『奥様は、取り扱い注意』綾瀬はるか 単独インタビュー
人にどう思われたいかを意識しない
取材・文:磯部正和 写真:奥山智明
2017年にオリジナル脚本で連続ドラマ化された「奥様は、取り扱い注意」の劇場版である本作。ドラマ版は、元凄腕の特殊工作員という過去を隠し、専業主婦として暮らしていた綾瀬はるか演じる伊佐山菜美に、夫である勇輝(西島秀俊)が銃を向けるというショッキングなところで終了したが、その後を描く映画版では、さらなる衝撃的な展開が待ち構えている。ドラマ版から歳月が流れたなかで、綾瀬はどんな気持ちで映画の撮影に臨んだのだろうか。
激しいアクションシーン満載の台本に緊張感!
Q:2017年のドラマ放送終了から、少し時間が空きましたが、映画化の話はドラマ撮影時からあったのでしょうか?
もともと、映画化の話はドラマをやっているときからあったのですが、少し時間が空いたので「あれ、もしかしたらなくなってしまったのかな?」なんて思いがありながらの時間でした。
Q:その間、ほかの作品の撮影もあったと思いますが、常に本作は頭のなかにあった状態だったのですか?
そうですね。やっぱりアクションがかなり重要な作品でもあるので、ほかの作品を撮影しながらも、基本的にはしっかり体幹を鍛えていなければという気持ちで、トレーニングはしていました。
Q:綾瀬さんの言葉通り、アクションシーンはかなりパワーアップしていました。台本を読んだときはどんなお気持ちでしたか?
アクションって一歩間違うと怪我に繋がってしまうので、かなり緊張感が伴うんです。台本を読んで、そういうシーンが結構あったので、気を引き締めていかないといけないな……という思いと、楽しみだなという気持ちが混在していました。
ドラマ版とは違ったキャラクターを演じる難しさ
Q:アクション以外で難しさを感じたところは?
菜美は記憶喪失になっているという設定だったので、ドラマ版で見せた天真爛漫で好奇心が旺盛、そして正義感に溢れる女性から、記憶がなく自分が分からなくなってしまっているところへのキャラクターの違いをどうやって表現したらいいのかは、不安でした。
Q:「ホタルノヒカリ」など、連続ドラマが映画になる経験は過去にもあったと思いますが、本作は綾瀬さんにとってどんな位置づけの作品になっていますか?
テレビドラマで自分が特殊工作員で、旦那さんが公安という設定を聞いたときから、なかなかない役柄なので、面白いなと思っていました。それが映画化され、さらにスケールアップするというのは、とても嬉しいし、楽しみでいっぱいでした。
兄妹喧嘩のようになんでも言い合えた西島秀俊とのアクションシーン
Q:西島秀俊さんとの共演もドラマ以来でしたね。
今回はドラマ以上に、一緒にアクションをするシーンが多かったんです。敵と戦う共闘シーンでは「ちょっとタイミング合わせてください」というと、西島さんも「それはお前の方だよ!」なんて兄妹喧嘩しているような感じで楽しく撮影させていただきました。
Q:西島さんもアクションはお手のものなので、頼もしいですね。
西島さんとはこの作品以前に、大河ドラマ(「八重の桜」)でも共演していたのですが、そのときから仲が良かったので、遠慮せずにいろいろなことを言い合えました。安心感も信頼感もある方で、とても心強かったです。
Q:映画版オリジナルキャストの岡田健史さんとの共演はいかがでしたか? 岡田さんもアクションシーンがあるなど、物語に重要な役割でしたね。
岡田さんは野球をやっていただけあって、アクションシーンでの体の使い方がとても上手でした。「たくさん練習したの?」と聞いたら「それほどやっていないです」って話していたので、すごく呑み込みが早い人なんだなと驚きました。
Q:岡田さんと対峙するシーンは、西島さんとの関係性の違いなどは意識したのですか?
岡田さんは、いろいろな裏設定があるようだったのですが、どちらかというと異性という関係性よりは、年の離れた同性の友達みたいな感覚で接していました。役柄については、作品を観ていただいてのお楽しみで(笑)。
人として強く、大きな愛を持って日々生活すること!
Q:クライマックスに向けてのアクションシーンは、すごかったです。
物語上、とても大切なシーンで、緊張感はすごかったです。船の上で戦っている設定だったのですが、美術さんがかなり足場を改良してくれて、結構広いスペースでアクションができたんです。でも、お互い本番になるとギアが入ってしまい、練習以上のものが出てしまうので、結構危険なことがありました。妥協しないで納得いくまで何度もやらせていただけたので、すごく良いシーンになっていると思います。
Q:相当ハードな撮影だったのではないですか?
撮影が始まってその世界観に入っていくと、無我夢中になってしまうので、良いテンションが保てるんです。割と撮影中は疲れを感じないでずっといい状態でいられました。でも終わると本当にクタクタになってしまいます(笑)。
Q:近作はかなりアクションシーンが多い作品も続いていますが、いつもどんなモチベーションでお芝居を続けているのですか?
一番は台本をもらったときのワクワクですね。その感覚がすごく好きなんです。逆にそのワクワクがなくなってしまうと辛くなっていくんだろうなとは思っています。あとは「綾瀬はるかにこういう役をやらせてみたい」と思っていただける方の期待に応えたいというのは、結構大きなモチベーションにはなっています。
Q:製作陣にそう思ってもらえるために心掛けていることはありますか?
自分自身は、人として強く大きな愛を持って生活していこうという思いだけですね。それを周りの人が見て、どうジャッジしてもらえるのか。あまり人にどう思われたいという意識はないです。
映画は、ドラマ版の衝撃のラストから話が展開するため、ネタバレに注意しながらの取材となった。しかし、劇場版でのインタビューがこの日初めてということで「これはしゃべって大丈夫なんでしたっけ? ダメ? 難しいですね。ごめんなさいね」とバラエティー番組や舞台あいさつで見せるほんわかしたイメージそのままの受け答えをする綾瀬。一方、ハードなアクションへの冷静な視点や、仕事に対する考え方を的確に語るなど、短時間でも“人間的深み”に脱帽させられてしまうひとときだった。
映画『奥様は、取り扱い注意』は3月19日より全国公開