商店街のお祭りに協力してきたの巻
まほの別府ブルーバード劇場日記
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、今年はたくさんのイベントが中止になってしまいました。なんとも寂しいものですが、先日、野外上映なるものに協力することが! コロナに負けず、活気あふれる別府市で行われた素敵な夏のイベントの様子をお伝えします!(文・森田真帆)
相次ぐイベントのキャンセルに落胆の声
別府ブルーバード劇場がある大分県別府市は、温泉旅館が立ち並ぶ観光都市。いつもなら街にたくさんの外国人観光客や、浴衣を着た団体旅行の人たちがいる別府の街も3月ごろからどんどんお客さんが減っていきました。別府ブルーバード劇場のある別府駅前のメインストリートの駅前通りも人がまばら。緊急事態宣言が明けてもなお、飲食店の方々は本当に大変な思いをしています。
岡村照館長は、駅前通りにあるお店で作られた理事メンバーです。本来ならば、4月に湯ぶっかけ祭りという10トンの温泉がぶっかけられる頭のおかしいお祭りが開催され、夏には火の海祭りというお祭りが開催されて、駅前通りも大変盛り上がるはずでした。でも残念ながら、にっくきコロナのせいですべてのイベントがキャンセル。街の人にも落胆の声が広がっていたのです。
屋外で映画を上映して、街を元気にしよう!
ある日、わたしに駅前通り会の方から一本の電話がかかってきました。毎年恒例の夏祭りがキャンセルになったことで落ち込んでいる別府の街に、元気を取り戻したいというお祭りの実行委員会の方々が、映画の上映イベントをするという企画です。ぜひとも協力したい! ミーティングに参加すると、いろんな意見が出されました。最近いろんなところで行われているドライブインシアターなんていうアイデアも出ましたが、事故などが起きたときのリスクを考えると、ちょっと怖い上に予算も難しい。
さぁ、どうしようとなったときに、ブルーバード劇場の照館長が昔観たという野外上映の話になりました。そういえば、以前取材で訪れたカンヌ国際映画祭での一番素敵な思い出は、ビーチで行われていた無料の野外上映だったし、やってみたら面白そう! と委員会の皆さんと一緒に盛り上がり、計画はどんどん進んでいきました。場所は駅前通りにあるトキハデパートの屋上。そこであれば密にもならず、椅子を離して座ることでソーシャルディスタンスをキープすることができる! こうして、駅前通り会の皆さんとのコラボ企画「Sky Theater in Beppu」が始まりました。
360度の美しい景色の中で映画を観る幸福感!
3日間のイベント期間で、別府ブルーバード劇場がセレクトしたのは『若おかみは小学生!』『フラガール』『めんたいぴりり』の3本。毎日大変な思いをしている人たちに、元気を与えてくれる映画にしました。『若おかみは小学生!』は交通事故で両親を亡くした子供が祖母の温泉旅館で奮闘するお話。『フラガール』は福島の常磐で鉱山が閉山の危機を迎えた炭鉱町で、少女たちがフラダンスでショーガールを目指していくお話。そして『めんたいぴりり』は、苦境の中で明太子を作った夫婦の人生を笑いと涙で綴った作品です。
イベントの初日は残念ながら雨となってしまい、駐車場の屋根の下での上映になりましたが、翌日は見事な晴れ! 美しい夕焼けの中、『フラガール』の先行イベントとして、大勢の地元のフラガールたちが上映前の会場を盛り上げました。上映前には私もステージの上で、映画の解説をさせてもらい、ちゃっかりブルーバード劇場の宣伝もしちゃいましたよ。満天の星空の下、みんなで観る映画は格別の楽しさがありました。みんなで泣いたり、笑ったり、最高の映画体験となりました。
ブルーバード劇場は町と共に生きる映画館
別府駅前通りにはオールディーズのライブハウスである別府ヒットパレードクラブ、そして今年で50周年を迎える別府ブルーバード劇場というエンターテインメントの発信地があります。全国に新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が出され、ヒットパレードクラブは約半年、ブルーバード劇場も1か月に渡る休業を余儀なくされました。
かつて別府駅前通りにたくさんの映画館がひしめき合った時代。音楽と映画は人々にとっての唯一無二の娯楽で、皆はスクリーンで活躍するヒーローに心を踊らせ、歓声が映画館を揺らしていました。ダンスホールでは、昭和のビートに合わせて踊り、街には活気があふれ、人と人との繋がりを感じる空間があったのだそう。今、コロナの影響で多くの人が大変な苦労を強いられています。こんな苦境のときだからこそ、エンターテインメントの素晴らしさを多くの人たちとシェアし、一緒に泣いて、一緒に笑いたい。娯楽が人々に希望を与えていた昭和の時代に立ち返り、皆で観ることの素晴らしさを、夜風に吹かれながらぜひ体感してほしい。商店街はもちろんのこと、別府を愛する人たちによって実現したコラボは大成功! 街に支えられ、人々に愛される映画館であることを心から感じたのでした。