役者人生の集大成!4月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、バカンス気分が味わえるロマンチックコメディー、松山ケンイチ主演最新作、ニューヨークが舞台のクライムアクション、本好きのためのドキュメンタリー、『るろうに剣心』シリーズ最終章の二部作第一弾。これが4月の5つ星映画5作品だ!
完璧ではない登場人物たちがいとおしい
『パーム・スプリングス』4月9日公開
カリフォルニアの砂漠リゾート地パーム・スプリングスでの結婚式の日、ガールフレンドの付き添いで参列したナイルズと花嫁の姉サラが、謎のタイムループに巻き込まれたことから始まるロマンチックコメディー。妙に気が合う二人は同じ1日の繰り返しでもその中に楽しさを見いだし、思いつく限りバカなことをやってみるが、果たして明日が来ない日々に意味はあるのか? それぞれに秘密を抱えた二人が自分の人生を見つめ直す中でそれぞれの決断へとたどり着くさまがいとおしく、ヒューマンドラマとしても秀逸だ。人気コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身で大げさな演技が似合うアンディ・サムバーグだが、ナイルズ役で見せる繊細な表情もいい感じ。パーム・スプリングスの明るい日差しがキラキラと降り注ぎ、鮮やかなプールにカラフルな浮き輪、美しい結婚式にナイルズのアロハシャツと、コロナ禍で長い間お預けになっているバカンス気分も味わえる。(編集部・市川遥)
アンチボクシング映画とも言うべき人生賛歌
『BLUE/ブルー』4月9日公開
この映画を観ると序盤で誰もが思うはずだ。「この男は、なぜボクシングを辞めないのか?」と。本作は、その答えを知るためのストーリーと言ってもいいかもしれない。監督は、『ヒメアノ~ル』『犬猿』などを手掛け、30年以上ボクシングを続けてきたという吉田恵輔。ボクシングを知っている監督だからなのか、例えば『ロッキー』シリーズのようにわかりやすく感動的な展開がないところが特徴であり、魅力でもある。松山ケンイチ演じる主人公・瓜田はジムの中で誰よりも努力するが、チャンピオンに近づく後輩の小川(東出昌大)はおろか、不純な動機でボクシングを始めた新人の楢崎(柄本時生)にさえ追い越されていく。それでも笑顔を絶やさない瓜田の心情は語られず、観客は彼を見る小川や楢崎の反応で想像を巡らすことになる。それゆえ終盤に瓜田が小川に吐露する言葉はショッキングだ。終始、受けの演技に徹しながら、観る者に爪痕を残す松山の名演は19年の役者人生の集大成といっても過言ではない。(編集部・石井百合子)
演技派チャドウィック・ボーズマンの新境地
『21ブリッジ』4月9日公開
ニューヨーク・マンハッタンにある21の橋を封鎖し、警察官殺しの犯人確保に全力を注ぐ刑事の姿を描くクライムアクション。警察官だった父親を殺された過去を持つ主人公・デイビス刑事役を務めるのは、昨年8月に逝去したチャドウィック・ボーズマンさん。マンハッタン全面封鎖という大胆な設定もエンターテインメント性が高い。またチャドウィックさんも、犯人確保に燃える刑事を力強くかつ繊細に好演。今やオスカーノミネートの演技派として知られる彼が製作から携わり、リアルなNY市警刑事を体現しており、チャドウィックさんの魅力を余すことなく引き出したブライアン・カーク監督の手腕も見事。製作には『アベンジャーズ』シリーズのアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が名を連ね、二人が得意とするポリティカルな要素が物語にひねりを加えた。先の見えない展開のドラマはもちろん、NY市内で繰り広げられるアクションシーンも本格的で王道エンタメ作品としても申し分ない。(編集部・倉本拓弥)
本を愛する人々の知られざる情熱
『ブックセラーズ』4月23日公開
世界最大規模のニューヨークブックフェアに集うブックセラーたちの思いを通して、本という文化にフォーカスしたドキュメンタリー。軽快なリズムの音楽にのせて本を愛する人々の世界を表現したシーンや、デジタル化の波によってすたれていく本の行く末を考察するシリアスな描写も逃さない力作。独特の重厚感にあふれる古書の歴史や近年の変化を語るブックハンター、ブックセラー、コレクターたち。それぞれの知られざる情熱に教わることも多く、裏側を知ることで、これまで何気なく買っていた本に愛着が増す。マーティン・スコセッシ監督によるNetflixドキュメンタリー「都市を歩くように -フラン・レボウィッツの視点-」などで知られる辛口作家、フラン・レボウィッツも登場。彼女の皮肉交じりのユーモアが全編のアクセントになっている。胸が踊るような驚きに満ちた希少本や美しい装丁の数々を見るだけでも楽しい意欲作だ。(編集部・小松芙未)
おかえり剣心!期待値を超える『るろ剣』待望の新作
『るろうに剣心 最終章 The Final』4月23日公開
和月伸宏の人気コミックを主演・佐藤健で実写化したシリーズの待望の新作。穏やかに暮らしていた緋村剣心(佐藤)が、最凶の敵・雪代縁(新田真剣佑)との激突を余儀なくされ、剣心の過去と頬に刻まれた十字傷の謎が明かされていく。メガヒットシリーズ約7年ぶりの新作として、いやがおうでも高まったファンの期待値を軽く超える作品に仕上がっている。佐藤健をはじめ、武井咲、青木崇高、蒼井優、江口洋介らおなじみのキャストたちの『るろ剣』へのカムバックの感慨にふけっているような暇はない。冒頭からの全開アクションにガツンと頭を殴られ、一気に物語に引き込まれていくからだ。「日本映画でもここまでできる」と言わしめる“るろ剣アクション”はさらにレベルアップしており、迫力に圧倒される。またひとつ日本映画を進化させたキャスト、スタッフの“るろ剣愛”に心からありがとうございますを言いたい。(編集部・海江田宗)