るろうに剣心『The Beginning』観たら最高傑作だった!
提供:ワーナー
佐藤健が主演を務めるアクション大作『るろうに剣心』シリーズのラストを飾る『最終章』2部作。第1弾『るろうに剣心 最終章 The Final』は4月23日に公開され、冒頭から一気に観客を物語に引き込む緊張感と全編につまったワクワク感、さらなる進化を遂げた“るろ剣アクション”で観客を魅了し、本年度実写映画ナンバーワンのオープニング興行収入を記録しました。
剣心、薫をはじめとするおなじみのメンバーとのスクリーンでの再会、東京を総攻撃する雪代縁の最恐っぷり、剣心の妻だった謎の女性・雪代巴の登場など見どころをあげればキリがない作品です。「あ~、『The Final』面白かった。『るろ剣』最高! 大満足!」と思っていたのもつかの間、シリーズのラストを飾る『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が6月4日に公開されます。ひと足先に本作を観させていただいたのですがシリーズ最高傑作といっていい作品に仕上がっていました。(編集部・海江田宗)
■キャスト・スタッフはこのために10年やってきた!
まずなぜ最高傑作と言い切れるのか。そこにはスタッフ・キャストの10年の思いが結集しているからです。『The Final』にも共通して言えることですが、コミックと実写の間で絶妙なバランスを取ったキャラ設計、きめ細かくリアルな美術セット、高くなったハードルを軽々と超えてくるアクション、キャラクターが憑依したかのような役づくり、一つ一つのシーンから伝わってくる熱量がハンパじゃありません。日本映画という枠を超えて、関わる人たちの意地をそこに見ることができます。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の舞台は、これまでのシリーズから時間を遡り動乱の幕末へ。映画全体を幕末特有の“暗黒さ”が覆いつくし、下手に動くと自分が斬られるかのような緊張感が漂っていました。今まで観てきた映画『るろうに剣心』とはひと味違い、ただならぬ雰囲気のなかに“人斬り抜刀斎”時代の剣心が登場し、誰も知らなかった剣心の過去が描かれていきます。主演の佐藤健が「このエピソードを撮らずに人生を終えることはあり得ないと思うほど、どうしてもやりたい作品でした」とコメントしている通り、強い思い入れが佐藤の俳優としての「覚悟」に変わったかのように、鬼気迫る芝居が「佐藤健」と「人斬り抜刀斎」の境目をなくしていました。
ストーリーの鍵を握るのは、剣心の十字傷に深く関わる女性・雪代巴です。佐藤は2012年公開のシリーズ第1作『るろうに剣心』の撮影初日から、剣心がどう生きてきたのかを想像し、剣心の過去を背負いながら常に巴のことを想い続けて芝居をしてきたそう。10年にわたって剣心とともに旅をしてきた佐藤の巴への想いが、一つ一つのシーンに凝縮されています。佐藤の中からゆっくりとにじみ出てくる巴への想い。佐藤が剣心として生き、どれだけ巴を想い、丁寧にその想いを積み重ねてきたのかを感じずにはいられませんでした。
佐藤とともにシリーズを成功に導いた大友啓史監督も「十字傷の謎、それに触れずして絶対にシリーズは終われない。シリーズ開始当初から、我々の意識の先には常にこの作品がありました」と語るほど『The Beginning』には特別な思いを持っており、「積み重ねてきた十年に渡る私たちの時間の結晶と、剣心と巴との生命の燃焼の物語」と作品について説明しています。その言葉通り、すべてのシーンに隙がなく、一切の妥協がない撮影現場だったことが映画を観ればわかります。『るろうに剣心』を愛して真剣に向き合ったスタッフたちの完璧な仕事ぶりを理解するためには一回の鑑賞ではとても足りず、「今回は衣装」「次は美術」「その次はヘアメイク」と注目ポイントを変えて何度も観たくなりました。(佐藤健、大友啓史監督のコメントは本作のオフィシャルインタビューより)
■『るろうに剣心』最大の謎が明らかに!
剣心の巴への思い、スタッフ・キャストの『るろ剣』への思いが集約されているだけでなく、これまでのシリーズに散りばめられていた「剣心の謎」が最後の作品『The Beginning』でついに解き明かされます。剣心が抱えてきた過去は想像以上に壮絶かつ残酷。そして、その中に圧倒的な美しさがありました。謎につつまれた過去を知って納得すると同時に、剣心が選んだ生き方への感動が押し寄せてきます。
伝説の暗殺者“人斬り抜刀斎”の迫力は圧巻です。剣心が「不殺(ころざず)の誓い」を立てる前、人の命を奪うことにまったく躊躇のない太刀さばきは恐ろしく、これまで観てきた剣心とは別次元にいます。まるで人間界をさまよう悪霊のようにも見えました。これほどまでに人々から恐れられた男が、なぜ斬れない刀“逆刃刀”を手にし、「不殺の誓い」を立てたのか。鵜堂刃衛、瀬田宗次郎、志々雄真実といった強大な敵に対峙する時、その誓いは剣心自身を縛る枷(かせ)となることもありました。それでも守り続けた剣心の「不殺の誓い」の理由が明かされます。「不殺の誓い」は剣心にとってどんなものだったのか、単に「人を殺さない」というだけでなく、より深い、剣心が歩んでいく人生への決意がそこに込められていました。
そして剣心の頬に十字傷が残り続けるのはなぜか、なぜ決して消えることのない傷がついたのか。それには剣心の運命を変えた女性・巴が深く関わっており、『The Beginning』では剣心と巴の出会いから始まる、二人を中心としたエモーショナルな人間ドラマが展開されます。剣心と巴が寄り添って過ごす日々はつつましくも懸命で、剣心の表情の変化が強く心に残ります。なのに、二人の日々につきまとう儚さのなんと悲しいことか……。剣心が自らの手で惨殺することになる巴。剣心だけでなく、観客の心にも刻まれる出来事が待ち受けていました。どうやって剣心の頬に十字傷が付くのかは原作コミックとは違った描写となっており、「終わり」と「始まり」がそこにはあります。
■『るろ剣』シリーズのラストにふさわしい作品!
シリーズを締めくくる最後の作品で剣心の過去を描くのはなぜなのかという疑問は、『The Beginning』を観ることで腑に落ちました。『The Final』で剣心が対峙し、息もつかせぬ死闘を繰り広げる縁は、巴の実の弟です。縁が「人誅」を下す最恐の敵として現れた時、剣心は「首謀者の名前は雪代縁。拙者がこの手で惨殺した妻、緋村巴の弟でござる」と告白していました。『The Final』でも回想として登場していた剣心と巴の物語は、『The Beginning』によってさらに深く掘り下げられ、剣心の過去を余すことなく映し出します。映画『るろうに剣心』はキャスト・スタッフだけでなく、観客からも愛された作品。『The Beginning』は過去をふくめ剣心のすべてを描き切ることで、観客のこれまでの“るろ剣愛”に感謝を伝えているのではないでしょうか。一観客としてですが、シリーズを締めくくる作品は、この作品以外にはなかったと確信しています。
剣心への憎悪をたぎらせた縁が“東京総攻撃”という凶行に至った背景には剣心による巴の惨殺があり、『The Final』と『The Beginning』の2作は密接につながって、まさに究極の『最終章』として完成しています。そして、この2部作としての関係性がにくいんです。『The Beginning』を観て剣心と縁が抱えていた過去を理解することで、もう一度『The Final』を観たくなります。実は最初に『The Final』を観て、『The Beginning』を観て、もう一度『The Final』を観るという“最終章サンド”を味わったのですが、剣心のセリフの奥にある心情、縁と対峙した時の行動の理由など、新たな視点・発見を楽しむことができました。
そして、最後にここで強調しておきたいのは、『The Beginning』が『The Final』だけでなく、これまでの映画『るろうに剣心』シリーズ全体の魅力を倍増させてくれる最高傑作であるということ。その理由は「『The Beginning』を観ればわかります!」としかここでは書けないのですが(ネタバレになるので)、きっとエンドロールを見ながら「『るろ剣』シリーズ、ずっと観てきてよかった……」という気持ちになります。
■『るろうに剣心 最終章』取材記事一覧
『るろうに剣心 最終章 The Final』は公開中 『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は6月4日公開
(C) 和月伸宏/集英社 (C) 2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会