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「銀魂」空知英秋の歴代担当が集合!ぶっちゃけ座談会

『銀魂』

 アニメ「銀魂」シリーズのラストを飾る映画『銀魂 THE FINAL』が公開中。15年続いたシリーズの完結に際し、原作者・空知英秋の歴代担当編集者7人が集い、空知の全面協力の裏側や、編集者から見る作品の魅力について語り合った。(取材・文:編集部・小山美咲)

<「銀魂」振り返り>

「週刊少年ジャンプ」で2003年から連載された空知英秋による人気漫画。2019年に「銀魂公式アプリ」で最終回が配信された。テレビアニメは2006年にスタートし、全4期が放送され、『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』(2010)、『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』(2013)に続く映画3作目『銀魂 THE FINAL』が公開中。連載を終えた空知の全面協力のもと制作され、15年におよぶアニメ「銀魂」がついに完結を迎えた。

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<座談会の参加メンバー>

『銀魂』
写真左から井坂、本田、大西、内藤、松尾、齊藤、真鍋

初代担当:大西恒平(「週刊少年ジャンプ」メディア担当編集長)
2代目担当:齊藤優(「週刊少年ジャンプ」副編集長)
4代目&6代目担当:本田佑行(「週刊少年ジャンプ」編集部主任)
5代目担当:松尾修(「マンガMee」編集部)
7代目&10代目担当:内藤拓真(「週刊少年ジャンプ」編集部)
8代目担当:真鍋廉(「Vジャンプ・最強ジャンプ」編集部)
9代目担当:井坂尊(ジャンプ・コミック出版編集部/「ONE PIECE」メディア担当)

■空知英秋は器が超でかい

『銀魂』

Q:まずは大西さん、空知先生との出会いや先生のお人柄について教えてください。

大西:はい、出会いは20年くらい前……。

井坂:結婚式の馴れ初め紹介かよ!

大西:空知先生が漫画賞に「だんでらいおん」という作品を投稿されまして、まだ入社2年目だった僕が担当することになりました。最初に会ったのはその半年後くらいですかね。雪の降る北海道に行って、そこで初めてお会いしました。「だんでらいおん」は老成した作風だったので、絶対年齢をごまかしていると編集部で言われていたし、僕も疑っていましたが、会ったら確かに若者だったので嘘ではなかったのだと思いました(笑)。

本田:「だんでらいおん」の裏に空知英秋(無職)って書いてあるんですよね。その頃を知っているのはすごいです。

大西:当時は周りの人に言わずにこっそり漫画を描いていたらしく、就職を考えなければいけない時期に最後の望みとして、もしかしたらと投稿した。それが無職という表現になったのかもしれません。

本田:で、空知先生はどういう方なんですかね?

齊藤:器が超でかい。「銀魂」って周知の通り原稿が死ぬほど遅いので、ほかの作家さんだったらあり得ないですが、担当も画を描くんです。で、1回、本当にヤバい時に描き文字……バンッ! とかザンッ! とかいうやつを、アシスタントではなく僕が書いたんですよ。最後に空知先生が原稿チェックしている時に、「おい誰だ、このきたねー描き文字!」とめっちゃ怒って。「それ僕ですね」と言ったら、「齊藤さんかよ。じゃあしょうがねーな」と許してくれたんです。

井坂:それは器がでかいんじゃなくて原稿が遅いだけですよ(笑)。

Q:今回の映画で大西さんが「銀魂」担当に復帰されてどのように関わったのか、空知先生が全面協力することになった経緯を教えてください。

大西:今までは内藤が1人で担当していたのを、僕も一緒にお手伝いするというかたちになりました。僕が担当していたのは、主に映画の宣伝展開を考えたり、そのチェックをしたりということ。空知先生の経緯については内藤の方が詳しいんじゃない?

内藤:そうですね。連載が終わったので、暇だろうということで映画への全面協力が実現しました。当時の空知先生はダイエットしたりしていました。

大西:本当に暇してたの? なんかゴリラの画を描いていたよね?

内藤:普通作家さんが連載を終えると、アニメのキャラクターデザインや、ゲーム関連の仕事、コメントの依頼などが来ますが、空知先生のところにはゴリラにならって鋼のメンタルをゲットしようみたいな本(いっちー著「鋼のメンタルを手に入れる ゴリラ式メタ認知トレーニング」)の表紙を描いてくださいという話しか来ませんでした。

井坂:それが唯一の仕事(笑)。

内藤:ただ、この映画で「銀魂」が本当に終わりなので、最後に何か関わりたいという話もされていたので、原作・空知英秋、作画・空知英秋、声優・空知英秋のようなことができたら面白いのではないかと委員会の人たちと話し、空知先生に全部「いいですよ」とやってもらったという感じです。

Q:スムーズにご協力いただけたのですね。

内藤:声優は一度しぶられました。アニメが始まった頃に空知先生がアフレコスタジオにあいさつに行き、そこで無理くり声を録らされたことがあって……「チーズ蒸しパンになりたい」っていう。あれが本当に嫌だったらしく、今回はちょっとした箇所だけなのでと頼んだら、「俺を騙して何かいろいろ言わせるんだろ」みたいなことを言われ、「絶対そんなことないです」という押し合いはありました(笑)。

大西:当日まで疑ってたもんね。というか、収録後も疑ってた。まさかこれだけじゃないでしょと(笑)。

Q:空知先生が描いた「鬼滅の刃」のイラストが入場特典になったことも大きな話題になりました。

本田:世にいう「鬼滅」への便乗をあそこまで全力で乗りに行ったのは「銀魂」くらいですもんね。

松尾:公式で乗っかるっていう(笑)。

大西:中途半端にやるよりは、あそこまで全力でやった方が「銀魂」らしい。10枚も描いちゃうみたいな。

内藤:全部描いたらデザインの勉強になったと言ってました。

一同爆笑

大西:あと、なんか全部俺の仕業みたいになってない? と心配していました(笑)。

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■「銀魂」の本当の最終回は映画

『銀魂』

Q:映画は原作のラストがベースになっています。完成した作品を観た感想を教えてください。

内藤:僕は12回くらい泣きました。15年続いた作品の最後というのもあるし、漫画で1回読んでいる物語であっても、それを声優さんが演じたり、アニメになって動きがわかったり、漫画にはあまりなかったカットバックが加わっていたり……やはり関わった人間としてはグッとくるものがあって、号泣しました。

本田:漫画の内容は、井坂が担当した時ですね。

井坂:僕は観ながら、この時14時間くらい待ったなとか、この時イベントで宮脇(千鶴)監督に色々聞かれたなとか。「井坂さん、どうなるんですか?」「なんとかなります」「こんなの2時間の尺に入るわけないでしょ」「大丈夫です。いらないところいっぱいあるので」というやり取りを思い出して涙が出てきましたね(笑)。

本田:最終回の近辺で近藤が出てきた時点で「終わるつもりねーな、この人」と思ったと言っていましたね。

井坂:実際、予告していた最終回で終わらず……終わらなかったというかテニプリの歌(許斐剛「テニプリっていいな」)うたってたから、頭おかしいのかなって(笑)。すぐ許斐先生の担当に連絡しました。当時は大西さんと「どうしましょうか」とずっと話していたことを思い出しました。

真鍋:僕が担当の時に本誌で「何月に終わります」と決めたはずだったんです。その頃に井坂さんに交代して、案の定終わらず……。映画を観て刺さるシーンはいっぱいあったのですが、どちらかというと申し訳なさが大きいというか、関わってくれた全ての人たちにごめんなさいという気持ちになりました。

本田:全ての苦しみの根源が自分だったみたいな(笑)。

齊藤:悲しいモンスターを生んでしまった。

本田:松尾さんは観た体でいるけど、まだ観ていないんでしょ?

松尾:ちゃんと観ましたよ! 冒頭の「銀魂」らしいオマージュから始まり、殺陣のシーン、シリアスなシーンと見どころがたくさんあったので、2時間があっという間でした。

齊藤:僕は、最後はこういう話だったんだとようやく本当に理解できた気がしました。本誌で足掛け何年とかけて読んできた物語をきゅっと映画にまとめていただけたので、全体像がコンパクトに入ってきました。

本田:本誌で読んでいた時、僕も頭がすごくこんがらがってて……。文字も多いし、キャラクターも多い。しかも載っている媒体がどんどん変わっていくし。映画を観て初めて「銀魂」ってこういう終わり方したんだとわかりました。よかったです。

真鍋:「銀魂」が好きだった人が観るとやはりグッときますよね。

井坂:そうですね。僕なんか、「銀魂」をめちゃめちゃ好きってわけじゃないのにグッときましたもん(笑)。

齊藤:どのポジションなの?

井坂:担当としてね、あくまで仕事という観点もあるんで。

齊藤:仕事として憎しみが上回ってしまった……?

井坂:なんというか、正直、読者時代も原作をすごく読み込んでいたというわけではないしドンピシャ世代じゃないのですが、映画で観て最後はグッときました。

本田:大西さんはどうなんですか?

大西:担当が代わってからはそんな真剣には読んでなかったので……(笑)。

松尾:みんな読んでない(笑)。

大西:「銀魂」の本当の最終回は、この映画だったんだなと。漫画を読んでいない人でも楽しめると思いました。

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■「俺たちの銀魂」感が魅力

『銀魂』

Q:改めて、空知先生が描く「銀魂」の魅力は?

齊藤:似ている漫画がないということだと思います。

井坂:「俺たちの銀魂」という感じがします。遠くへ行かないというか。汚いこともやるし、ふざけたりもする。それに売れすぎない(笑)。「ONE PIECE」とか「鬼滅の刃」くらいまでいっちゃうと「みんなの」になっちゃうというか。「銀魂」は俺がわかってればいいんだという感じがありますね。

大西:ナンバーワンではないけど、オンリーワン。高級フランス料理というよりは、「くさや」みたいな存在。一度ハマると抜け出せない。

本田:生き急いでいる感もオンリーワン。今この瞬間死んでもいいと思いながら毎週、毎コマやっている感じがする。真面目な展開でもギャグでも、この瞬間打ち切りになってもいいという覚悟を感じて、他の漫画にはないゾクゾク感を味わえる。それはアニメも同じです。

松尾:それに「銀魂」だったら何でもありという前例を作ったのはすごい。担当当時、この案件誰に許可取ったらいいんだろうというケースもありながらやっていました。今回の「鬼滅の刃」もそうなのですが、なんか「銀魂」がやったら許される。先ほどの「俺たちの銀魂」じゃないですが、「銀魂やってくれたな」みたいに受け入れてもらえる。周りを巻き込んで、アメーバのように全部「銀魂」にしちゃうようなところは「銀魂」らしいなと思います。

Q:漫画本編やあとがき等で編集部のことを描かれることも多いですね。

井坂:おまけページはほぼ事実です。

齊藤:嘘は書かれていないですよ。

松尾:止められないんです。コミックスで初めて見るみたいな。

井坂:大西さんがモデルの小西というキャラクターの、同期の吉田に対するコンプレックスも全部本当。向こうは背が高くて、かっこいい漫画を担当して、俺は何でこんな下品な漫画やってるんだみたいなのも全部本当です。

大西:そんなこと話していないんだけど、なぜだかわかってるんだよね(笑)。観察しているんだろうね。

真鍋:担当編集も作品の一部みたいになっていますね。小西つながりで大西さんはすごく読者の方から認知されている。僕が印象的だったのは「大銀魂展」で当時担当だった僕や大西さんが名刺をノベルティとして配った時のこと。大西さんに握手の行列ができて、誇張なしで30人くらい並んでいて、アイドルみたいでした(笑)。

大西:握手をお願いされたから、もちろん喜んでと対応していたら、後でTwitterに「大西がすげー調子に乗ってる」みたいに書かれていて(笑)。いやいや、断る方が調子に乗ってるだろ! 頼まれて一緒に撮った写真も、俺の顔は白目とかでガンガン載っているのに、自分の顔はみんな隠してるという……(笑)。

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■「銀魂」続編の可能性は…

『銀魂』

Q:「銀魂」は本当に終わりなのかというファンの声もあります。新作、続編の可能性は?

内藤:全くわかりません。もし新作があるとしたら、そのジャンプの目次コメントで空知先生が空知先生の言葉で帰還を報告されると思うので、それを待っていただければと思います。

本田:ただ元気にはしているということですよね。

内藤:健康になっています。ダイエットしたので、今は細いです。会っている人だったらわかると思うんですけど、後ろから見ると誰だかわからないくらい。

大西:まあ、続編はないと思いますよ。でも空知さんが何十年後くらいにお金が全くなくなったら……。

松尾:「銀魂2」みたいな(笑)。

大西:「帰ってきた銀さん」みたいな(笑)。いや、けどやっぱりないかな。

本田:あの映画の最後を観たらもうないですよね。皆の心の中に「銀魂」は生き続けるんですよ。

井坂:空知先生は原作の最後のシーンをどうしようと悩み、意識して描かれていたので、皆の中に「銀魂」はあり続けますよということじゃないですかね。

真鍋:『天空の城ラピュタ』を観て、物語が終わってしまうのが嫌だったというのが漫画家を目指したきっかけのひとつですよね。俺を置いていかないでくれという空知さんの気持ち。最後のシーンは確かにそれがすごく反映されていると思います。

大西:ラストで物語が1話の冒頭に戻ったわけだから、円になってそれがずっと永久に続いていくのかなと。

Q:連載が終わり、アニメも完結。今だから言える空知先生への思いは?

本田:言うことないですよね……。

齊藤:実は言えなかったみたいなことが何一つないというか。思ったことは全部本人に言ってますし。

井坂:今まで「銀魂」を描いてくれてありがとうございます。本当に大好きです。この世で一番才能ある漫画家だと思っています。

一同爆笑

井坂:新作を期待しております。

内藤:そのノリ、文字で伝わりますか?(笑)。

井坂:いや、でも本当に色々携わらせていただいたことはありがたかったです。勉強にもなりました。あれ以上辛いことはないだろうという経験もできました。だって終わらないんですもん。ビビりましたからね、まじで。

Q:お次、ご準備できた方からお願いします。

一同沈黙

井坂:いや、僕だけ真面目に答えて恥ずかしいな(笑)。

大西:映画を作ってもらったこと自体、作家も含め制作陣とファンに愛されていたんだなと思います。そもそも空知さんはアニメ化自体、予想もしていなかったので、それをこういうかたちできちんと最後までやってもらえたことには、本当にアニメ制作陣の愛情を感じました。

齊藤:ここまで振り回されるとは思っていなかったでしょうからね。

大西:そこまで付き合ってもらえたのは、空知さんの人徳なのかな。しょうがないから付き合ってやるか、と思わせられるものがあったのではないでしょうか。

本田:僕が担当していた頃に、アニメ制作陣が「最後まで付き合いますよ」と言ってくれていました。そんなこと言って大丈夫なのかな、そんなことできるわけないと思っていたのですが、本当に最後までやり切っていただけたので、それはすごいし、ありがたい。普通じゃできないですよね。

井坂:もう空知先生への言葉ではなくなっている(笑)。

本田:アニメ制作陣には感謝がいっぱいです。皆さんのおかげです。

井坂:関係者の皆さん、本当にありがとうございました! 空知先生も感謝しとけ!

(C) 空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

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