今、観るにはアブナすぎる!?「ユートピア~悪のウイルス~」
アメコミオタクたちが世界を揺るがす陰謀に立ち向かうサスペンス「ユートピア~悪のウイルス~」(シーズン1、全8話)が動画配信サービス「Amazon Prime Video」で一挙配信中。そのドラマの内容がかなりヤバイことになってるらしい!?(平沢薫)
※ご注意 なおこのコンテンツは「ユートピア~悪のウイルス~」について、一部ネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。
魅力1:モチーフがタイムリーすぎ!
サブタイトルからもわかるように、このドラマの中心となるのは新型ウイルス。しかもその背後には、怪しい陰謀論がある。さらに米国疾病管理予防センター(CDC)もストーリーに絡む。そんなドラマなので、アメリカでは、新型コロナウイルスやQアノン(米政治にまつわる陰謀論を唱えるグループ)の陰謀論が蔓延する現在の状況では内容がアブナすぎるという批判もあって賛否両論。IT系ニュースサイト The Verge のレビューでは今年でもっとも不運なドラマと評されたほど。それほど、タイムリーなアイテムが続々登場するドラマなのだ。
魅力2:キャラクターが全員、強烈すぎ!
そのうえ、登場人物たちの個性が強烈すぎ。ドラマの中心となる男女6人はみなコミックオタクでカルトコミック「ユートピア」の熱狂的ファン。その中の2人はこのコミックの絵の中に、ある陰謀が暗号のように隠されて描かれていると確信している。コミックオタク以外に、そのコミックを手に入れようとするのが、無表情な暗殺者と拷問マニアのコンビ。また、ストーリーのキーとなるジェシカは格闘の達人で、ある事情があって平気で人をあやめる。そんな登場人物たちなので、突然の殺人や残虐シーンなどショッキングな描写もある。その意味では観る人を選ぶ作品かもしれない。
また、そんな強烈なキャラたちだから、キャストもユニーク。事件に絡むツイてない科学者役は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン監督の裏アメコミ映画『スーパー!』(2010)に主演したレイン・ウィルソン。巨大企業の幹部役にテレビシリーズ「GOTHAM/ゴッサム」のリドラー役でおなじみのコーリー・マイケル・スミス。ドラマのキーとなるジェシカ役は、『アメリカン・ハニー』(2016)で英国インディペンデント映画賞(BIFA)主演女優賞受賞の個性派美女サッシャ・レインが演じている。
魅力3:アメリカのコミコン事情、オタク事情をチラ見!
登場人物たちがコミックオタクなので、アメリカのオタクたちの行動がチラ見できるのも楽しいところ。ネットでのやりとりや初めてのオフ会の様子はほぼ日本と同じかも? また、彼らが参加するコミック系コンベンション会場の様子も垣間見ることができる。その中で、一般販売とは別に、個人が貴重なアイテムを売るときの個室での商談の様子も登場。なるほど、こういうふうに行われるのかと興味津々。
魅力4:ストーリーの先が読めない!
ストーリーの先が読めない展開も本作の魅力。コミック「ユートピア」を手に入れたがっているのは誰なのか? それは何のためなのか? 謎解きの行き着く先がなかなか読めない。原作は、英国のテレビシリーズ「ユートピア」(2013~2014)。この作品のクリエイターのデニス・ケリーが製作総指揮に参加し、『ゴーン・ガール』(2014)の原作者で脚本家のギリアン・フリンがクリエイターを務めたのが本作なのだ。
英国版も米国版も基本的な設定は同じだが、微妙に違うストーリーが展開。米国版はジェシカが何者なのかがすぐに説明されるなど、英国版よりもすぐにドラマに入りやすいように作られている。また、英国版では下っ端の官僚が務める役割を米国版では不遇の科学者が務めたり、英国版では政府が絡むところに米国版では巨大企業が絡むなど、お国柄を反映させたアレンジぶりも興味深い。
魅力5:ギリアン・フリン脚本らしい「ちょっといいセリフ」もオイシイ
本作のクリエイターのギリアン・フリンは、デヴィッド・フィンチャー監督『ゴーン・ガール』の原作者兼脚本家で、本作の脚本にも参加。このシリーズは一時、デヴィッド・フィンチャーがリメイクするとのニュースも流れたので、フリンの参加にはフィンチャーの影響があるのかもしれない。
フリンのテレビシリーズへの参加は初めてではなく、エイミー・アダムス主演のテレビシリーズ「KIZU-傷-」でも原作と脚本を手掛けており、本作では彼のちょっといい感じのセリフも本作の見どころ。「変人はユーモアがなくちゃ」「弱点ならみんなに見せてるでしょ」など、ところどころでキラリと光るいいセリフの数々も見逃せない。「ユートピア~悪のウイルス~」には、このようなアブナくてユニークな魅力がたっぷり詰まっているのだ。