崖っぷちの実話!1月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、火星探査ミッションに挑む実話を映画化したインド映画、スタントウーマンのドキュメンタリー映画、クリストファー・ランドン監督の新作ホラー映画、チャールズ・ディケンズの半自伝的小説の映画化、菅田将暉&有村架純の共演作。これが1月の5つ星映画5作品だ!
まさかの実話!崖っぷちチームの快進撃が止まらない
『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』1月8日公開
インドを舞台に、実現不可能とされた火星探査ミッションに挑んだチームのまさかの実話を基にした本作は、『パッドマン 5億人の女性を救った男』のアクシャイ・クマールが主人公を演じる。ロケットの打上げ失敗が原因で火星探査プロジェクトという閑職に異動させられた責任者のラケーシュと研究者のタラだが、わずかな希望やチャンスを逃さず、成功率1%以下と言われながらも宇宙への情熱を捨てない。そんな2人のまっすぐな気持ちと姿勢は心に刺さるものがある。しかし、低予算で無謀なプロジェクトに割り当てられたスタッフは、モチベーションが低い“二軍の寄せ集め”。そんなバラバラなチームがあることをきっかけに結束して快進撃を続ける姿は、夢を持つことや諦めないことの大切さを思い出させてくれるはずだ。また、タラと、チームの中心となる女性科学者たちの思いがけないアイデアがひらめく瞬間や活躍っぷりが、心地よい爽快感を生む。(編集部・梅山富美子)
思いがけず涙が込み上げる
『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』1月8日公開
記憶に残る名アクションを生み出してきた、スタントウーマンにスポットを当てたドキュメンタリー。映画を観ているだけでは気付けないアクションシーンの舞台裏を当事者が語り、スタントウーマンの鍛錬や境遇が女性スタントの歴史と共にひも解かれる。ドキュメンタリーでありながら、まるで物語のように速いテンポで話題が移り変わることで、凝縮された84分間に没頭できる。限界に挑む彼女たちに尊敬の念を抱き、死と隣り合わせ故に刻まれた深い悲しみに胸を打たれる一方で、スイッチが入った時の格好良さは別格だ。名シーンを振り返る顔には喜びがあふれ、スタントを心から楽しんでいることが伝わってくる。製作総指揮を務めたのは『ワイルド・スピード』シリーズのミシェル・ロドリゲス。ミシェルは出演もしており、スタントウーマンによる超人的なアクションの裏側を明かしている。(編集部・小松芙未)
女子高生と殺人鬼が入れ替わり!新たな異色ホラー誕生
『ザ・スイッチ』1月15日公開
殺される日を繰り返し描く異色作『ハッピー・デス・デイ』で知名度を高めたクリストファー・ランドン監督が今回挑んだのは、冴えない女子高生と凶悪な殺人鬼の身体が入れ替わるホラー。24時間以内にもとの身体に戻らなければ、一生入れ替わったままという極限の状況下で、女子高生ミリーが、殺人鬼ブッチャーから身体の奪還に挑む。女子高生役のキャスリン・ニュートンと殺人鬼役のヴィンス・ヴォーンが、それぞれ通常と入れ替わり状態の二役を熱演。殺人鬼を演じている時のキャスリンはターミネーターのような冷酷さがにじみ出る一方で、中年のヴィンスが女子高生らしく振る舞う姿に思わずキュンとしてしまう場面も。ミリーが通う学校に置いてある電動ノコギリを使った殺戮など、ブラムハウス・プロダクションズならではのホラー描写も健在だ。『13日の金曜日』『ハロウィン』といった名作ホラーへのオマージュもあり、ホラーファンも楽しませてくれる。(編集部・倉本拓弥)
ディケンズの古典的小説が国際色豊かなキャストで蘇る
『どん底作家の人生に幸あれ!』1月22日公開
チャールズ・ディケンズの半自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」を新たに映像化。不遇続きの幼少期を過ごした小説家が個性的な人々の出会いを経験しながら成長していく。ブラックユーモア満載だった『スターリンの葬送狂騒曲』などのアーマンド・イアヌッチ監督らしく、原作小説のコメディー要素が強調されることで全編が軽やかなテイストに仕上がっている。ヴィクトリア朝の三つの異なる時代を再現した衣装や美術は目に楽しく、時代をこえて愛されるキャラクターたちにふんしたヒュー・ローリー、ティルダ・スウィントン、ベン・ウィショーら実力派たちの共演も見どころ。そして何より、主人公を演じたデヴ・パテルをはじめとする国際色豊かなキャスティングは、多様性という言葉がうたわれる現代にマッチした翻案として一つの理想的な形といえるだろう。作風は穏やかだが、単なる古典の映像化にはとどまらない野心的な試みとなっている。(編集部・大内啓輔)
ありふれた恋なのに切ないのは坂元裕二の脚本だからこそ
『花束みたいな恋をした』1月29日公開
ドラマ「最高の離婚」「カルテット」など、会話劇に定評のある人気脚本家・坂元裕二が、「恋愛自体の面白さ」を描くべく、どこにでもいる20代のカップルを主人公にした本作。終電を逃したことから出会った大学生の男女(菅田将暉・有村架純)が一夜のうちに意気投合し、あっという間に恋に落ちる前半と、結婚や仕事に対する価値観の違いを認識し始め、すれ違っていく後半。ある意味、わかりやすい「恋愛モデル」は滑稽とさえ思えるが、2人の関係を左右する決定的な瞬間の積み重ねに切ない思いがこみ上げてくる。菅田将暉、有村架純のきめ細やかな表情やセリフ回しに引き込まれ、映画を見終えたあともこの2人の行く末に思いを巡らせずにいられないという余韻を残す。男女どちらのキャラクターの視点で観るかによって、解釈が分かれそうなところも坂元脚本の醍醐味。(編集部・石井百合子)