ヘイデン・クリステンセンはダース・ベイダーで再ブレイクするか?
あの人は今
『スター・ウォーズ』のスピンオフ・シリーズ「オビ= ワン・ケノービ(原題) / Obi-Wan Kenobi」で再びダース・ベイダーを演じることが決まったヘイデン・クリステンセン。『スター・ウォーズ』新三部作でブレイクした後から現在に至るまで、ヘイデンが何をしていたのか振り返ってみましょう。(文・平沢薫)
8歳から俳優への道をまっしぐら
ヘイデンは『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)公開まで、まったく無名だったわけではありません。この映画の前に出演した『海辺の家』(2001)で、ケヴィン・クラインが演じる疎遠だった父親との関係を築いていく少年の心の動きを繊細に演じて注目されました。本作でゴールデン・グローブ賞と全米俳優組合賞の助演男優賞にノミネートされ、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞のブレイクスルー演技賞を受賞。『スター・ウォーズ』への出演が発表されたのはそれと同時期のことでした。ひょっとしたら『スター・ウォーズ』に出演しなくても、ヘイデンはそのまま演技派俳優への道を歩んでいたかもしれません。
もともとヘイデンは、幼い頃から俳優への道を歩んできました。彼は1981年4月19日、カナダのバンクーバー生まれ、トロント郊外のマーカム育ち。ヘイデンは4人兄弟の3番目で、兄トーブ、姉ヘイサ、妹ケイランがいます。
両親は芸能業界とは無縁でしたが、家族そろってスポーツ好きなことが、ヘイデンの俳優への道を切り開きます。ヘイデンはテニスとホッケーが得意ですが、姉のヘイサはトランポリンが得意。ニューヨーク・タイムズ・マガジンによれば、ヘイサが子供の頃にトランポリンのチャンピオンになり、親がその関係でエージェントに会いに行ったとき、子守がいなかったのでヘイデンも連れて行ったことから、ヘイデンにもエージェントがつくことになり、ヘイデンは8歳でCMに出演、12歳でテレビシリーズ「Family Passions」「E.N.G.」などにゲスト出演するようになったのです。
そして、翌年の1994年、13歳でジョン・カーペンター監督の映画『マウス・オブ・マッドネス』(1994)の小さな役でハリウッドに進出。ソフィア・コッポラ監督『ヴァージン・スーサイズ』(1999)やテレビドラマなどの出演を経て、『海辺の家』(2001)でのゴールデン・グローブ賞ノミネートとなったのでした。
『スター・ウォーズ』で大ブレイク!
そして、純粋な青年アナキンがダース・ベイダーになるまでを演じた『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)が大ヒット。その間も、実話に基づく社会派映画『ニュースの天才』(2003)に主演。三部作後も、シエナ・ミラー主演の『ファクトリー・ガール』(2006)、ジェシカ・アルバ共演のSFサスペンス『アウェイク』(2007)、レイチェル・ビルソン共演のSFアクション『ジャンパー』(2008)とハリウッドの大作エンタテインメント映画が続きます。
この頃の彼は人気者。2002年のピープル誌が選んだ「世界で最も美しい人」、2005年の「最もホットな独身男性人」にランクインするなど、若手俳優の中でも抜群の注目度を誇っていました。しかし、次第にヘイデンの心境に変化が起こり始めたようです。
カナダに農場を買って一休み
2007年にヘイデンは母国カナダのオンタリオ州に農場を購入。『ジャンパー』公開時のトロント・スター紙のインタビューで「これは趣味だけど、僕は本物の農夫に見えるようになりたいんだ。農場は僕の聖域なんだ。大工仕事もタイル貼りも、なんでも自分自身でやろうとしている」と熱っぽく語っていました。そして、しばらく、ハリウッドから距離を置くようになります。そして2010年以降、『ザ・レジェンド』(2014)まで、出演作がまったくない状態となりました。
それも無理はないかも知れません。ヘイデンが『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』に出演することが報じられた2000年5月、彼はまだ19歳。突然の名声に対処するのは、簡単なことではなかったでしょう。ちなみに旧三部作第1作『スター・ウォーズ』公開時に主演のマーク・ハミルは26歳。続三部作となる『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のキャストが発表された2014年、主演のデイジー・リドリーとジョン・ボイエガは22歳。彼らに比べても、ヘイデンは若かったのです。
レイチェル・ビルソンと婚約&娘誕生
またこの頃、ひょっとしたらヘイデンは私生活面でも一休みしたくなっていたのかもしれません。2007年に『ジャンパー』での共演した、テレビドラマ「The OC」のレイチェル・ビルソンとの波乱含みの交際を始め、2008年の2人が27歳の時に婚約、2010年に破局しますが翌年復縁。そして2014年に娘ブライヤー・ローズが生まれますが、2017年にまた破局。結局、結婚はしないまま現在に至ります。
ピープル誌にレイチェルの関係者が語ったところによれば、破局の原因はレイチェルが友人たちと出掛けることを大切にしているのに、ヘイデンは非社交的だったからだとか。ヘイデンは、パーティーよりも農場で作業している方が好きだったのかもしれません。カップルとしては破局しましたが、娘の両親としての関係は維持しているようで、3人で公園にいる姿などが何度もパパラッチに撮影されています。
2013年に活動再開!やりがい重視の作品選び
そんなヘイデンはしばしの充電期間を経て、2013年に兄トーブと一緒に制作会社グレイシア・フィルムズを設立しました。この会社はヘイデン主演のアクション『クライム・スピード』(2014)やイライジャ・ウッドが主演し、ヘイデンが製作総指揮に名を連ねたホラー・コメディー『ゾンビスクール!』(2014)などの製作を手掛けています。
ヘイデンが復帰後に出演した作品は話題作や大作ではありませんが、共通しているのはベテラン俳優たちと共演していること。『クライム・スピード』(2014)でエイドリアン・ブロディ、『ザ・レジェンド』(2014)でニコラス・ケイジ、『ファースト・キル』(2017)でブルース・ウィリス、『ハッピー・シェフ! 恋するライバル』(2018)でダニー・アイエロ、『ラスト・マン 地球最後の男』でハーベイ・カイテルと共演しています。これらの大先輩たちとの共演こそ、彼がやりたかったことなのではないでしょうか。
ヘイデンにとって『スター・ウォーズ』シリーズとは
『きみが還る場所』(2015)に出演した際、LAタイムズ紙の取材に対し「『スター・ウォーズ』は僕に大きなものを与えてくれたと思います。機会もキャリアも。でも、なんだか少し与えられすぎているように感じられたんです。波に乗せられているようで、そんなふうに感じながら生きていきたくはないと思いました。そして、数年の休みをとることに魅力を感じました。それが自分のキャリアにダメージを与えるなら、そうなればいい。もしその後でこの世界に戻れたら、その時には何かを手に入れたと感じられるんじゃないかと思った」とも語っています。
そして、ヘイデンは再び『スター・ウォーズ』の世界に復帰することになります。『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)後のオビ=ワン・ケノービを描くテレビシリーズ「オビ= ワン・ケノービ(原題) / Obi-Wan Kenobi」の製作が決定。オビ=ワン役は映画同様ユアン・マクレガーが演じ、ヘイデンもアナキン役で出演することになりました。ダース・ベイダーとなってから10年後という設定だということです。
ダース・ベイダーになったばかりのアナキンには、どんなドラマがあったのでしょう。それを『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』公開から16年の歳月が経ち、今や39歳になったヘイデンはどう演じるのでしょう。2020年10月に出演が発表された時、ヘイデンは公式サイトStarwars.comで「アナキン・スカイウォーカーを演じるのは、驚異的な旅のような体験でした。もちろん、最後に会った時、アナキンとオビ=ワンは最高のコンビではありませんでしたが……。素晴らしい監督のデボラ・チョウが僕らをどう描くのか興味深いし、ユアンとまた一緒に仕事をするのが待ちきれません。戻ってきたことを気持ちよく感じています」と語っていました。今度は自ら望んで『スター・ウォーズ』世界へ戻ってきたヘイデン。この経験を経て、また新たな活躍を繰り広げてくれそうです。