今観るべき映画を上映することの大切さ
まほの別府ブルーバード劇場日記
森田のハトコであり、子どもの頃から憧れのお兄ちゃんでもある大島新監督が撮った最新作は『なぜ君は総理大臣になれないのか』。別府ブルーバード劇場で上映となりましたが、東京で公開直後から連日満席というニュースが飛び込んで来たことは今まで大島監督を応援していたぶん、本当にうれしかった! そしてそんな噂を聞いたある人も、ブルーバード劇場にやって来て……。いろんな人たちとの出会いが生まれたブルーバード劇場の様子をお伝えします。(文・森田真帆)
今観なければいけない映画を上映するという決意
私が別府ブルーバード劇場のお手伝いを始めてから、もう5年が経とうとしています。最初は右も左もわからないまま、自分が面白い映画をただひたすらに上映していましたが、時とともにその気持ちはだんだんと変わって来ました。映画館は、まずお客さんに寄り添って作品を決めていかなければいけない。それは照館長から教えてもらったことでもあります。お客さんの好みに合わせて映画を決めていきながら、映画を通してメッセージも伝えていきたい。そんな気持ちが生まれたのは、ここ2年ほどのこと。多くの友だちのおかげでみんなと一緒に考えたいという思いから始めたLGBT作品の上映、母親として、育児や子どもたちのことを守るため、みんなで虐待について考えたいと始めた児童虐待をテーマにした作品の上映など、映画から学べることって実はたくさんあって、私は別府ブルーバード劇場の館主補佐として、今観なければいけない映画を上映することが自分の使命と考えています。
そんな中で上映を決めたのが、この作品『なぜ君は総理大臣になれないのか』でした。ちなみに7月のラインナップはこの映画のほかにも、人種差別のない平和な世の中を優しく訴える映画『タレンタイム~優しい歌』、いじめ問題を考える『許された子どもたち』など、上映後いろんな思いを感じてもらえたらいいなぁ、なんて思いとともに作品を選んだのです。
大島新監督が4度目の登場!
新型コロナウイルスの蔓延によって、舞台あいさつなどが次々に中止になっていた別府ブルーバード劇場ですが、6月末から県外の移動も解除になったので大島監督もトークに登壇することができることになりました。本作のトークのために日本全国を横断中の大島監督はこの日、福岡から来別! トークショーは、コロナ対策のために入場者を半分に制限が必須でしたが、前売り券はあっという間に満員御礼。東京でどんなに話題でも、別府のような地方での上映にはあまり関係なかったりするのが現実問題としてあるのですが、今回はこれだけ興味を持ってくれた方がいたのもうれしかった。そして何よりも、現役の議員さんが党を問わずにお忍びで鑑賞しに来てくださったことに、私は別府の未来に希望を感じました。
大島監督の奥さんが「すごい好青年のスポーツマンで、めちゃくちゃ頭がよかった元同級生の小川淳也君が、議員に立候補することになって、奥さん(同じく同級生)が大変そうや」という一言に興味を持って取材をスタートしたという本作。映画を観ると、本当に言葉通り性格も良く頭も良くて、誠実で熱いこの小川淳也という議員を大好きになり、心から「こんな素敵な人が総理大臣になれないなんて」と絶望してしまうと同時に、「こんな素敵な人がいる限り、まだまだ日本の未来は明るい」と藁をもすがる思いになる。そんなドキュメンタリーです。映画を観た観客の皆さんもまた口々に、そんな忸怩(じくじ)たる思いを大島監督にぶつけてくれました。中でも年配の男性が話した「映画を観て、今自民党が天下をとって安倍の思い通りになっとる一方で、野党が頼りないのも事実。こういう誠実な政治家にちゃんと頑張ってもらわなきゃいかんと思いました」という力強い意見に、大島監督もうれしそうにうなづいていました。
まさかのウーマンラッシュアワー村本も飛び入り参加!
実はこの日、福岡を訪れていた森田の親友、ウーマンラッシュアワーの村本大輔から一本の電話が。「今、福岡にいるんやけど、お前別府におんのか?」という村本に「明日は、私のハトコのにーちゃんが来て、ブルーバードで監督した『なぜ君は総理大臣になれないのか』っていう映画のトークやるんだよ」と話すと、「それめっちゃ観たかった映画やわ! 行く!」と即答。この男、こういうところが私は大好きなのですが、約束どおり、翌日特急に乗って別府ブルーバード劇場までやって来てくれました。一番後ろの席で、皆と一緒に映画を観ていた村本に「せっかくだから一緒にトークしよう!」と無理やり飛び入り参加をお願いすると、「めっちゃ面白かった! 監督と話したいわ」と壇上へ。かくして大島新監督×ウーマンラッシュアワー村本という異色の対談企画が実現。劇場にいた観客の皆さんも大喜びで、村本が持つ政治への熱も加わった非常に面白いトークショーとなりました。
この映画が都知事選前に上映されたことで、大いに盛り上がったという話になると村本は、「この人は、すごく興味を持てるし、話してみたいです」と小川さんに興味津々。大島監督も「初めて会ったときから、すごく真面目で熱くて、こんなに真顔で世の中を良くしたいって言っている人がいるってことがすごいと思った」と撮影することになったきっかけを話してくれました。一方で、村本は「僕は選挙の前だけ、選挙に行こう! ってなる風潮が嫌い。そうじゃなくて、普段から政治に興味を持って考えていれば、どの政党を応援するかも自ずと見えてくるはず。僕も小川議員みたいな人がどうして活躍できないのかを普段から考えていきたい」と壇上から熱く訴えました。映画を通して観客もゲストも皆が真剣に日本の未来を考えたこの日。忘れられない夜になりました。