館長就任50周年!コロナ禍に執念でやり遂げた映画祭
まほの別府ブルーバード劇場日記
2020年は、89歳の照館長にとってとても大切な1年でした。39歳で旦那様を亡くしてから館長に就任して以来50周年。本来であればみんなで盛大に祝えるはずだったのに、新型コロナウイルスの感染拡大で4月には緊急事態宣言による閉館が余儀なくされ、再開した後もいまだにお客さんは戻ってきていません。それでも自分たちにできることを考えて、今年も映画祭を開催することに決めました。(文・森田真帆)
コロナ禍の影響を思いっきり受けた別府の街
約50年に渡って別府の街の小さな映画館を守ってきた岡村照館長の映画人生を、映画と人で思いっきりお祝いする映画祭。それが、4年前に始まったBeppuブルーバード映画祭です。映画祭は今年で4年目。本来であれば、夏くらいから準備し始めるところでしたが、今年の夏の別府の町は観光客がすっかり減って元気もなく、多くの旅館や飲食店がとても大変な思いをしていました。とある経済雑誌では、別府市がコロナ倒産リスクを抱える都市ワースト1位になったことが発表されたほど。「こんなに大変な時にブルーバードだけで映画祭なんて、良くないんやないだろうかね」とみんなで話し合いをした結果、やっぱり今年は中止にしようとしていたんです。
周囲の人たちの声に支えられた1年間
「今年は映画祭やらないんですか?」「毎年楽しみにしています!」という声が別府ブルーバード劇場に届き始めたのは10月の終わり。照館長を特集してくれたNNNドキュメントが放送されて、たくさんの人たちが電話やメールで「今はとっても大変な時だと思いますが、なんとか乗り越えてください」など励ましてくれました。中でも多かったのが、番組の中で紹介された映画祭の様子を見た方からの「今年は映画祭をしないんですか?」との声。それは、地元のお客さんも同じで、「こんなときだからこそ、映画祭をしてほしいです」とうれしい言葉をたくさんかけてくれました。こんなときだからやめておこうと思っていた映画祭が、こんなときだからこそ開催してほしいという沢山の人たちの声に押され、12月5日と6日の2日間で開催実現に向けて動き始めたのです。
照ちゃんのために駆けつけてくれた監督や俳優の皆さん
毎年多くの監督と役者さんが来てくれた映画祭ですが、今年はクラウドファンディングをすることもなく、予算を極限まで減らして実行することを決めました。そして、この大変な時期に行くよ! と言ってくれたのは、4人の監督と俳優さんです。映画『一度も撃ってません』の阪本順治監督、映画『喜劇 愛妻物語』の足立紳監督、映画『酔うと化け物になる父がつらい』の渋川清彦さん、映画『ソワレ』の村上虹郎さん。今回上映した4本はどれも、コロナの影響で別府ブルーバード劇場での上映機会を失ってしまっていた作品群です。
なかでも、映画『顔』の撮影以来20年の付き合いで、照館長の婚約者(?)と噂されている阪本監督は、昔からの常連さんとの再会を大いに楽しみました。久しぶりのトークでは、阪本監督が考えるお酒について話してくれました。映画の撮影がインする前、必ず主演の俳優とサシ飲みをするという監督。お互いがお酒を飲んで、飾らないトークをすることが大切だそうで、あの吉永小百合さんともサシ飲みをしたというエピソードには、観客席からも驚きの声が上がっていました。
前代未聞!ステージ上でまさかの夫婦ゲンカ勃発!?
映画祭の常連となった村上さんと渋川さんはすっかり慣れた様子で別府の街を歩き、映画祭初参加となった足立監督は映画のモデルでもある奥様と一緒に舞台上で白熱のトークバトル(夫婦ゲンカ?)を繰り広げてくれました。上映中は、みなさまマスクを着けていたにもかかわらず笑い声が漏れ聞こえてくるほど爆笑だった会場。一番後ろの席から見ていた足立監督は、「こんなに反応がいいって本当にうれしいです! 阪本監督が別府のお客さんってちょっと海外の人たちみたいで、めちゃくちゃ笑ってくれるよっておっしゃっていた意味がわかりました」とうれしそう。
実はこの日、特別ゲストとしてAmazonプライムで大好評配信中の「バチェラージャパン Season2」ファイナリストの倉田茉美さんも応援に駆けつけてくれていたのですが、「結婚がうまくいくコツを知りたいです」という質問に「どんなにケンカをしても、この男が絶対出ていかないだけ(笑)」と爆笑する奥様に、バツ3の森田と結婚を夢見る倉田さんはケンカしても出ていかない男を探そう!と固く決意したのでした。舞台上でも「あんたのそういうところが本当にダメ!」と奥様からガチダメ出しが始まり、ひたすらへらつき続ける足立監督が面白すぎて、トークショーは爆笑の連続。本当に最高のご夫婦でした!
検温、消毒などコロナ対策と共に開催された映画祭。今振り返ると、今年はコロナで本当に大変な年となりましたが、多くの人に支えられた一年でした。来年は映画館を取り巻く環境がもっと変わっていればいいなと心から思っています!