亀梨和也、幽霊やお化けを信じる!『事故物件 恐い間取り』インタビュー
殺人・自殺などが起きた事故物件に住み続ける芸人・松原タニシが、自身の体験をもとにした著書「事故物件怪談 恐い間取り」をジャパニーズホラーの巨匠・中田秀夫監督が映画化。この映画で亀梨和也が主人公の山野ヤマメを演じ、ホラー作品に初挑戦している。KAT-TUNのメンバーとして長い間キラキラした世界に生きる彼が、“関西弁でしゃべる売れない芸人役”をどう演じるのか? 俳優として新たな領域へ挑んだ亀梨が語った。
幽霊やオバケは絶対にいる!
Q:ご自身にとって初のホラー映画でしたね?
僕のなかでは難題でした。最初にオファーをいただいたとき、こういったテイストの作品に自分が出演者として現場へ行くことが果たしてよい結果を生むのかどうか……と。自分から距離をとってきたわけではありませんが、日常で「なるべく起きないでほしい」と思っているようなことと向き合わないといけないわけで、大丈夫かな? と。ホラー映画に関しては得意不得意、好き嫌いも感じたことがありません。意識的に望んでいる距離感ではありませんでしたけど。
Q:主人公のヤマメは番組の企画で、半ば強制的に事故物件へ住むはめになります。もしご自身が、先輩に「住め」と言われたらどうしますか?
タイミングによるかもしれません。歌って踊って、でもどうがんばっても成果が出ない。それでも「どうにかこの子を」と思ってくださって言われたのであれば……潔く、ジャニーズを辞めているかもしれないです。僕はそうまでしてもそこにいたいと思ってジャニーズに入ったわけじゃない(笑)。
Q:幽霊やオバケは信じますか?
(……ばたんっと、誰かの傘が倒れる)いま、来ましたね! いるんだよ、というアピールかも(笑)。僕自身は信じます。絶対にいると思いますよ。この映画をやって感じたというより、もともといると思っていました。生霊のようなもの、人の想いや念というのも絶対にあると思いますから。言霊も信じてます。だから人の悪口はなるべく言いたくないし、起きてほしいことしか口にしないようにしていますね。
役づくりで本物の芸人と、芸人仲間として一日過ごす
Q:芸人役も初めてでしたね?
大きい括りでいうと同じ業界のなかでお仕事をさせていただいていますし、売れない芸人としての葛藤をどう表現するか? その難しさもありました。しかも関西弁のセリフで、それがナチュラルに聞こえればいいのですが……。関西弁と芸人さんであること、そこに違和感を持たれたら、この映画のエンタメ性を半減させてしまう。「ああ亀梨っぽいね!」と思う部分はゼロに近く、むしろマイナスからのスタートで、まずはそこをどうクリアするか。違和感をぬぐえなかったら僕の力不足ということになりますから、キチンと丁寧に向き合いました。
Q:お笑いライブを観たりされたのでしょうか?
実際に劇場へ行きました! 仕事とは無関係に知り合った、同世代のお友だちに芸人さんがいて。彼に協力してもらい、「芸人仲間として一日過ごしてくれ」とお願いしたんです。関西の方なので、その間ずっと関西弁でしゃべり、ご飯やさんも彼が仲良くする、カウンターしかないお店に行ったりして。ストイックにやったというより、疑似体験をして、この映画に入るためのモチベーションを上げる作業でした。ヤマメを演じるにあたって手助けになるような引き出しを持っておこうと、彼にインタビューもしましたね。
Q:ヤマメは危機的状況になると、相方やヤマメを密かに応援する奈緒さん演じる梓が助けようとしてくれます。もしご自身が似たような状況に陥ったとき、助けを求める人はいますか?
はい、います。ここではちょっと言えませんが(笑)。まあ実際にそういうときに頼れるのはお友だちであり家族であり、身近な人ですよね。
シーンによって変えたタニシ本人との距離
Q:事前にタニシさんにもお会いしたそうですが、ヤマメはタニシさん自身に単純に寄せているわけではありませんよね。塩梅はどのように?
そこはもう嗅覚です。ビジュアル面に関してはタニシさんのイメージを自分のフィルターを通して出しました。例えば衣裳のシャツなら、よく見るとニュアンスは違いますが、パッと見の印象を寄せたりして。メガネは、タニシさんのものをお借りしました。3種類あり、シーンによって変えています。
Q:見た目以外の役づくりは?
しゃべり方やリアクションに関しても、純粋にヤマメとして成立させようとしたところと、タニシさんの要素を入れるなどいろいろです。ヤマメが芸能活動をする、モニターで録画をするところや怪談話のシーンでは、タニシさん自身のまばたきをする癖や、しゃべりながらアゴの辺りを手で触れる仕草をちょいちょい入れたりしました。驚いたときのリアクションや走り方には、自分の感覚が出ないよう意識していましたね。
プライオリティーのトップは、お客さんのため
Q:ホラー映画を経験した感想は?
ホラーってある意味、コンサートや舞台に近いと思いました。お客さんの目線や温度感を考えながら作っていく作業が多かったです。「カーテンが少し開いている方が怖いよね?」と調整していくのは、完全にお客さんのためなんです。「ここで驚くときは、(実際に大きい声で)『わ!』というくらいにボリューム上げたほうがいいかも」というのも役柄の心情はもちろん考えますが、プライオリティーのトップはお客さんを驚かせるためで……ってすいません、大きい声を出して。
Q:いえいえ(笑)。
そうした作業自体にもライブ感がありました。初めてホラー作品にがっつり出演させていただきましたが、ホラー映画って、こんなにお客さんを感じながら作っていくんだなと。もちろんメッセージ性もありますけどより体感型の要素があると思ったんですよね。
■取材後記
会場にやってきてすぐにテーブルを自ら動かし、記者が録音用のレコーダーを置きやすいように気配りする亀梨和也。インタビューが始まってからも質問が終わるや否やしゃべり出し、どんな質問にも饒舌に答える。正直に、ときには笑いをとりながら。ツッコミどころのない優等生な姿はいつもの通り。それでいて映画では「売れない芸人」として右往左往する姿を全力で演じている。この振り幅こそ、彼が長い間、多くの人を惹きつける要因なのだろう。(取材・文:浅見祥子)
映画『事故物件 恐い間取り』は8月28日より公開
(C) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会