オヤジアクションの最高峰!6月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
今月の5つ星映画は、『るろうに剣心』シリーズの最終章2部作の第2弾、中年オヤジのハードボイルドアクション、実体験を基に描いた人間ドラマ、第70回ベルリン国際映画祭最優秀監督賞受賞作、毒母のサイコスリラー。これが6月の5つ星映画5作品だ!
剣心=佐藤健の生きざまを目撃!
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』6月4日公開
和月伸宏の漫画を大友啓史監督が映画化したシリーズの最終章2部作の第2弾。公開中の『るろうに剣心 最終章 The Final』と共にシリーズ10年の集大成となる。『The Beginning』が描くのは、物語の原点である剣心の過去。壮絶な最終決戦を描いた『The Final』とは、時代背景やそれを描き出す演出、アクションの趣など、あらゆる点で好対照をなしており、2作が同時期に公開されるからこその見応えがある。そして、剣心の内面までも演じ切った佐藤健の表現力の研ぎ澄まされっぷりがすごい! 不殺の誓いを立てる前、真剣を手に人斬り抜刀斎と恐れられた頃の剣心は、表情からアクションまで何もかもが鋭利。映画化を切望し続け物語に挑んだ佐藤の並々ならぬ覚悟は、役にそのまま表れている。狂気がにじむ殺陣を披露する冒頭から、佐藤はその身に剣心を宿しており、観客は剣心=佐藤の生きざまを目撃したと思えるほどだ。(編集部・小山美咲)
究極のストレス発散!オヤジアクションの最高峰が誕生
『Mr.ノーバディ』6月11日公開
壮絶な過去を抱えた、一見平凡な中年オヤジの覚醒を描くハードボイルドアクション。『96時間』『ジョン・ウィック』に代表される「ナメてた相手が強かった」系のアクション映画だが、キアヌ・リーヴスやリーアム・ニーソンと違い、「ベター・コール・ソール」のボブ・オデンカークが演じる主人公ハッチは、家庭にも職場にも居場所がない、世間に舐められまくる超普通のオヤジ。約2年間のトレーニング(!)で本作に備えたオデンカークは、その凄みをおくびにもださず、中年の悲哀を見事に体現してみせる。それだけに、主人公の鬱憤がついに爆発するファイトシーンの快感は別格だ。自身もボロ雑巾のようになりながら、ナメてきた若造を徹底的にぶちのめすハッチ。傷だらけで帰宅したその姿は実に痛々しいが、その顔は、観客の心を反映したかのように晴れ晴れとしている。ゲーム感覚とリアルファイトが融合したアクションは新鮮で、家庭を守ることがいかにハードな仕事なのかも教えてくれる、オヤジアクションの最高峰といっていい。脇を固めるベテラン俳優陣の配役もニクいく、なかでも、ドクことクリストファー・ロイドのシブさには拍手喝采となること確実だ。(編集部・入倉功一)
丁寧な仕事が積み重なった名作
『名も無い日』6月11日公開
『健さん』『エリカ38』などの日比遊一監督が弟を亡くしたときの実体験を基に描いた人間ドラマ。訃報により故郷へ戻った主人公が、家族や周囲の人々の思いと共に、回想しながら現実を受け止めようとする姿を映し出す。写真家でもある日比監督だけに、明暗や構図が計算された映像美は圧倒的。セリフに頼らず、間の取り方や役者の表情で物語を紡ぐ演出力も光り、ちょっとした動作にも情緒が宿る。スタッフの技量だけでなく、主演の永瀬正敏(長男・達也役)をはじめ、オダギリジョー(次男・章人役)、金子ノブアキ(三男・隆史役)のほか、今井美樹、真木よう子、故・木内みどりさんら実力者の丁寧な仕事が積み重なった名作。弟に何が起こったのか。心の痛み、真の孤独と向き合うテーマは重いが、作品の魅力は衰えず、最後まで引き込まれる。(編集部・小松芙未)
いつのまにかのめり込む韓国発の丁寧な人間ドラマ
『逃げた女』6月11日公開
『3人のアンヌ』『それから』などのホン・サンスが監督・脚本・編集・音楽を担当し、第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門では最優秀監督賞を受賞した韓国発の人間ドラマ。結婚して5年間、一度も夫と離れて過ごしたことのなかった主人公が、夫の出張中に知人たちのもとを訪れ、互いの近況を報告し合っていく。シンプルで洗練された映像の中で繰り広げられる会話劇に過剰な演出はなくとても静かで、どこかに実在する女性の日常をのぞき見しているかのようにナチュラル。その自然さの裏には、丁寧に練り上げられた脚本があり、登場人物たちの会話に心をかき乱され、いつの間にか物語にのめり込んでいく。『夜の浜辺でひとり』などのキム・ミニは、共感を誘い、誰もが寄り添いたくなる主人公を見事に演じきっている。「こういった映画もまさに映画である」と思わせてくれる、韓国映画の奥深さを垣間見ることができる良作。(編集部・海江田宗)
怖すぎっ!母親の歪んだ愛を描いたサイコスリラー
『RUN/ラン』6月18日公開
パソコンの画面上で物語を展開させた、画期的なサスペンススリラー『search/サーチ』のアニーシュ・チャガンティ監督が、母親の歪んだ愛を描いたサイコスリラー。生まれつきいくつもの慢性疾患を抱えながらも、大学進学を夢見る娘と、彼女を献身的にサポートし続けてきた母。だが、娘が、人間が服用してはならない薬を与えられていると知ったことから、物語は一気に母親の狂気へとシフトしていく。内に秘めた静かな狂気から歪んだ愛情を爆発させる、繊細かつ大胆な演技で毒母を演じたサラ・ポールソンは、文句なしに、ただただ怖い! しかし、そんな実力派の彼女とガチの心理戦を戦い抜いた、新人のキーラ・アレンの熱演も素晴らしく、プライベートでも車いすを使用しているというリアルさがあってこそ、極限サバイバルでの説得力も増し、狂気の世界に引き込んでくれる。また、物語の伏線を最後まできれいに回収をしているのも、スッキリして気持ちがいい。(編集部・浅野麗)