実生活で夫婦の二人がニーガンとルシールを熱演するシーズン最高の感動作!
今週のウォーキング・デッド
「ウォーキング・デッド」シーズン10の追加エピソードも、今回でついに最終回。第22話「ここにニーガンあり」はまさにタイトル通りの物語! ニーガンの魅力がたっぷり詰まってる!(平沢薫)
※ご注意 なおこのコンテンツは「ウォーキング・デッド」シーズン10について、後半の「もう観ちゃった方向け」はネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。
今週のウォーキング・デッド~シーズン10第22話
<これから観る方向け:ネタバレなし>実生活でも夫婦の2人が、ニーガンと愛妻ルシールのドラマを熱演!
キャスティングが発表された時から話題になっていたのが、このエピソード。ニーガン(ジェフリー・ディーン・モーガン)が愛し、自分が愛用する有刺鉄線を巻き付けたバットにも同じ名前をつけた彼の妻、ルシール(ヒラリー・バートン)が初めて画面に登場する。この人物を演じるのが、ニーガン役ジェフリーの実生活の妻である、テレビドラマ「リーサル・ウェポン」などの女優ヒラリー・バートンなのも話題を集めた。ニーガンとルシールにはどんなドラマがあったのか。それがこのエピソードで明らかになる。
監督は、シーズン9第15話から参加して、 本作でシリーズ6話目の登板になるローラ・ベルシー。脚本は、シーズン2から時々参加し、本作でシリーズ13話目になるデヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック。ジェフリー・ディーン・モーガンの熱演が、ニーガンの心理の動きを鮮やかに描き出す。
<もう観ちゃった方向け:ネタバレあり>ニーガンの2つの誕生ストーリーが、予想を超える感動を与えてくれる
ニーガンと妻ルシールの物語が描かれると報じられた時から、感動作になることは決まっていた。ニーガンはすでに作中で、妻への愛と、それゆえ愛用バットに彼女の名前をつけたこと、その妻はがんで死去したことを語っていたからだ。今回のエピソードは、そうしたこれまでの情報を踏まえた感動的な物語でありつつ、さらに予想を超える感動を与えてくれる。
それはまず、このエピソードが2つのオリジンストーリーを描いているからだろう。その1つは、妻を愛する男ニーガンが、なぜ“聖域”の独裁者的な支配者ニーガンになったのか、という誕生ストーリー。これが描かれることは予測されていた。しかし、さらにもう1つの誕生ドラマが描かれることは予期していなかった。それは、現在のニーガンが、過去の自分の弱さを認め、新たなニーガンに生まれ変わるという誕生ストーリーだ。
1つ目の誕生ドラマは予測通りの王道の展開で、わかっていても泣ける感動のストーリー。そして2つ目の誕生の演出も印象的。一人、集落から離れた小屋で暮らすことになったニーガンの前に、聖域の支配者だった頃のニーガンが現れる。このかつてのニーガンのたたく軽口は、やっぱりカッコイイ。一瞬、ニーガンは元に戻るのだろうかとも思わせる。しかし、このニーガンに現在のニーガンはこう言い放つ、「お前は道化だ」。そして、愛用バットのルシールを探し出し、妻の死から逃げた自分の弱さを認め、妻に謝罪して、かつて妻を燃やしたのと同じようにバットを燃やす。そして、新たな自分に生まれ変わるのだ。
この大きなドラマ2つに加えて、興味深いエピソードも続々と明らかになる。ニーガンが高校の体育教師だったことが判明。また、ニーガンを象徴するアイテム2つ、黒の皮ジャンと愛用バットの来歴が描かれるのも心憎い演出だ。皮ジャンには妻との思い出があった。そして、バットに巻かれた有刺鉄線には、ニーガンの心情が反映されている。この有刺鉄線は、妻を守ために家の柵に巻き付けられていたもの。妻を守れなかったニーガンが、代わりにバットを守るかのように有刺鉄線を巻き付けていくシーンも切ない。
加えて、ニーガンの妻ルシールの性格も魅力的だ。彼女は、かつてのニーガンよりも精神的に強かった。がんを正面から受け止め、夫の浮気を知っても夫の本来の姿を信じる。ニーガンの暴力の被害者についても「自業自得」と言い切る。そんな彼女の個性を知ると、ニーガンが愛用バットに彼女の名前をつけたのは、彼女を愛していたからだけでなく、彼女に見守っていてほしかったからではないかとも思えてくる。
そんなニーガンの魅力全開エピソードだが、シーズン最終話にふさわしく、ラストは次のシーズン11につながっていく。生まれ変わったニーガンはコミュニティーに戻り、するとかつて彼に夫を殺されたマギー(ローレン・コーハン)が冷たい目で見つめる。この2人はどんな形で向かい合うことになるのか。それが描かれるシーズン11は、全米では本年8月22日に放送スタート。日本上陸が今から待ち遠しい。