元祖スパイダーマンのトビー・マグワイアは俳優を引退したのか?
あの人は今
サム・ライミ版『スパイダーマン』三部作の一作目が公開されてからおよそ20年。当時27歳だった主演のトビー・マグワイアも45歳に。しかし、2015年の『完全なるチェックメイト』以来、トビーをスクリーンで見ることはなく、すっかり「あの人は今」状態になっています。そんなトビーの近況を調査してみました。(文・岩永めぐみ)
10代でデビューしレオ様と親友に
幼くして両親が離婚し、母親の勧めで演技を始めたトビーは、10代のときからキャリアをスタートさせています。18歳のときに出演した『ボーイズ・ライフ』(1993)では、レオナルド・ディカプリオ(以下:レオ様)演じる少年の友人役を演じています。オーディションで度々顔を合わせていた1歳年上のレオ様とは、プライベートでも親友になりました。レオ様が『タイタニック』(1997)で来日した際には、トビーも同行していましたが、このとき日本ではまだ注目を集めるような存在ではありませんでした。
同じころ、トビーにも主要な役が回ってくるようになります。アン・リー監督の『アイス・ストーム』(1997)では主人公一家の息子を演じ、『ビッグ』(1988)の脚本を手掛けたゲイリー・ロス監督の『カラー・オブ・ハート』(1998)やアカデミー賞脚色賞を受賞した『サイダーハウス・ルール』(1999)で主演を張り、将来を期待されるようになりました。
親しみの持てるヒーロー像が世界中で人気に
マーベル・コミックスのヒーローを映画化した『スパイダーマン』三部作(2002、2004、2007)は、当初、主人公ピーター・パーカー役の候補にはレオ様の名前も挙がっていましたが、『サイダーハウス・ルール』を観たサム・ライミ監督はトビーを主演に抜てきします。『サイダーハウス・ルール』でトビーが演じた内気な孤児という役どころは、一般的なスーパーヒーロー像とは一致しませんが、『スパイダーマン』のヒーロー像にはぴったりでした。主人公は、両親を亡くしておじさんとおばさんに育てられ、オタク気質で自信がなく、クラスメートにいじめられている少年。そんなどこにでもいるような少年が超人的なパワーを得てヒーローになる様子は、世界中に熱狂的なファンを生み、大ヒットを記録しました。
しかし、『スパイダーマン2』の製作時、トビーに降板の危機が訪れます。『シービスケット』(2003)で競馬の騎手を演じた際に背中を痛め、アクションシーンを演じられないのではないかと危ぶまれました。代役にジェイク・ギレンホールを立てることも考えられていたといいます。代役を立てることなく、無事にトビーが主演した『スパイダーマン2』は、シリーズ中で最も高評価の作品になりました。
キャリアの裏でプライベートでの問題行動も
トビーはかつてドラッグやアルコールの問題を抱えていました。アルコール依存症を克服しようとしていることをプレイボーイ誌で告白していましたが、のちにガーディアン紙では薬物やアルコールをすっかり断ち、19歳からは禁欲的な生活を送り、ビーガンになったと語っています。
また、『スパイダーマン』シリーズで急激に有名になった時期に、熱中していたのがポーカーでした。非合法のポーカークラブにまで通い詰め、メンバーにはレオ様やマット・デイモン、ベン・アフレックなどもいたといいます。2011年、非合法ポーカーに参加していた投資家が詐欺で逮捕され、そこで高額な掛け金を得ていたトビーは、一部を返還するよう訴えられました。さらに、クラブを仕切っていたモリー・ブルームが自伝を出版。その中で、トビーらを実名で登場させ、トビーの腹黒さをすっかり暴露したのです。その本を映画化した『モリーズ・ゲーム』(2017)では、セレブたちをミックスさせたキャラクターが“プレイヤーX”という名で描かれています。
ユニバーサル・スタジオCOOの娘と結婚
気になるトビーの恋愛遍歴ですが、『スパイダーマン』でブレイクする前は『セレステ∞ジェシー』(2012)などの女優で、マイケル・ジャクソンのプロデュースや映画音楽を手掛けていたことで知られるクイーンシー・ジョーンズの娘ラシダ・ジョーンズと交際していたことも。『スパイダーマン』で共演したキルステン・ダンストとの間にも恋が芽生えますが、交際は長くは続きませんでした。
そして、2003年ごろから交際を始めたのが、ユニバーサル・スタジオのCOOロン・メイヤーの娘で、ジュエリーデザイナーのジェニファー・メイヤー。2006年4月に婚約し、11月には長女のルビーちゃんが誕生。2007年に正式に結婚し、2009年には長男のオーティスくんが生まれています。しかし、2016年に別れることを決め、2020年にジェニファーが正式に離婚を申請したと報道されました。
『スパイダーマン』の名声から一転、出演作が激減!
『スパイダーマン』三部作の成功によって、明るい将来が待ち受けていたかに見えたトビー。続いて出演した『マイ・ブラザー』(2009)では、アフガニスタンに従軍してPTSDになる兵士を繊細に演じ、ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門の最優秀主演男優賞にノミネートされました。2012年には『華麗なるギャツビー』でレオ様との3度目の共演を果たし、ギャツビーの仲間で物語の語り部でもあるニック・キャラウェイにふんしました。しかし、実写映画は2015年の『完全なるチェックメイト』を、声優としては2017年の『ボス・ベイビー』(大人になったティムの声を担当)を最後に、現在まで出演作がない状態となっています。
非合法の賭博で訴えられたこと、離婚によって義父の強力なバックアップを失ったこと、『サイダーハウス・ルール』(1999)で共演したシャーリーズ・セロンがV magazine誌で「トビーとの共演は少しつらい時間だった」と語ったように、トビーに気難しい一面があることなど、さまざまなことが絡み合って影響しているのかもしれません。出演作がない状態は心配になりますが、実は現在のトビーはプロデュース業に力を入れているよう。2012年に制作会社マテリアル・ピクチャーズを設立したトビーは、自身が出演した『完全なるチェックメイト』のほかに『ロック・オブ・エイジズ』(2012)や『死の谷間』(2015)、『ゲット・デュークト!』(2020)などの製作に携わっています。さらに今後も『ラ・ラ・ランド』(2016)のデイミアン・チャゼル監督とブラッド・ピットがタッグを組む『バビロン(原題) / Babylon』や、『ダイ・ハード』シリーズの新作『マクレーン(原題) / McClane』などのプロデューサーに名を連ねています。
トビーは俳優業を引退したのか?
2019年、ハリウッド・レポーター紙はトビーに「もう演じることはないのですか」とストレートに質問をぶつけました。トビーは「僕が引退したかって? 演じようと思える役があればやるよ。そうなったらワクワクするだろうね」と引退したつもりはまったくない模様。インタビューから2年が経ち、いまも出演作は決定しないままですが、ファンは彼が出演する気になる作品に出会うことを待つしかなさそう。一方でプライベートでは、2018年ごろから18歳年下のガールフレンド、タティアナ・ディエテマンさんとデートしているところを報じられています。この謎の美女は、レオ様のホームパーティーで出会ったモデルなのだとか。レオ様との友情も変わらないようで、また共演の機会が訪れることも期待したいです。