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ヒロインをゴージャスに包み込むフェンディの軌跡

映画に見る憧れのブランド

 1925年にイタリアで創業し、毛皮の世界に変革を起こしながらラグジュアリーブランドへと成長したフェンディ。フェンディの毛皮は、多くの映画の中で印象的に登場します。フェンディが進化していった軌跡を映画と一緒に紹介します。

ハリウッドの流行から生まれたフェンディのファーコート

フェンディ
James Leynse / Corbis via Getty Images

 フェンディと言えば毛皮という印象がありますが、もとはローマでエドアルドとアデーレ・フェンディ夫妻が開いた、小さな毛皮・皮革製品工房からスタートしました。フェンディの工房が開業してまもなく、1920年代後半にトーキー(発声映画)が生まれ、映画産業は人々のレジャーとして大きく成長し、人々のライフスタイルやファッションに大きな影響を及ぼしていました。

フェンディ
5人の娘たち。AGF/Universal Images Group via Getty Images

 そんな中、フェンディ夫妻はハリウッドで流行していた毛皮の襟巻きから着想を得てファーコートを打ち出し国内で大人気に。毛皮のコートはイタリア女性の憧れのファッションとなりました。(※1)そして、1946年にエドアルドが亡くなった後は工房を引き継いだ5人の娘たちが、PRやセールスを強化することでビジネスを大きくしていったのです。(※2)

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ハリウッドの流行から誕生したファーコート

フェンディ
『エビータ』より。Buena Vista Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 フェンディのクラシックな毛皮のコートはマドンナ主演の『エビータ』(1996)にも登場。本作はアルゼンチンのフアン・ペロン大統領夫人エバ・ペロンの人生をミュージカルにした物語。エビータは、貧しい家からファーストレディになり国政にまで参加するほどの聖母として慕われた、アルゼンチンの伝説的な女性です。エビータがファーストレディになった暁には、ディオールのドレス、フェラガモの靴、ブルガリのジュエリーで自分を飾りますが、仕上げに羽織るのがフェンディのファーコート。1950年代頃までは毛皮は防寒としての目的を果たし、また、毛皮職人にしか作れない高級素材であったことから、富のシンボルだったのです。

フェンディ
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』より。Touchstone Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ウェス・アンダーソン監督作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)にもフェンディのファーコートがお目見え。マーゴ役を演じたグウィネス ・パルトローの直線ストレートボブ、ラコステのポロワンピース、エルメスのバーキン、そして、フェンディの毛皮。このミスマッチがパルトローのキャラクターに複雑性を強調しています。

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カール・ラガーフェルドが生んだ「ファン・ファー」

フェンディ
パリのアトリエで作業するカール・ラガーフェルド。Roland Witschel / picture alliance via Getty Images

 フェンディ家の5人の娘はファミリービジネスを順調に成長させていきましたが、1965年にさらなる勝負を挑みます。それは、当時まだ無名のカール・ラガーフェルドを主任デザイナーに抜てきしたこと。後にモードの帝王と呼ばれたラガーフェルドは「ファン・ファー(Fun Fur 楽しい毛皮)」というコンセプトの下、これまで毛皮に使われてこなかった異素材、加工、ステッチ、ドレープなどを組み合わせて1969年には毛皮のプレタポルテを開始。

フェンディ
『グランド・ブダペスト・ホテル』撮影オフショットより。Fox Searchlight Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ウェス・アンダーソン監督作『グランド・ブダペスト・ホテル』 (2013)は、アカデミー賞作曲賞、美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング、衣装デザイン賞の4冠を果たした、非常に美しい作品。本作でマダムDを演じるティルダ・スウィントンが纏うのがフェンディのケープです。グランド・ブダペスト・ホテルの赤いエレベーターと同色の、真っ赤なシルクとブラックミンクのケープ。ケープの他にも帽子、手袋や口紅までもがエレベーターの“赤”に揃えられている上に、ケープには個性的な刺繍が施されており、マダムが着るような古くさい毛皮のイメージをモダンにアップデートしたスタイル。

フェンディ
『グランド・ブダペスト・ホテル』より。Fox Searchlight Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 さらに、エドワード・ノートン演じるヘンケル警部が身につけた、グレーのアストラカンファーを使ったコートもユニーク。珍しいミリタリールックの毛皮は、どこか幼さが残るヘンケル警部に権威を与える小道具となっています。

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カジュアルな毛皮スタイルを次々と発表

フェンディ
『プラダを着た悪魔』より。20th Century Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

 『プラダを着た悪魔』(2006)でメリル・ストリープ演じるミランダが着るストライプ柄のブラウンのファーもオリジナリティーにあふれた逸品。米ヴォーグの編集長アナ・ウィンターをモデルにしたと言われるミランダですが、毛皮を愛することで有名なウィンターは16歳の頃からファーコートを日常着にしていたとか!

フェンディ
『ブルージャスミン』より。Sony Pictures Classics / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ラガーフェルドは日常にも取り入れやすいファーを次々と発表してきました。そのひとつは、ケイト・ブランシェットが壊れていく女性ジャスミンを熱演した『ブルージャスミン』(2013)で、NYCのセレブライフを満喫する彼女が五番街のフェンディの店に入るシーン。店に飾られたベージュのノーカラーコートに細いベルトを巻いたエレガントなアウターは、ファーのポケットがついており、クラシカルとイノベーションを融合させたフェンディならではのものでしょう。

フェンディ
『氷の微笑2』より。Sony Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 『氷の微笑2』(2006)は、14年前に大ヒットした同名の前作で、ハリウッドのトップスターに躍り出たシャロン・ストーンが魔性の女キャサリンを再び演じた続編。謎めいた富豪の作家、キャサリンを取り巻く殺人事件を追った本作は、前作で相手役だったマイケル・ダグラスが出演を断ったことが残念ですが、ラストのどんでん返しが見もの。ストーンが羽織るホワイトレザーに同色のファーが襟元についたアウターは、前作からのファッションテイストを受け継ぎ、ストーンのゴージャスな妖艶さを際立たせています。毛皮にレザー、エナメル、カシミヤなど異素材を組み合わせるのも、フェンディの得意技となりました。

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ラグジュアリーブランドにのし上げた「バケット」と「ピーカブー」

フェンディ
女子の憧れ、バケット。Stefanie Keenan / WireImage / Getty Images

 1970年代以降、フェンディは毛皮と皮革製品以外の商品ラインを拡大し、ラグジュアリーブランドへの道を歩みます。1977年にはプレタポルテがスタートし、1985年には初の香水も発表。そして、1997年、フェンディのITバッグとなった「バケット」が登場しました。フランスパン(バケット)を小脇に抱えているように見えるバッグということで名付けられた「バケット」は、世界中で大旋風を巻き起こし、「セックス・アンド・ザ・シティ」のキャリーも愛用しました。「これはバッグじゃないのよ、バケットよ!」と、彼女が放ったセリフは有名です。

フェンディ
遊び心たっぷりのピーカブー。Michael Dodge / Getty Images

 バケットに負けず劣らず人気の定番バッグは「ピーカブー」。2009年に発表されたこのバッグは、「いない、いないばぁ(Peek a boo)」という意味があり、開いたら思わず笑顔になるようなデザインが施されています。クラシックな外見のバッグですが、内側や持ち手には異素材や対照的な色が使用されている、遊び心に富んだデザインが特徴です。

フェンディ
『サード・パーソン』より。Sony Pictures Classics / Photofest / ゲッティ イメージズ

 パリ、ローマ、ニューヨークを舞台に3組の男女が織りなすミステリーを描いた『サード・パーソン』(2013)は、脚本が50回も改稿されたと言われるほど複雑なストーリー。リーアム・ニーソンの愛人を演じるオリヴィア・ワイルドが、この謎を解き明かす鍵とも言える白いドレスのお供に持つ黒いバッグがピーカブーです。若々しい美しさだけではなく、ピーカブーが知性や成熟した魅力をオリヴィア・ワイルドに添えているのではないでしょうか。

フェンディ
カール・ラガーフェルドとシルヴィア・フェンディ。Andreas Rentz / Getty Images

 昨年2019年にカール・ラガーフェルドは亡くなってしまいましたが、現在は、彼と一緒に長年働いてきたフェンディ家の三代目、シルヴィア・フェンディが工房の伝統とラガーフェルドの「ファン・ファー」の概念を受け継いでフェンディを率いています。

【参考】
※1…「FENDI」- ハイブランド.com
※2…The Fendi History - My Mall Magazine

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此花わかプロフィール

此花わか

映画ライター。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部勤務を経てライターに。ジェンダーやファッションから映画を読み解くのが好き。手がけた取材にジャスティン・ビーバーライアン・ゴズリングヒュー・ジャックマンデイミアン・チャゼル監督、ギレルモ・デル・トロ監督、ガス・ヴァン・サント監督など。(此花さくや から改名しました)

Twitter:@sakuya_kono Instagram:@wakakonohana

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