二宮和也~圧倒的な存在感と失われない素朴さが共存 世界が認めた演技派俳優
銀幕のジャニーズ
映画で活躍する銀幕ジャニーズの俳優としての面にフォーカスして、デビュー作から最新作まで、どんな俳優なのかを見ていきます。第6回は、俳優として唯一無二の存在感を示す二宮和也。(文・新亜希子)
【銀幕のジャニーズ 連載第6回】
1999年に「嵐」としてCDデビュー。2006年、『硫黄島からの手紙』での好演が注目を浴びる。アイドルとして活躍しながら映画・ドラマにコンスタントに出演。『母と暮せば』(2015)にて第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した。
映画デビュー作:『ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY』(2002年10月18日)恩田琢磨役(当時19歳)
V6・井ノ原快彦の青春時代を原案として製作された作品。東京・品川にあるマンモス団地・八塩団地に住む、くされ縁の5人組を嵐が演じた。個人としての映画初出演は、同じく19歳で主演した『青の炎』(2003)。人気アイドル・松浦亜弥と共演し、話題に。17歳の少年が企てる完全犯罪が主軸となっており、監督・脚本をつとめた蜷川幸雄さんは、二宮の演技、勘の良さを高く評価。同作のメイキングビデオには、二宮の魅力についていきいきと語る監督の姿が残されている。
ドラマデビュー作:元旦特別企画・松本清張原作「天城越え」(1998年1月1日)西浦多吉(少年期)役(当時14歳)
長塚京三演じる多吉の、少年期役でドラマデビュー。共演は田中美佐子、蟹江敬三ら。二宮は、過去に自身のラジオ番組で「もっとも辛かった仕事」として同作の名を挙げている。初ドラマの緊張感のなか、夏という設定に合わせ、冬に浴衣のみを着用して撮影。さらには吐息が白くならないよう氷をなめながら演じたという。
映画俳優としての主な活躍
ジャニーズJr.時代からドラマに出演し、デビュー前に主演を務めるなど演技の仕事が多かった二宮。
単独での映画初主演作『青の炎』では、蜷川幸雄さんが監督・脚本を務めた。二宮の芝居を見つめる嬉しそうな表情が、メイキングビデオに収められている。二宮は当時から「台本は現場に持ち込まない」と語り、撮影の合間には談笑したり、心を落ちつけるべくギターをつまびいて過ごしていた。主演として膨大な量の台詞を覚え、演じ切るのは並大抵のことではない。陰の努力は見せないと決めているか、努力することを当たり前としているのか。
なんといっても『硫黄島からの手紙』への出演は大きかった。二宮演じる西郷の語りから始まる本作では、彼がストーリーテラーの役割を果たしていると言っていい。観客は、西郷の目を通して物語を見る。西郷の境遇、思いに共感し、涙する人も多かったはずだ。本作において二宮が、そこにいる意義、残した功績は計り知れない。
同作、そして『母と暮せば』も同様だが、二宮は華やかなアイドルの世界に身を置きながら、昭和を慎ましく生きた日本人や、平凡ないち人間の人生を演じ、味わいを持たせることができる。存在は圧倒的なのに、素朴さが失われていない。
最新作『浅田家!』では、実在の写真家を演じている。華よりも、求められるものは説得力。ひとりの人間の身のまわりを、心のうちを丁寧に演じる。二宮がもっとも活きるタイプの作品だ。
最新作:『浅田家!』(2020年10月2日)浅田政志役
写真家・浅田政志氏の写真集「浅田家」「アルバムのチカラ」を原案としたヒューマンストーリー。幼いころから写真を撮ることが好きだった政志(二宮)は、家族全員がそれぞれやってみたかったこと、なりたかったものをテーマに“家族写真”を撮影。家族全員が本格的にコスプレして、役になりきったユニークな写真は、やがて写真界の芥川賞といわれる木村伊兵衛写真賞を受賞。写真家として軌道に乗り始めたころ、東日本大震災が発生する。
被災地を訪れ、家族や家を失った人々の姿を目の当たりにする政志。シャッターを切ることなどできず、家族について、写真家である自分ができることについて、自問自答を繰り返す。ある日、津波によって泥まみれになった写真を丁寧に洗い、家族のもとへ返す写真洗浄のボランティアに出会い、自身も活動に参加。思い出の写真を手に帰っていく人々の笑顔に触れることで、再び写真のチカラを信じられるようになった政志のもとに「家族写真を撮ってほしい」という少女が現れる。
なにもかもを奪っていった震災において、唯一残された“写真”が持つチカラ、そして、政志を信じて支え続けた家族の姿を通し、あらためて家族の絆について考えさせられる。笑いと涙で描かれた、感動の実話。
二宮和也フィルモグラフィー
【映画】
『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』(2002年10月18日公開)恩田琢磨役(嵐のメンバー5人が主演)
『青の炎』(2003年3月15日)櫛森秀一役(蜷川幸雄さんが監督・脚本を務め話題に)
『ピカ☆☆ンチ LIFE IS HARDだからHAPPY』(2004年3月1日公開)恩田琢磨役(前作の3年後を描いた。ギターを演奏する場面も)
『硫黄島からの手紙』(2006年12月9日公開)西郷昇役(出演はオーディションにて決定。別の配役オーディション時の二宮の様子を気に入った監督が、西郷役に決めた)
『黄色い涙』(2007年4月14日公開)村岡栄介役(嵐のメンバー5人で出演。永島慎二の漫画「若者たち」を原作としている)
『ヘブンズ・ドア』(2009年2月7日公開)ホスト役(友情出演、TOKIO・長瀬智也が主演)
『大奥』(2010年10月1日公開)水野祐之進役(二宮の髷姿は本作が唯一)
『GANTZ』(2011年1月29日公開)玄野計役(二宮にとって初のSFアクション作品)
『GANTZ:PERFECT ANSWER』(2011年4月23日公開)玄野計役(松山ケンイチとのアクションシーンに注目)
『プラチナデータ』(2013年3月16日公開)神楽龍平役(東野圭吾原作の大人気サスペンス小説を映画化)
『ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶん HAPPY』(2014年8月~12月、5都市にて公開)恩田琢磨役(シリーズ“2.5作目”とされる、スピンオフ)
『映画 暗殺教室』(2015年3月21日公開)殺せんせー(声)役(同役を二宮が演じていることは、公開初日の舞台挨拶にて初めて明かされた)
『母と暮せば』(2015年12月12日)福原浩二役(山田洋次監督作品。吉永小百合とのダブル主演)
『暗殺教室~卒業編~』(2016年3月25日)殺せんせー(声)/死神役(声のみでなく、本作には実写としても出演)
『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』(2017年11月3日)佐々木充役(元来左利きだが、本作では右利きを演じている)
『検察側の罪人』(2018年8月24日)沖野啓一郎役(木村拓哉と初共演し話題に)
『浅田家!』(2020年10月2日)浅田政志役(写真家・浅田政志氏の写真集を原案とし、実話をもとにした作品)
【ドラマ】
元旦特別企画・松本清張原作「天城越え」(1998年1月1日)西浦多吉(少年期)役
「二十六夜参り」(1998年8月17日)沖田明雅伍長(回想シーン)役
「あきまへんで!」(1998年10月9日 - 12月18日)青木大樹役
「熱血恋愛道」第1話「case1:射手座のO型BOY」(1999年1月10日)近藤トシヤ役
「あぶない放課後」(1999年4月12日 - 6月21日) 夏木勝幸役
「怖い日曜日」 第8回「ここだったか」(1999年9月5日)
「Vの嵐」(1999年10月11日 - 29日)二宮和也役
「涙をふいて」(2000年10月11日 - 12月20日)淵上健太役
「ハンドク!!!」(2001年10月10日 - 12月12日)坂口ノブ役
「熱烈的中華飯店」(2003年1月8日 - 3月12日)名波健太役
「Stand UP!!」(2003年7月4日 - 9月12日)浅井正平役
「南くんの恋人」(2004年7月8日 - 9月16日)南進役
「優しい時間」(2005年1月13日 - 3月24日)湧井拓郎役
「少しは、恩返しができたかな」(2006年3月22日)北原和憲役
「拝啓、父上様」(2007年1月11日 - 3月22日)田原一平役
「山田太郎ものがたり」(2007年7月6日 - 9月14日)山田太郎役
スペシャルドラマ「マラソン」(2007年9月20日)宮田彰太郎役
「魔王」第1話(2008年7月4日)熊田正義役(友情出演)
「流星の絆」(2008年10月17日 - 12月19日)有明功一役
「DOOR TO DOOR ~僕は脳性まひのトップセールスマン~」(2009年3月29日)倉沢英雄役
JNN50周年記念スペシャルドラマ「天国で君に逢えたら」(2009年9月24日)野々上純一役
新春スペシャルドラマ「最後の約束」(2010年1月9日)山際修司役
「夏の恋は虹色に輝く」最終話(2010年9月20日)照明係役(友情出演)
「フリーター、家を買う。」(2010年10月19日 - 12月21日)武誠治役
「フリーター、家を買う。スペシャル」(2011年10月4日)武誠治役
24時間テレビ35スペシャルドラマ「車イスで僕は空を飛ぶ」(2012年8月25日)長谷部泰之役
「弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」(2014年4月12日 - 6月21日)田茂青志役
フジテレビ開局55周年記念ドラマ「オリエント急行殺人事件」(2015年1月11日・1月12日)幕内平太役
TBS年末ドラマスペシャル「赤めだか」(2015年12月28日)立川談春役
ドラマスペシャル「坊っちゃん」(2016年1月3日)坊っちゃん役
「ブラックペアン」(2018年4月22日 - 6月24日)渡海征司郎役
受賞歴(※映画のみ)
第89回キネマ旬報ベスト・テン 主演男優賞(『母と暮せば』)
第39回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞(『母と暮せば』)
第43回報知映画賞 助演男優賞(『検察側の罪人』)
第42回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞(『検察側の罪人』)