帰省を我慢しているあなたへ!田舎に帰ってる映画
今週のクローズアップ
夏休みと言えば海、キャンプ、BBQ、海外旅行、とにかく寝る。いろんな過ごし方があると思いますが「田舎に帰る」も定番の一つです。でも今年の夏はなかなか思い通りに過ごせない人も多いのではないでしょうか。帰省したいけど帰省できない。あぁまぶたの裏の故郷よ……。そんな人たちに向けて田舎に帰っている映画を紹介していきます。映画の世界の「田舎に帰る」は癒やしばかりじゃない!?(編集部・海江田宗)
■いつでも「ただいま」と言える場所
是枝裕和監督がメガホンを取ったヒューマンドラマ『歩いても 歩いても』。阿部寛が主演し、15年前に他界した長男の命日に久しぶりに集まった家族の姿を描いています。帰省した良多(阿部)一家を迎え入れる両親を演じたのは名優の原田芳雄さんと樹木希林さん。
「こんにちは」と言って実家に帰ってくる息子に「ただいまでしょ」と笑顔で返す母の優しい声は心に染みます。「この家は俺が働いて建てたんだぞ! なのになんで“おばあちゃん家”なんだ」とぼやくおじいちゃんのセリフにもハッとさせられます。
是枝監督の等身大な脚本、キャストたちの自然体な演技がどこにでもありそうな家族の風景をつくりあげ、実家に帰ったような気分になれます。
■こんな祖父母の家は嫌だ
映画の世界だと、孫たちの田舎の祖父母の家へのお泊まりがとんでもない事態を巻き起こすことがあります。それがM・ナイト・シャマランが監督・脚本を務めた最恐ホラー『ヴィジット』です。
幼い姉弟がやってきた祖父母の家には三つの約束がありました。第一の約束:楽しく過ごすこと(←わかる)、第二の約束:遠慮なく食べること(←わかる)、第三の約束:夜9時半以降は部屋から出ないこと(←なんか不穏……)。
やがて姉弟にとてつもない恐怖が襲いかかり、「あっ今年は帰省しなくてもいっか」と思うことができます。
■故郷で辛い過去と向き合う
第89回アカデミー賞の主演男優賞に輝いたケイシー・アフレックの魂の込もった演技が光るのが『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。兄の死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻った孤独な男リー(ケイシー)は、自分が16歳のおいの後見人になっていることを知ります。
故郷に戻ることで過去の出来事と向き合うことになるリー。辛い記憶とともに楽しかった思い出も蘇ってきます。現在の自分を形成した様々な要素が混在している場所、それこそが故郷なのか……。いい思い出ばかりじゃないけどついつい足が向いてしまう場所、そして行ってみたら行ってみたで「うーん」と唸って、しまいにはなんのために唸ったのかもわからなくなる場所ってありますよね……。
■定番中の定番
夏休みに田舎を感じられる映画のド定番。今さら取り上げることすらためらってしまうのですが、外すわけにはいかないのが細田守監督によるアニメーション映画『サマーウォーズ』です。
天才数学少年なのに内気な高校生・健二(声:神木隆之介)が、あこがれの先輩・夏希(声:桜庭ななみ)に頼まれて、大家族が待っている夏希の田舎へ。そして大家族と一丸となって、世界を襲った危機に立ち向かっていくこととなります。
2009年の公開から11年経っているにもかかわらず、まったく色あせない、むしろ最先端を感じられるストーリー展開は何度観ても秀逸です。大家族のメンバー構成も夏の過ごし方も最高で、親戚と一緒にこんな夏休みを過ごしたいと何度思ったことか。願わくば『サマーウォーズ』を知らなかったあの夏に戻って、初見としてもう一度観てみたいです。ソーメンが食べたくなる映画です。
■汚れた故郷を角材で浄化する
ロック様ことドウェイン・ジョンソンが主演を務めた『ワイルド・タウン/英雄伝説』は、軍隊を除隊して故郷に戻ったクリス(ジョンソン)が主人公のアクション作品。8年ぶりに田舎に戻ってきた元特殊部隊隊員のクリス(もちろんゴリマッチョ)は、ギャンブルやドラッグが蔓延し、警察までもが腐敗した故郷の姿を目撃します。
愛する故郷が危険な町に変貌してしまったことに憤るクリスは悪者たちを相手に闘争を始めるのですが、使用する武器はなんと一本の角材。角材をぶん回すロック様の豪快なアクションを見ていると、次に帰省する時こそは筋肉ムキムキになっていたいと思わされます。
■おばあちゃんとの共同生活。そして、ジャム
登校拒否になった女の子・まいが、大好きなおばあちゃんと田舎で共同生活を送るちょっと不思議な物語『西の魔女が死んだ』。掃除、洗濯、食事……。美しく豊かな自然の中で進んでいく2人の生活は都会の喧騒や嫌なことを忘れさせ、“西の魔女”と呼ばれるおばあちゃんの言葉の一つ一つに癒やされます。
そんな作品の中に登場するのがワイルドストロベリージャムです。“山の味”がする野いちごを二人で仲良く摘んで、丁寧に洗って、薪でおこした火で砂糖と一緒にゆっくりと煮詰めていく。なんでもない作業なのにどこか神々しくもあり、おばあちゃんと一緒に過ごす時間の貴重さが映像から伝わってきます。ジャムは買うものではなくて手作りするものなのかもしれません。