らしく生きようとする姿をそう快に描き出します。スプリングスティーンのファンはもちろん、そうではなくても青春映画として楽しめる!
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』7月3日公開
監督・脚本:ウディ・アレン
キャスト:ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメス
92分
ウディ・アレン監督のもとに、ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメスといった若手実力派の人気者たちが集結したロマンティックコメディー。これまでも『アニー・ホール』などニューヨークを舞台にした数々の名作を手掛けてきたウディ・アレンが、セントラル・パークやメトロポリタン美術館など雨のニューヨークを素敵に映し出しながら、若者たちのすれ違う恋をユーモラスに綴ります。博識なんだけどちょっとイタいというウディ・アレン監督らしい主人公も、ティモシー・シャラメが演じると胸キュンの連続です。
『WAVES/ウェイブス』7月10日公開
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
キャスト:ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル
135分
『ムーンライト』『ミッドサマー』など話題作を次々と発表する製作会社、スタジオ「A24」が手掛ける珠玉の青春ストーリー。将来を嘱望された高校生に予期せぬ出来事が重なり、順風満帆な人生を送っていた家族が一転、絶望の淵へ堕ちながらも再生していきます。感動的な物語を盛り上げる音楽は、フランク・オーシャンを筆頭にケンドリック・ラマー、アニマル・コレクティブなどの楽曲が、登場人物の気持ちをセリフ以上に繊細に表現します。また、兄がメインの前編と妹をメインに描く後編の2部構成に分けるなど、『イット・カムズ・アット・ナイト』のトレイ・エドワード・シュルツ監督による実験的で斬新な演出にも引き込まれます。
『透明人間』7月10日公開
監督・脚本・スクリーン・ストーリー・製作総指揮:リー・ワネル
キャスト:エリザベス・モス、オリヴァー・ジャクソン=コーエン
124分
『ゲット・アウト』『アス』などを製作するブラムハウス・プロダクションズが『ソウ』シリーズの原案で知られるリー・ワネルを監督に迎えて送る衝撃のサイコサスペンス。裕福な天才科学者が自殺、その恋人だったヒロインが透明人間による見えざる恐怖におびえ、正気を失っていきます。ヒロインを演じるのは、ドラマシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」でゴールデングローブ賞女優賞やエミー賞主演女優賞を受賞したエリザベス・モス。最新の技術で表現された何者かによる不可解な出来事の数々や、透明人間のストーカー並みの執拗さは、来ると分かっているにもかかわらず心理的なダメージ大!
『悪人伝』7月17日公開
監督・脚本:イ・ウォンテ
キャスト:マ・ドンソク、キム・ムヨル、キム・ソンギュ
110分
凶暴なヤクザと無頼派刑事がバディとなり、無差別殺人鬼を追跡する韓国発のバイオレンスアクション。殺人鬼の襲撃により重傷を負いながら一命をとりとめたヤクザの組長と連続殺人鬼を追う刑事が共闘し、互いに牽制しあいながら犯人を追い詰めていきます。恐ろしいけど憎めないヤクザの組長にふんして存在感を発揮するのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で強面ながら男気あふれるキャラクターで共感を呼んだマ・ドンソク。得体の知れない無差別殺人犯を追う展開は、サスペンスフルで引き込まれます。
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』7月17日公開
監督:ツヴァ・ノヴォトニー
キャスト:ペルニラ・アウグスト、ランスロット・ヌベ、ヴェラ・ヴィタリ
97分
『幸せなひとりぼっち』の原作者フレドリック・バックマンの小説「ブリット=マリーはここにいた」を映画化した、北欧スウェーデン発の女性賛歌。『スター・ウォーズ』シリーズでアナキン・スカイウォーカーの母親を演じたペルニラ・アウグストが演じる、完璧主義者の専業主婦が主人公。63歳にして夫に長年の愛人がいたことを知った主婦が家を出て、不安を抱えながら小さな町のユースセンターの管理人兼サッカーコーチとしてゼロからのスタートを切ります。思いもよらぬ人々と出会うことにより人生が変化していく主人公の姿は、年齢を問わず一歩を踏み出すことの大切さを改めて思い起こさせてくれます。
『WAR ウォー!!』7月17日公開
監督・原案・脚本:シッダールト・アーナンド
キャスト:リティック・ローシャン、タイガー・シュロフ、ヴァーニー・カプール
151分
インドで2019年の興行収入ナンバーワンを記録したド派手なスパイアクション。インドの対外諜報機関に所属するすご腕スパイが裏切った末に逃亡、直属の部下であるスナイパーが追跡を繰り広げます。圧巻なのは7か国、15の都市で撮影されたというアクション。ポルトガル最高峰の山で、さらには北極圏で撮影を敢行。アクションシーンには『ミッション:インポッシブル』シリーズや『キングスマン』シリーズなど数々のアクション映画にオマージュを捧げた場面があり、それらを見つけるのも楽しみのひとつ。主演を務めたインドの2大スターの濃厚なルックスと体を張ったアクションに圧倒されっぱなし!
『ハニーボーイ』8月7日公開
監督・製作:アルマ・ハレル
キャスト:シャイア・ラブーフ、ルーカス・ヘッジズ、ノア・ジュープ
95分
『トランスフォーマー』シリーズなどのシャイア・ラブーフが自身の体験をもとに脚本を執筆、天才子役が破天荒な父親のトラウマを克服していく姿を描く感動作。元前科者のキレやすいステージパパに振り回され、愛情に飢えていた少年が、さまざまな人との出会いや助けを得て成長していきます。『クワイエット・プレイス』などで天才子役との呼び声も高いノア・ジュープと『WAVES/ウェイブス』にも出演している若手実力派のルーカス・ヘッジズが少年時代と成長した主人公を繊細に演じ、かつてハリウッドの問題児といわれたラブーフ自身が父親を熱演。親と子の激しくも切ない葛藤に胸が締め付けられます。
『グッバイ、リチャード!』8月21日公開
監督・脚本:ウェイン・ロバーツ
キャスト:ジョニー・デップ、ローズマリー・デウィット、ダニー・ヒューストン
91分
ジョニー・デップが余命宣告をきっかけに人生を謳歌(おうか)することを決めた大学教授を演じるヒューマンドラマ。真面目に生きてきた主人公が、突然告げられた余命半年という事実に打ちのめされるかと思いきや、残りの人生を好きに生きようと酒やドラッグを楽しみます。ジョニー・デップといえば超大作からインディーズ作品までさまざまな作品に出演し、エキセントリックなキャラクターを演じさせたら右に出る者のいない俳優。そんな唯一無二のキャリアを築き上げた彼が、長編2作目となる新鋭監督のウェイン・ロバーツのもとで面目躍如ともいえる演技をみせ、等身大の中年男性を軽やかに好演しています。
『ムーラン』9月4日公開
監督:ニキ・カーロ
キャスト:リウ・イーフェイ、コン・リー、ジェット・リー
115分
ディズニーアニメの強さと美しさを兼ね備えたヒロインの中でもとりわけ身も心も強い個性的なキャラクター、ムーランを実写化したファンタジーアドベンチャー。病気の父に代わって家族のために男性と偽って兵士となったムーランは、国の運命を懸けた戦いで兵士としての才能を認められていきます。ヒロインには、『ドラゴン・フォー 秘密の特殊捜査官』シリーズなど中国の映画やドラマで活躍してきたリウ・イーフェイを抜てき。さらにはコン・リー、ジェット・リー、ドニー・イェンなど中国、香港のみならず世界で活躍するキャストが脇を固め、スケールの大きいバトルシーンに期待が高まります。
【8月24日更新】『ムーラン』は9月4日よりディズニーの公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信に変更となりました。