初めてのドキュメンタリー映画制作は限界との戦い!
まほの別府ブルーバード劇場日記
みなさんこんちには! 別府ブルーバード劇場をお手伝いしている森田真帆です。何と! 一緒に別府ブルーバード劇場をお手伝いしている彼氏のひろきくんと、映画作りに挑戦!! 以前短編映画作りを頑張った私たちですが、今回はまさかの84分。寝ずに作ったこちらのドキュメンタリー映画の制作裏話をどうぞ!(文・森田真帆)
初めてのドキュメンタリー映画制作
きっかけは本当に突然。昨年12月、THEATRE for ALLという配信サイトで配信される、別府ブルーバード劇場で行われた「十人十色映画祭」についてのドキュメンタリー映画を作ることが決定したのです。2月7日に別府ブルーバード劇場で行われた十人十色映画祭に参加してくれるドラァグクイーンと90歳になる岡村照館長との交流を追いかけるという内容。THEATRE for ALL という配信サイトがオールアクセリビリティ(視覚障害、聴覚障害などどんな人でも観られる作品)という条件があるので、映画オリジナル版のみならず、日本語字幕版、英語字幕版、英語ボイスオーバーを作り、さらには映画のために知識を深めるラーニング動画、その動画の日本語字幕版、手話通訳付きというバリアフリーにも対応した計6本を作り、2月22日には納品しなければならないため、制作期間は本当に少なーい! 2月7日のイベントから14日でドキュメンタリーを作る!? いろんな映画監督さんに相談したけど「無理すぎるって!」と言われてしまった。でもなぁ、せっかくのチャンスだし、自分たちの大好きな別府ブルーバード劇場、照館長、そして毎年映画祭を助けてきてくれたドラァグクイーンとのお話は絶対に作りたい! ということで、森田の彼氏でもあり、一緒に別府ブルーバード劇場を手伝っているひろきくんと初めて映画制作に挑戦することになったのです。
ドラァグクイーンたちが語ったそれぞれの過去
ドキュメンタリーを撮ろうということになり、最初にとりかかったのはテーマを決めること。数年前から別府ブルーバード劇場を盛り上げてくれているドラァグクイーンたちと、彼らを孫のようにかわいがっている照館長との絆を通して、誰もが自分自身でいられる場所について、みんなが考えてくれるきっかけになるような作品を作ろうと決めました。そして次にすることとして、みんなのことをたくさん知ることと決めました。メイクをして、いつも明るい笑顔でパーティーを盛り上げてくれているドラァグクイーンのみなさん。素顔の彼らは、男性として男性を好きだというゲイとして生きてきました。よく考えたら、いつもみんなとわいわい騒いでばかりだったから、みんなの人生のこともゲイとしての悩みもあまり聞いたことがなかった。彼ら一人一人の人生の話を、ちゃんとじっくり聞いていきたいと思いました。
話してくれたのは、虹子ロンドン、ぽり美、バブリーナ、ブルボンヌ、ナナ・ヴィクトリア、パルプ、ドリアン・ロロブリジーダ、ベビーヴァギー、レスペランザという9名のドラァグクイーンと、ゲイのエンターテインメント業界で活躍しているインフルエンサーのEIGHT。それぞれが語ってくれた過去、ゲイとして生きてきた中で直面した苦悩、そして人生の話。全てが本当に貴重で私たちが知らなかったことばかり。そして照館長自身も、差別をしない考えをどう持ったかをたくさん話してくれて、十人十色の物語に進むべき道がみえてきました。
終わらない編集作業は頑張り続けるしかない
十人十色映画祭という素晴らしい3日間のイベントを終えた私たちですが、膨大な量のインタビューを目の前に、ただただボーゼン。これをあと10日で編集作業を終わらせて、さらには日本語字幕に回し、英語のボイスオーバーをつける!? 考えただけでも気の遠くなる作業ですが、2人でやれば大丈夫! と、ひろきくんとパソコンを並べて編集作業に入りました。2人で分担して編集作業を進めていきますが、なかなか終わらないし、慣れない編集作業が本当に大変。そもそも2人とも本格的な映像の編集なんてしたことがないし、あれ? 何がどうしてこうなったのか!? と混乱しまくりながら、動画の編集を進め、3時間ほど頑張っても気付いたら、10秒分しか進んでないことが判明して絶望する。の繰り返し! それでも10日後の納期は迫ってくるし、1日は24時間しかない。気づけば16時間ぶっ通しで編集していることもあって、思わずとんだブラック企業だぜ! と叫びました。だけど、よく考えたらボスは自分自身。何度も何度も寝落ちしながら、この編集作業を繰り返し、気付けば座椅子でそのまま爆睡していることも。風呂も入れず、ご飯も食べられずだったけど、できないから投げ出すことは絶対にしたくないとひたすら頑張り続けました。よく考えたら、どんな大物監督だって、最初の映画は初めての経験。めっちゃくちゃ大変だったけど、最悪に大変で最高な経験になったことは間違いないです。
多くの人に助けてもらった映画制作
この映画は、本当に多くの方々の助けなしでは完成しませんでした。毎日風呂に入ることもできずにひたすら編集を続けている私たちに、いつも差し入れをしてくれるお友だちのみんな。そして撮影のことも何もわからない私たちに、いろんなアドバイスをしてくれたカメラマンさん。映画と一緒に鑑賞をするラーニング動画を作成してくれることに協力してくださったブルボンヌさん、そしてブルボンヌさんが率いる新宿2丁目のバーで働くLGBTQ+のメンバーたち。その動画に手話通訳を付けてくださったLGBTQ+当事者でもあるモンキー高野さんと、パートナーのらーちゃん。多くの人が私たちのプロジェクトに共鳴してくれ、一緒に仕事をしてくれたことがすっごくうれしくて、いろいろ考えました。
そして忘れられないのが、英語字幕監修とボイスオーバーを担当してくれたラフィ&ラモンのカップルです。別府に暮らしているゲイカップルの2人は、私たちがドキュメンタリーを作っていると知った瞬間に「どんなことでも手伝う!」と言ってくれた人たちです。日本語から英語訳はLGBTQ+という立場からの繊細さも考えなければならないので、とても困っていました。さらにボイスオーバーでは、ストレートの俳優にドラァグクイーンならではの話し方をしてほしいこともあり、フェミニンな英語を話すラフィはまさにぴったり! 2人には、出来上がってきた英語訳を最初から最後までチェックしてもらい、何度も何度もアフレコをして朝の3時になっても文句を言わず最後まで一緒に戦ってくれました。多くの人の力を借りて作ったこの映画は、できないことなんてないんだって心から思えた作品でした!