東日本大震災から10年の記憶と記録を映す映画
東日本大震災から10年の節目を迎えようとしています。生活基盤の整備や産業再生など、復旧復興に懸命に取り組んでいる多くの方の努力を感じるうえで、また震災の記憶と記録を忘れないため、震災にまつわる作品を紹介します。
亡くなった人に手紙をしたためることで一歩を踏み出す人々
『漂流ポスト』(公開中)
2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市にある「漂流ポスト」を舞台にした短編のドラマ。親友を亡くした主人公が、震災で亡くなった人への思いをつづった手紙を投函できる漂流ポストの存在を知る。監督は、震災後長期ボランティアに参加していたという『瞬間少女』などの清水健斗。出演は雪中梨世、『ナラタージュ』などの神岡実希、中尾百合音ら。
被災地三陸の人々の生きざまを10年にわたり撮り続けた真実の記録
ドキュメンタリー『たゆたえども沈まず』(公開中)
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県の被災地の10年間を追ったドキュメンタリー。テレビ岩手が取材を続け、津波の被害から街が復興していく様子を見つめた定点観測映像など、およそ1850時間に及ぶ映像を通じ、過酷な現実に翻弄(ほんろう)されながらも必死で生きる人々の思いや、岩手の復興の姿を紡ぐ。『山懐に抱かれて』などの遠藤隆が監督を務め、『里山っ子たち』などの語りを務めてきた湯浅真由美がナレーションを担当する。
原発事故によって、人生が大きく変わってしまった農家、酪農家を描く
『サマショール ~遺言 第六章』(公開中)
福島第一原子力発電所の事故で、避難指示が出された福島県飯舘村を取り上げたドキュメンタリー。東日本大震災から6年が過ぎ、故郷で放射能と共に生きようとする人々を映し出す。前作『遺言 原発さえなければ』でも組んだ、フォトジャーナリストの豊田直巳と野田雅也が監督を務めた。
福島第一原発で史上最大の危機に立ち向かった50人
『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』(公開中)
多くの関係者への取材を基に書かれた門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を実写映画化。世界を震撼(しんかん)させた東日本大震災による福島第一原子力発電所事故発生以降も現場に残り、日本の危機を救おうとした作業員たちを描く。『64-ロクヨン-』シリーズなどの佐藤浩市、『明日の記憶』などの渡辺謙らが出演。『沈まぬ太陽』などの若松節朗がメガホンを取り、ドラマシリーズ「沈まぬ太陽」などの前川洋一が脚本を務めた。
映画『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』公式サイト
ご注意:以下の動画には津波のシーンがあります。
東京2020オリンピック聖火リレースタート地点に暮らす人々の営み
『春を告げる町』(公開中)
東日本大震災の発生直後に全町避難となった福島県双葉郡広野町にフォーカスしたドキュメンタリー。東京オリンピック聖火リレーのスタート地点になっている「ナショナルトレーニングセンター Jヴィレッジ」があるこの町に暮らす人々の営みを映す。プロデューサーとして『桜の樹の下』も手掛けている『ドコニモイケナイ』などの島田隆一が監督・撮影・プロデューサーを担当した。
福島いわき市を舞台に新人フラガールたちの成長と絆を描く
アニメ『フラ・フラダンス』(初夏公開)
福島県いわき市を舞台に、フラガールを目指すヒロインと仲間たちの成長を描くアニメーション映画。主人公の新人フラガールの声を、“まいんちゃん”の愛称で親しまれる福原遥が担当。総監督は「鋼の錬金術師」「機動戦士ガンダム00」シリーズなどの水島精二、監督は「アイカツスターズ!」「ガンダムビルドダイバーズ」シリーズなどの綿田慎也。脚本を、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズや映画『若おかみは小学生!』などの吉田玲子が務める。
岩手県大槌町、遠野市の、血のつながりのない家族たちの共同生活
アニメ『岬のマヨイガ』(2021年公開予定)
居場所を失った17歳の少女と、海の見える古民家“マヨイガ”に暮らす人々との不思議な共同生活が描かれる。監督は「のんのんびより」シリーズや「サクラダリセット」などの川面真也。脚本を、『けいおん!』『映画 「聲の形」』などの吉田玲子が手掛ける。制作は、「ジョジョの奇妙な冒険」「はたらく細胞」などのアニメ制作会社david production。ナレーションを、岩手県出身の久慈暁子(フジテレビアナウンサー)が務める。
東日本大震災の被災地・盛岡を舞台に、孤独な男の影の深みにはまる
『影裏』(2020)
『日本で一番悪い奴ら』などの綾野剛と『舟を編む』などの松田龍平が共演した、沼田真佑の小説が原作の人間ドラマ。主人公が失踪した親友を捜すうちに、彼の闇の部分に踏み込んでいく。監督は『るろうに剣心』シリーズなどの大友啓史。『よこがお』などの筒井真理子をはじめ、中村倫也、平埜生成、國村隼、永島暎子、安田顕らが共演する。
電話線はつながっていないがその先には話したい大切な人がいる
『風の電話』(2020)
岩手県大槌町に設置された、会えなくなった人に思いを伝えるための「風の電話」を題材に描くロードムービー。東日本大震災で家族を失った主人公が、さまざまな人と接した後に風の電話を訪れる。主人公を『恋恋豆花』などのモトーラ世理奈が演じ、ドラマ「就活家族 ~きっと、うまくいく~」などの三浦友和、『任侠学園』で共演した西島秀俊、西田敏行らが出演。監督は『M / OTHER』などの諏訪敦彦が務める。
ガレキから探し出された家族写真に被災者の思いを知る
『浅田家!』(2019)
第34回木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志の著書「浅田家」「アルバムのチカラ」を原案にした人間ドラマ。家族写真を撮りながら成長していく主人公の姿を描く。監督を『湯を沸かすほどの熱い愛』などの中野量太が務め、脚本は『乱反射』などの菅野友恵と中野監督が共同で担当。主人公を『母と暮せば』などの二宮和也、その兄を『悪人』などの妻夫木聡が演じる。
被災した海沿いの街を舞台に、生き続けることの意味を問う
『生きる街』(2018)
2011年の東日本大震災をテーマにしたヒューマンドラマ。震災後すれ違う家族が、韓国人青年との再会を機に変化していく。メガホンを取るのは、『捨てがたき人々』『アリーキャット』などで監督としても活躍する俳優の榊英雄。数多くの出演作を持つ夏木マリ、ロックバンド「CNBLUE」のギター&ボーカル担当のイ・ジョンヒョンらが出演。
喪失感や葛藤を抱えながら、懸命に新たな一歩を踏み出す被災地の人々
ドキュメンタリー『一陽来復 Life Goes On』(2017)
岩手県、宮城県、福島県を舞台に、東日本大震災を経て手探りで前進しようとする人々の姿を追ったドキュメンタリー。家族を亡くした夫婦をはじめ、語り部として震災を語る者、伝統を守り抜こうとする農家などそれぞれの復興の形をカメラが映し出す。『サンマとカタール 女川つながる人々』などに携わってきた尹美亜が、初監督を務める。
震災を経た日本の現在と未来を語り合うドキュメンタリー
『friends after 3.11【劇場版】』(2011)
独特の映像世界で定評のある岩井俊二監督が、東日本大震災後に出会ったさまざまな立場の友人たちと、震災を経た日本の現在と未来を語り合うドキュメンタリー。311後原発問題に関心を持ったという女優の松田美由紀をナビゲーターに迎え、震災後ツイッターなどを通じて出会った友人や学識者たちに取材を敢行。「原発のウソ」の著者である小出裕章、元東芝・原子炉格納容器設計者の後藤政志、『ヒバクシャ 世界の終わりに』などの鎌仲ひとみ監督ら多彩な立場の人々が語る言葉が胸に響く。
映画『friends after 3.11【劇場版】』公式サイト
震災の2週間後に撮影を敢行したドキュメンタリー
ドキュメンタリー『311』(2011)
2011年3月11日に発生した東日本大震災の2週間後、ジャーナリストや映画監督たちが被災地へ入りその様子を記録したドキュメンタリー。『「A」』『A2』の森達也と安岡卓治、『がんばれ陸上自衛隊@イラク・サマワ』の綿井健陽、『花と兵隊』松林要樹の4人が共同監督という形で参加し、福島、宮城、岩手を襲った惨劇の爪あとを撮影。数値を上げる放射能測定器、傷つく被災者にもカメラを向け、生々しい様子をカメラにとらえた。大震災の記録としての重要性がありながら、メディアのあり方についても考えさせる。