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リア充裁判って?奇妙すぎる物語集

世にも奇妙な君物語

 『桐島、部活やめるってよ』『何者』の朝井リョウによる原作を「べっぴんさん」の渡辺千穂が脚色、1話完結のオムニバスとして映像化した「WOWOWオリジナルドラマ 世にも奇妙な君物語」。全5話のドラマにはそれぞれ黒島結菜葵わかな佐藤勝利田中麗奈上田竜也と豪華な顔ぶれが主演を果たす。リア充裁判、恐ろしすぎるシェアハウス……5つの物語は予想もつかない結末へと駆け抜ける。現代の日本を生きる若者や社会でもがく大人たちのリアルな心情をさまざまな角度からすくいとった個性的で奇妙で、よくよく考えるとじんわりと恐いストーリーの数々は、それぞれに見応えたっぷりだ。

ステキなシェアハウスの恐ろしすぎる正体「シェアハウさない」

世にも奇妙な君物語

 フリーライターになって初めて特集の企画が通り、有頂天の田上浩子。祝杯気分で向かった居酒屋で酔いつぶれ、見知らぬ大人の女性にそっと介抱されてそのまま彼女の自宅に。そこは年齢もバラバラな社会人ばかりの男女4人が暮らすシェアハウスだった。「シェアハウスが本当にシェアしているものはなにか?」という今回の企画にピッタリ、ツイてる! と喜ぶ浩子は、近々空き室が出ることを知って入居を直談判、潜入取材を決行する。しかし入居者の様子はどこかおかしい。彼らは、ある目的のために共同生活をしていた……。

 バカ高い家賃を払わずに居心地のよい住空間を確保でき、孤独に陥ることなく、ラッキーに恵まれればステキなお友達もできるかも!? 入り口は、チマタで流行りのシェアハウス。でもいざ暮らすとなると、他人と暮らす煩わしさはつきもののはず。なのになぜ、シェアハウスに暮らすのか? 「そこには共有したいなにかが存在するのでは? そのなにかを知りたいの!」と浩子は熱心に語る。

 そんな主人公を黒島結菜が素直に演じ、観る側は自然と感情移入していく。やがて理由の見えない違和感がぱんぱんに膨れ上がったころに物語は急転直下、驚くべきラストへなだれ込む。果たして、演じる黒島自身が「予想を裏切られた」と感じた結末とは?

リア充であることが、人としての価値を決める!?「リア充裁判」

世にも奇妙な君物語

 18歳以上の就労前の市民から無作為に対象者を選出、実技と質疑応答でコミュニケーション能力を計り、合格すれば履歴書にも書ける正式な資格ーー「コミュニケーション能力促進法」が成立した世界。生真面目な女子大生の谷沢知子は“リア充裁判”にかけられることに。知子の脳裏には、弁護士を目指して勉強に打ち込んでいた姉が、リア充裁判にかけられて徹底的に打ちのめされた姿がよみがえる。知子は緊張した面持ちで法廷に立つが……。

 つまりは、まぎれもなく近未来SF! けれど知子が通うのはごく普通の大学で、学生もイマドキにチャラチャラしたりキラキラしたごく普通の男女。そんな彼らが“リア充裁判”こと「能力調査会」でSNSにアップした画像、例えば旅先での出会いの記録や、友達とのコメントのやりとりを提示。それをもとに、裁判官が彼らのコミュニケーション能力をジャッジする

 世界中の不特定多数と一瞬で繋がれるけど、そのつながりはあまりに薄~く儚くて手応えがないような気もする。そもそもこれってコミュニケーションって言える!?ーーすっかり普及したSNSへ多くの人が抱くはずの違和感をズバっと突いた構成。そのなかで、ひっつめ髪にリクルートスーツ姿で、緊張に身を固まらせる知子をNHK連続テレビ小説「わろてんか」の葵わかなが演じる。知子は、姉のリベンジなるか?

理想に燃える幼稚園教諭とボスママとの静かなバトルの勝敗は?「立て! 金次郎」

世にも奇妙な君物語

 金山孝次郎はエプロン姿も初々しい幼稚園教諭。ハイソなボスママから、「孝次郎先生はいいですね~、いつもハキハキにこにこで。先生に会うと元気になるわ」とか言われる、若さゆえのやる気に満ちた先生でもある。運動会が近づくある日、孝次郎は先輩教諭から、園児の名前と行事名で表組みされた「年間行事役割分担表」を渡される。それは1年間でどの子も2回は、行事の中で“輝くように”という配慮のための指針だった……。

 孝次郎を演じる佐藤勝利が「奇妙な中に温かさのあるストーリー」と語る1本。舞台はよくあるフツーの幼稚園。「大人が平等に与えるチャンスなんて意味ない」と食ってかかる孝次郎と、「正論ね。でも幼稚園の行事なんて親のためにあるの」とバランス感覚を優先させようとする先輩教諭との教育に関するやりとりが続く。

 冒頭、「歩きながら本を読んだら危ない。子どもがマネするかもしれない」とイスに座った姿に作り変えられた二宮金次郎の銅像が登場する。どの世界でも忖度が過ぎるとなんか、コント? みたいな気になる。果たして運動会で、ボスママの息子を立たせるのか、まだ今年活躍してないけど、運動は苦手な男子になんとか花を持たせるか。孝次郎、どうする?

世にも恐ろしい破滅は、無邪気な顔でやってくる「13.5文字しか集中して読めな」

世にも奇妙な君物語

 ネットユーザー向けのニュースライターとしてバリバリ働く本田香織。別の会社で社内報づくりをする夫と協力し合い、まだ幼い一人息子を育てていた。ある日、「しばらく残業が続く」と言い出した夫の浮気を疑った香織は、彼の財布を開き、レシートをチェックする。翌日、同僚の元カレから食事に誘われた香織は、忘れていたトキメキを覚える。

 “13.5文字”とは、記事の冒頭につけるキャッチコピーの文字数。香織は日常的に文章を書く人間で、ふだんから目についたもの、ちょっとした心の動きを無意識に13.5文字で言い表すのがクセ。同性に好かれる女上司、同僚の元カレへの心情、夫の浮気疑惑、なんでも頭の中で短く言い切り、どことなく上から目線で、物事を鋭く切り取っていると思い込んでしまっている。そこがミソ。そうして息子がずっと楽しみにしていた授業参観の日がやってくる。

 香織役の田中麗奈は「とにかく刺激がいっぱいで、ただただ演じていて楽しかった」と振り返る。そしてこの回も、後半は怒涛の展開。あれよあれよで香織は恐ろしい事態に陥る。「自覚なく奇妙な物語への道筋を歩いている人間の様子をご覧頂きたいです」と田中。彼女が演じると、明るいコミカル風味がプラスされるようで、それもまたこの役にふさわしい。

脇役を知り尽くすことが、この生き残りの鍵!?「脇役バトルロワイアル」

世にも奇妙な君物語

 学園モノのドラマや映画の主演を何度も務めて順風満帆だった10代を過ぎ、しだいに主役は減って、すれ違う一般人から「あああの人! 名前なんだっけ!?」とか言われちゃう微妙なランクの俳優、淳。「もう一度這い上がりたい」と、大物演出家による新作舞台の最終オーディションへやってくる。集まったのは年齢も性別もキャリアも個性もバラバラな6人、けれど不思議なことに、そこにいる全員がどこか主役っぽくない。しかも演出家の姿は見当たらない。淳は客席に、ステージ上の自分たちを撮影するビデオカメラを見つける……。

 この回はまず、キャスティングが肝。脇役としての互いの環境に深く共感しながら世間話をするうち、気づけば主役の座を巡る壮絶なバトルロワイアルが始まっている。もうひとつの肝はオーディションという名の、生き残りゲームのルール。「過去に重たいモノを背負っている主人公の友人役で、説明セリフばかりを言わされる」とか、脇役としての愚痴の言い合いはそのまま“脇役あるある”ネタ。同時に、シャレの効いたルールとしても機能する。

 淳を演じる上田竜也の迷いのないやさぐれ感、過去のイケてたころもまた振り切っていていい味。淳は生き残れるのか? 最後まで、なんともシャレが効いている。(文・浅見祥子)

「WOWOWオリジナルドラマ 世にも奇妙な君物語」(全5話)は3月5日(金)より放送・配信スタート、WOWOWプライム・毎週金曜深夜0:00(※第1話無料放送)
公式サイト>>

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