エディ・マーフィはもうすぐ還暦にして現役コメディー王!
あの人は今
エディ・マーフィの人気作『星の王子ニューヨークへ行く』(1988)が続編として33年ぶりに帰ってくる! 近年はかつてほどの出演本数はないとはいえ、1980年代からハリウッドを代表するコメディアン&俳優として君臨してきたエディ。その輝かしい経歴を振り返っていきましょう。(文・岩永めぐみ)
10代でサタデー・ナイト・ライブのレギュラーに
15歳頃には自分のネタを書き、スタンダップコメディアンとしてコメディークラブの舞台に立っていたエディ・マーフィ。人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」のオーディションを受け、レギュラー出演がスタートしたのは1980年、エディが19歳のときでした。
この頃、超過激なネタで人気を博していたエディですが、それらの中には現在なら問題になるような差別的な表現を含むネタも。エディはのちにニューヨークタイムズ紙のインタビューで、当時のネタについて引け目を感じていることを告白しています。
コメディアンの本領を発揮して映画でもヒット連発!
1984年までSNLに出演する一方、多くのスタンダップコメディアンが辿ってきた俳優の道へと進みます。1982年、21歳のときに『48時間』(1982年)で俳優デビュー。ニック・ノルティ演じる刑事とバディを組む囚人の役で、続編も作られました。さらに『大逆転』(1983)、『ゴールデン・チャイルド』(1986)、『星の王子ニューヨークへ行く』(1988)などが次々に大ヒット。1992年には、マイケル・ジャクソンの楽曲「リメンバー・ザ・タイム」のミュージックビデオで古代エジプトの王にふんするなど、まさに時代の寵児といった活躍でした。
なかでも『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズ(1984、1987、1994)は、記念すべき初主演映画にして代表作。もともとシルヴェスター・スタローン主演で製作が進められていましたが、エディに白羽の矢が立てられ、彼が演じた破天荒な刑事アクセル・フォーリーは当たり役となりました。これらの作品でエディは、スタンダップコメディー仕込みのマシンガントークでせりふをまくしたて、誰にも真似のできないパワフルな演技で観客を笑いの渦に巻き込み、世界的なコメディースターの座をゆるぎないものにしたのです。
10人もの子どもがいるビッグダディ!
一方、私生活では10人の子どもの父親でもあります。1988年に出会ったモデルのニコール・ミッチェルとは同棲を経て1993年に結婚していますが、彼女との間に長女ブリア、三男マイルス、次女シェイン・オードラ、三女ゾラ・アイヴィ、四女ベラ・ザハラの5人の子どもたちが誕生。また、なんと妻が長女を産んだ同年にガールフレンドのポーレット・マクニーリーとの間に長男が誕生していて、彼女との間には長男エリックと次男クリスチャンという2人の息子がいます。
ニコールとは2006年に離婚しますが、数か月後には元スパイス・ガールズのメルBことメラニー・ブラウンとの交際が発覚。破局後に、五女エンジェル・アイリス・マーフィ・ブラウンが誕生します。ところが、エディが「誰の子どもか分からない」と言い放ったことから騒動に発展。DNA鑑定の結果、エディの子であることが分かり、それを認めました。
その後も、2012年から交際していた18歳年下のモデル、ペイジ・ブッチャーとの間に六女イジー・ウーナと四男のマックス・チャールズが生まれています。ちなみに、57歳で10人目のマックスが生まれた5か月後には孫娘のエヴィが誕生し、おじいちゃんになったそう。ヴァニティ・フェア誌のインタビューでは「僕の人生の中心は家族と子どもたち」と語っていて、まるで映画に登場するような賑やかで幸せな家族であろうことが想像できます。
落ち目のスター役で初のアカデミー賞ノミネート
若い世代を中心に超売れっ子になったエディですが、1990年代からは『ナッティ・プロフェッサー』シリーズ(1996、2000)や『ドクター・ドリトル』シリーズ(1998、2001)、ドンキーの声を担当したアニメ『シュレック』シリーズ(2001、2004、2007)のようなファミリーコメディでヒットを重ねます。とくに、エディといえば『星の王子ニューヨークへ行く』などでもみせた特殊メイクを駆使して一人で複数の役を演じる百面相が得意ですが、『ナッティ・プロフェッサー』シリーズでは一作目で7役、二作目では8役と演じ分け、ファンを驚かせました。
そんな過去の人になりつつあったエディが定着したイメージを一新、新境地を開いたのが『ドリームガールズ』(2006)でした。エディが演じたのは、R&Bの大物歌手。時代遅れとなってしまい、ドラッグに溺れていくという役どころで、“ファンクの帝王”ことジェームス・ブラウンをモデルにした人物でした。ミュージシャンでもあるエディは迫力あるパフォーマンスをみせる一方、傲慢かつ悲劇的な人物になりきった演技で賞レースを席巻。ゴールデン・グローブ賞や放送批評家協会賞などの助演男優賞を獲得し、アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされました。しかし翌年、そんなせっかくの名演を自ら水の泡にしてしまいます。製作・原案・脚本・出演(3役)を担当した『マッド・ファット・ワイフ』(2007)でゴールデン・ラズベリー賞7部門にノミネート、エディはワースト主演男優賞、ワースト助演男優賞、ワースト助演女優賞の三冠を達成するという不名誉な記録を打ち立てたのでした。
『星の王子ニューヨークへ行く2』でアキーム王子にまた会える!
『ドリームガールズ』で再ブレイクが期待されたエディでしたが、『マッド・ファット・ワイフ』のあとも『デイブは宇宙船』(2008)など主演作の低評価が続き、出演本数もすっかり減少気味に。しかし、そんな停滞していたエディに、2015年、うれしい知らせが舞い込みます。コメディー界最高の栄誉とされるマーク・トウェイン賞が贈られることになったのです。賞を授与したジョン・F・ケネディ・センターは「映画ビジネス史上、商業的に最も成功したアフリカ系アメリカ人の俳優で、ボックスオフィスの歴代トップ5に入る役者」とエディを称えました。また、2019年にNetflixで配信された『ルディ・レイ・ムーア』で、1970年代に下品な芸風で一世を風靡した実在のコメディアン兼俳優ルディ・レイ・ムーアを演じたエディは、ゴールデン・グローブ賞の男優賞(コメディー/ミュージカル部門)にノミネートされました。
そして、来たる3月5日には『星の王子ニューヨークへ行く2』が Amazon Prime Videoで独占配信されます。33年ぶりの続編となり、エディは今年(4月3日)で60歳。本作ではエディ演じるザムンダ王国のアキーム王子が、ニューヨークに息子を探しに行く(?)という設定になっています。エディのちょっと天然な王子様っぷりやファンを驚かせるような変身など、コメディー王の活躍が今から楽しみです!