【ネタバレあり】地獄の王「LUCIFER/ルシファー」の魅力振り返り特集
2016年から米FOXで放送され、シーズン3で終了になるはずだったが、ネットで続行を希望するファンたちの運動が盛り上がり、シーズン4からNetflixで配信されることになったのも話題を集めた、地獄の王「LUCIFER/ルシファー」。ロサンゼルスでバケーション中の悪魔が、女性刑事と組んで殺人事件を解決していくという、ちょっとぶっとんだコミカルなミステリーシリーズ「LUCIFER/ルシファー」は、シーズン5後半が5月28日に配信スタートする。その前にルシファーの魅力を振り返っておきたい。(文/平沢薫)
地獄王「LUCIFER/ルシファー」って何?
このシリーズの基本をサクッとおさらい。「LUCIFER/ルシファー」は、地獄を支配するのに飽きて地上にバケーションにやってきた悪魔ルシファー(トム・エリス)が、LA市警殺人課の刑事クロエ(ローレン・ジャーマン)と組んで事件を解決していくというシリーズ。悪魔や天使は出てくるけれど、ドラマは軽くてコミカル、ルシファーの際どいジョークもたっぷり。基本的に1話完結で気楽に楽しめるシリーズだ。
2016年から米FOXで放送され、シーズン3で終了になるはずだったが、ネットで続行を希望するファンたちの運動が盛り上がり、シーズン4からNetflixで配信されることになったのも話題を集めた。現在はシーズン5前半まで配信中。
サブキャラたちも、ルシファーの兄で真面目な天使のアメナディエル(D・B・ウッドサイド)、ルシファーと一緒に地獄からやってきた魔物美女メイズ(レスリー・アン・ブラント)、ルシファーのセラピストのリンダ(レイチェル・ハリス)など曲者揃いだが、中でもユニークなのはルシファーのキャラクター。その魅力をシーズンごとに再確認しよう。
シーズン1:バケーション中の悪魔はファッショナブルでモテモテ
このドラマの主人公ルシファーは、地獄を統治するのに飽きて、ロサンゼルスでバケーション中の悪魔ーーだが、見た目は人間。長身の細マッチョなボディに、男性服飾雑誌のグラビアのような高級スーツを着こなし、人気ナイトクラブのオーナーでお金持ち。そのうえ"悪魔の能力"ゆえに、見つめると誰もが彼に夢中になる。口にするのは、ちょっとアブナいセクシーなジョークばかり。そんなルシファーの典型的なプレイボーイぶりは、見ているだけで楽しい。最初は子供が苦手で、「犬」と混同しているのか、犬に棒を投げて取ってこさせるのと同じように、子供のおもちゃを遠くへ投げたりする様子も笑える。
そんな彼が、刑事クロエには自分の魅力がまったく通じないことを知って興味を抱く。しかし、ルシファーと彼女の関係がなかなか進展せず、シリーズを通して、ルシファーは彼女に惹かれていきながら少しずつ人間らしい感情を持つようになっていく。シーズン1では、ルシファーがそんな自分の感情の変化に、自分で驚いて面白がるところが見もの。例えば酔ったクロエに手を出さないという「善行」をしたときに快感を覚えて驚き、「慈善家を哀れんでいたが、彼らには秘密があった、善行は気持ちがいい」と宣言。そして「合成麻薬みたいだ、ちょっと違うけど」と続くのがルシファー流だ。
クロエ(ローレン・ジャーマン)
ロサンゼルス警察殺人課の刑事。ルシファーが捜査に協力する。19歳の時にB級映画『ホットタブ・ハイスクール』に出演してヌードになったことがある。なぜか彼女と一緒にいるとルシファーの能力がまったく効かず、普段は銃弾を受けても無傷なのに、彼女と一緒だと負傷するようになる。
シーズン2:悪魔なのに、家族問題に悩みまくり!?
ルシファーのプレイボーイぶりも際どいジョークも変わらないが、彼の家族問題が続出して、ルシファーの人間と同じような感情が描かれて、なんだか憎めない奴に見えてくる。
まず地獄に閉じ込められていたルシファーの母親が現れて、ルシファーが母から受けた心の傷が判明。セラピーでの「どん底な経験は母に捨てられたこと。その仕返しに僕も母を捨てた。どんな反論も言い訳にはならない」という言葉からも、実は母が大好きなことがバレバレ。また、母の裸を見てしまい「永遠のトラウマになった」と少年のようなことを言ったりもする。また、ルシファーを地獄に戻らせようとする兄の天使アメナディエルや、弟の天使ウリエル(マイケル・インペリオリ)との兄弟喧嘩も人間っぽい。
またシーズン第1話で披露するルシファー の歌声も悪魔的な魅力がたっぷり。歌詞が聖書の「イザヤ書」に基づくボブ・ディランの曲「見張り塔から」という選曲も悪魔にぴったり。ルシファー役トム・エリスのvulture でのインタビューによれば、ある日、彼と一緒にカラオケに行った製作者たちが彼の美声に驚き、それから彼が歌うシーンが出来たそう。歌唱シーンは数回あり、シーズン4第1話ではレディオヘッドの名曲「クリープ」を熱唱。エリス自身のカラオケでの得意曲は米R&B歌手ウィルソン・ピケットの1966年のヒット曲「ムスタング・サリー」だそう。
ママ/シャーロット(トリシア・エルファー)
ルシファーや兄弟たちの母。元夫である神によって地獄に閉じ込められていたが脱出し、殺された直後の弁護士シャーロットの身体に憑依する。地上の生活には不慣れで、ルシファーに助けを求めてやってくる。内心では、元夫を天国から追放して、天国で子供たちと一緒に暮らしたいと考えている。
アメナディエル(D・B・ウッドサイド)
ルシファーたち兄弟の長兄で、天使。ルシファーとは正反対の真面目な性格。シーズン1から登場、地上でバカンスを楽しむルシファーを地獄に連れ戻すため、地上にやってくる。シーズン2では、なぜか天使の能力を失っていき「オレは堕ちた」と悩む。
シーズン3:悪魔の顔になれずアイデンティティの危機!? しかもクロエには恋人が!?
ルシファーは相変わらずイケイケのプレイボーイだが、自分が善なのか悪なのか葛藤したり、クロエと新任のピアース警部が親しくなるのを見て心乱れたり、彼の複雑な心理が描かれて内面的な魅力がアップ。
ルシファーは、前シーズンのラストで何者かに誘拐され、気づくとかつて切り取った背中の翼が復活。その頃、巷で善行する天使が目撃され、ルシファーは自分が睡眠中に善行をしているのではないかと疑う。さらに、なぜか"悪魔の顔"に変身出来なくなり、その理由が分からず悩みまくる。
そして、クロエとの恋愛には大きな変化があり、第23話でやっとお互いを認めてキスをする。しかし第25話ラストでは、ルシファーが取り戻した"悪魔の顔"を、クロエが見てしまうという大事件が。ルシファーは大慌てだが、彼女がどう反応するのかは次のシーズンへの持ち越しとなる。
ちなみに、このシーズンは遊び心のあるエピソードも見もの。第11話は2011年に遡り、クロエがまだ制服警官だった頃のドラマ。第26話は「もしクロエの父親が生きていたら」というパラレルワールドの物語だ。
ピアース警部補/カイン(トム・ウェリング)
クロエの上司に転勤してきたイケメン警部補。実は、弟アベルを殺した史上初の殺人者カイン。何千年も地上をさまよい続ける苦痛から逃れるため、死ぬのが望み。ルシファーを惑わそうとクロエに接近するが、クロエのことを愛するようになる。
リンダ(レイチェル・ハリス)
精神科医でセラピスト。シーズン1から登場、ルシファーが患者として何かと悩みを相談する。最初はルシファーが治療費の代わりにセックスをしていたが、後にセックスなしの関係に。シーズン3では、ルシファーの兄アメナディエルと交際するようになる。
シーズン4:今度は姿が悪魔化!天使の翼がコウモリの羽に!
ルシファーが自分の本性について悩み、クロエとの関係について悩み、最後に新たな顔を見せるのがこのシーズン。前シーズンのラストでカインに「お前も俺と同じだ」と言われて、"悪魔の顔"を取り戻したルシファーは、どんどん姿が悪魔化し、ついには真っ白な翼がコウモリの羽のような形に変化してしまう。
一方、クロエは、前シーズンでルシファーの"悪魔の顔"を見て動転し、悪魔を信じる狂信的な牧師に影響を受けてしまい、ルシファーは彼女に拒否されたと思って距離を置く。そんなルシファーの前に、エデンの園で恋人だったイヴ(インバー・ラヴィ)が出現し、心は揺れる。ルシファーがイヴにそそのかされて、昔のような遊び人ぶりを発揮するのも楽しいところ。
しかし、ルシファーは、最後にはクロエの言葉で自分の本当の顔を取り戻す。そしてクロエのため、魔物たちの地上への流出を防ぐために地獄に戻ることを決意。ルシファーがクロエに「運命の人は君だった、最初から」と告白するシーンの、いつものプレイボーイぶりとはまるで違う真剣な表情は、ルシファーの新たな魅力だ。
イヴ(インバー・ラヴィ)
エデンの園にいたときのルシファーの元カノ。アダムの相手として造られたが「アダムとは仲良くやってたけど、彼は本音の私を愛してない」と言い、ルシファーとよりを戻そうとする。ルシファーを自分のものにするため、地獄から魔物ドロモスを召喚する。
シーズン5前半:イケイケな地獄の魔王に復帰! 再び地上へ
前シーズンのラストで地獄に戻ったルシファーだが、自分そっくりの双生児の弟ミカエル(トム・エリス2役)からクロエを救うため、あっさり地上に復帰。またイケイケな悪魔ぶりを発揮する。
クロエとの関係も大進展、第7話でついにクロエと結ばれる。シーズン4から地上波ではなく配信になったせいで可能になった、セクシーなシーンも見もの。その後、クロエがルシファーの魔力のマネをして「本当の望みは何か」と聞くと、本音で答えてしまい、自分の能力がクロエに転移したのではないかと慌てるルシファーもキュート。このデレデレな顔はシリーズ初?
また、このシーズンもユニークなエピソードあり。第3話はルシファーをモデルにしたTVドラマ「ディアブロ」の撮影現場が舞台という凝った設定。第5話はルシファーがクロエの娘に語る物語という枠組みで、1946年のニューヨークの暗黒街を描くモノクロ映像のフィルムノワール調の作品。おなじみの面々が、別の役柄で登場するのも楽しい。
そしてドラマにはサプライズが。弟ミカエルが、兄アメナディエルの息子を巻き込むある計画を画策したことから、兄弟ゲンカは激化。シリーズ前半の最終話、第8話のラストは兄弟3人が翼を広げ、本気で戦いそうになったところで「もうやめろ」と声が。なんと、これまで姿を見せなかった兄弟の父が出現! 今度は父子ゲンカか!? この続きは、5/28配信開始のシーズン後半で描かれる!
ミカエル(トム・エリス2役)
ルシファーの双生児の弟。外見はルシファーにそっくりだが翼の色は異なり、ルシファーの翼は白いが、彼の翼は黒い。また真実しか言わないルシファーと違って、ウソを言うのが得意。ルシファーのふりをしてクロエに接近するが、すぐに偽物だと見破られる。
ーーと、どんどん怒涛の展開になってきた「ルシファー」は、現在配信中のシーズン5に続く、シーズン6がファイナル・シーズンになることが発表済み。シーズン5第9話~第16話が本年5月28日に一挙配信、ファイナル・シーズン全10話が2021年配信になる。
ここにきて、ルシファーの双生児の弟、大天使ミカエルや、ルシファーの父である"神"という強力キャラを登場させたからには、ここからはこれまで以上に壮大なスケールのドラマが描かれるのに違いない。果たして、ルシファーは地獄の王に戻るのか。もしそうだとしたら、彼とクロエとの恋はどんな結末を迎えるのか。まずは5月28日配信のシーズン5後半が見逃せない。