永瀬廉、ジャニーズ入所後いちばん短い前髪に~『弱虫ペダル』インタビュー
King & Prince の永瀬廉が主演を務める映画『弱虫ペダル』。渡辺航の人気漫画を実写化した本作は、インターハイを目指して切磋琢磨する総北高校・自転車競技部の奮闘をレースシーン満載で活写する。アニメ好きの高校生・小野田坂道を演じる永瀬は、あることをきっかけに自転車競技部に入部し、そこで出会った仲間たちのために全力を尽くすひたむきなキャラクターを真摯(しんし)に熱演。「僕自身が弱虫にならないよう自転車練習もがんばりました」と笑顔を見せる永瀬が、過酷だった撮影現場や共演者の印象、さらにはチームプレイの難しさについて語った。
初の“前髪パッツン”で役づくり
Q:原作やアニメにかなりハマったそうですね。どこに一番惹かれたのですか?
僕の好きなタイプの漫画だったんですよね。一つの競技に一生懸命になっている選手たちがキラキラしていて、すごくかっこよかった。“必殺技”ではないですが、いろいろな技術を駆使しながらレースに挑む姿に少年心をくすぐられました。
Q:小野田坂道というキャラクターに成り切っていましたね。
映画のポスターを見て、前髪の印象だけでこんなにも変わるんだなと思いました(笑)。ジャニーズ事務所に入所して9年になりますが、こんなに前髪を短く切ったのは初めてです。でも、あとはメガネを掛けるくらいで、外見的には特に何もしていないんです。三木(康一郎)監督からは、リュックの持ち方や振り向くときのタイミング、セリフ回しなど、細かいアドバイスをいただいて、自分なりにもっとしっかり考えて臨めばよかったと少し後悔しましたが、三木監督から「対応力があるね」と褒めていただけたので、すごくうれしかったです。
Q:内面からも坂道らしさがにじみ出ていたように感じました。
坂道の場合、レースに“勝つ”ことよりも、大切な仲間と走ることが“楽しい”というのが大前提にあるんですよね。一つの役割を与えられると、とにかくどんなに追い込まれても、みんなのために全力でがんばるというキャラクターなので、頭で考えるよりも、撮影現場で彼の心情を味わいながら、そこから自然と生まれてくるものを大切にしました。
慣れることから始めた自転車競技
Q:自転車走行の練習もかなりされたそうですね。
競技で乗るロードレーサーは、サドルの高さだけでも普通の自転車とぜんぜん違うので、まずはたくさん乗って、慣れることから始めました。パイロンを2つ置いて8の字に走るとか、基本的なことから少しずつ練習して、慣れてきたら隊列を作ってみんなで走ったり、人のいないところで少しスピードを出してみたり。やるときは、朝から日が落ちる前まで、とことん追い込みました。
Q:ぶつかったり、転んだりしませんでしたか?
何回か転びました(笑)。それも走っているときではなくて、止まっているときに。ロードレーサーはペダルに足を固定させるので、普通の自転車のようにすぐに足を下ろせないんですよ。だから、スタッフさんや共演者さんと話し合うときは右足だけペダルからはずしていたのですが、左足が固定されているのを忘れていて、バランスを崩して自転車ごと倒れる、というのは何回かありました(笑)。ただ、それでケガをするとか、そういうのはなかったです。
Q:走りながらお芝居するわけですから、撮影も大変だったそうですね。特にクランクアップの日が一番キツかったとか?
確かに、あの急斜面の坂はとにかくキツかったです! でも、みんなで練習から一緒にがんばってきたので、苦しいときもたくさんありましたが、今ではいい思い出ですね。
面白くて刺激的な共演者たち
Q:同級生・今泉俊輔役の伊藤健太郎さんら、共演者の印象はいかがでしたか?
健太郎くんは、クールで落ち着いているという勝手なイメージを抱いていたのですが、とてもフランクな方でした。一見クールなのですが、しゃべるとすごく面白いんです。最初はお互いに人見知りだったので、仲良くなるまでに少し時間はかかりましたが、撮影が進むにつれてよく話すようになり、会話のなかでボケたり、つっこんだりして、盛り上がりましたね。
Q:部長・金城真護役の竜星涼さんからは、何か刺激を受けましたか?
竜星さんは、最初にお会いしたとき、私服がすごくお洒落だなぁと思いました。「え? パリ帰り?」みたいな(笑)。ジャケットとちょっとダボっとしたパンツを合わせた黒のセットアップに、インナーは黒のタートルネック。サングラスに白いスニーカー、手には小さめのカバンとテイクアウトのコーヒー……なんかインパクトが強すぎて鮮明に覚えているんですよ。会話もすごく面白くてユニークでしたね。いや本当に、お二人からは刺激をたくさんもらいました。
自転車競技とは違うグループ活動の難しさ
Q:「ロードレースはチームスポーツだ。個々の力がどれだけ優れていても、絶対に勝てない」という金城部長の言葉が刺さりました。日頃、King & Prince の一員として活動する永瀬さんは、この言葉に何か思うところはありましたか?
もちろん、支え合っていくことは大切なのですが、同時に“個”も強くなっていかないとダメなのかなと思います。ロードレースは、基本的に1人で競技することがないですよね。だから、よりチームワークというものが重要視されると思うのですが、僕らの仕事はグループですることもあれば、1人ですることもあるので、個人個人が自分を磨くこともすごく大事。それによってグループとしての力もさらに強くなるというか、そこは少しロードレースと違うと思いますね。
Q:なるほど。では、永瀬廉という“個”の原動力はなんですか? ちなみに坂道は“仲間のために”が原動力となっていました。
もちろん“仲間のために”というのはありますが、プラス、“勝つために”というのが僕のなかにはありますね。やる以上は負けたくないですから。もしかすると、勝利にこだわる箱根学園(原作に登場するライバル校)に近いかも(笑)。
取材後記
インタビューに答える永瀬本人と、ポスターのなかで躍動する坂道を見比べると、まるで別人。それは、丸メガネに前髪パッツンといった外見の変化だけでなく、内面からあふれ出るオーラが、完全に坂道色に染まっているからではないだろうか。「個を強くしていきたい」と語った永瀬は、まさに有言実行、映画やドラマの撮影現場を通して確実に進化を遂げている。本人が認めるように、勝ちにこだわる負けず嫌いな性格も、永瀬を成長させる大きな原動力。1人の俳優として、そして King & Prince の一員として、これからどんな姿を見せてくれるのか、大きな期待を胸に注目していきたい。(取材・文:坂田正樹)
映画『弱虫ペダル』は8月14日より全国公開
(C) 2020映画「弱虫ペダル」製作委員会 (C) 渡辺航(秋田書店)2008