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怖すぎ注意!あおり運転の恐怖を描いた映画たち

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アオラレ
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 日本では「あおり運転」という名前ですっかり定着した自動車の迷惑行為。英語では「ロードレイジ」ともいわれる、運転中にほかの運転者をあおることで通行を妨害する危険な振る舞いのことだが、こうした恐怖は映画作品にも数多くの題材を提供してきた。今回は5月28日公開の映画『アオラレ』をはじめとする、あおり運転を描く映画を紹介する。(編集部・大内啓輔)

ラッセル・クロウが怖すぎ!

アオラレ
『アオラレ』見るからに怖い… - (C) 2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

 『アオラレ』では、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『グラディエーター』や『ビューティフル・マインド』『ロビン・フッド』などで知られるラッセル・クロウがあおり運転をエスカレートさせる謎の男に。ぶくぶくに増量し、巨体をもてあましたようなラッセルは終始、恐怖を感じさせるとともに不快感たっぷり。その怪演っぷりには誰もが恐れおののいてしまうはず。

 シングルマザーのレイチェル(カレン・ピストリアス)は、朝からすべてがうまくいかずにイライラしていたある日、信号無視する前方の自動車に乱暴にクラクションを鳴らしてしまう。そこから執拗に繰り返されるあおり運転には逃げ場のない車内の閉塞感もあいまって、あまりにも耐え難い時間。それにとどまらず、男の狙いが彼女の息子や知り合いにも理不尽に及んでいく過程には思わず身の毛がよだつほど。

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アオラレ
『アオラレ』カレン・ピストリアスも好演! - (C) 2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

 だが、映画の冒頭で報道番組のような演出が挟み込まれるように、この“怪物”を生み出したのが、現在の社会にある不寛容なのかもしれないとも考えさせる。標的が離婚調停のために弁護士を雇っていることを知った途端、男の怒りが加速するように、どうやら彼にも暗い過去があることがほのめかされる。それは『ジョーカー』のアーサー・フレックに通ずるところもある、社会的弱者としての白人男性像ともいえるかもしれない。

 恐怖を味わうレイチェルを演じるカレン・ピストリアスは、息子を守ろうと負けん気あふれる気の強いところを見せるシングルマザーを表現。身体を張った、まさに熱演というべき演技を披露している。

始まりはいつも……

 『アオラレ』における悲劇の始まりは、瞬間的な苛立ちから鳴らしてしまったクラクション。映画作品であおり運転が登場するとき、それは少し軽率な振る舞いから生じることが多い。デヴィッド・リンチ監督の『ロスト・ハイウェイ』(1997)でも、そんな教訓を与えてくれる名シーン(?)が存在する。映画の中盤、マフィアのボスがあおり運転に加えて薬指を立てられたことにブチ切れて、車から引きずりおろした運転手を「交通ルールの本を買え!」と脅す、なんともシュールな展開が繰り広げられる。

激突!
あおり運転を描いた映画の古典といえば『激突!』 - ABC / Photofest

 あおり運転の恐怖を描いた作品の古典とも言えるのは、何と言ってもスティーヴン・スピルバーグが監督した『激突!』(1971)。知人のもとへと向かうべくハイウェイを急ぐ平凡なセールスマンが追い越した一台のタンクローリーが怪物と化し、執拗に追いかけてくるさまが90分にわたって描かれる。この作品でも、タンクローリーの排気ガスを不快に感じた主人公がタンクローリーを追い抜き、そして追い抜き返す小競り合いをきっかけに追走劇が始まることに。

 もともとはテレビ映画として製作された『激突!』のすごさは、運転者の素性やその執念の確固たる理由を説明することなく、追いかけというシチュエーションに徹してサスペンスを演出したこと。徹底して意思疎通が不可能な存在との格闘のみに焦点が絞られているのだ。スピルバーグはその後も、このテーマを『JAWS/ジョーズ』(1975)などでも本格的に描いていくことになる。

ロードキラー
『ロードキラー』イタズラはほどほどに - Fox-Regency / Photofest

 また、青春スリラー版の『激突!』ともいうべき、J・J・エイブラムスが脚本・製作を務めた『ロードキラー』(2001)では、自業自得ともいわれかねない低俗な悪戯が火種となる。大学生活最初の夏休みを迎えた弟と、保釈されたばかりの問題児の兄がCBラジオ無線機でキャンディケーンという名前の女性と偽って、偶然に無線が繋がったトラックドライバーを誘惑。別の男性が泊まったモーテルの部屋に誘い出したことで、運転手を激昂させてしまう。

 『ワイルド・スピード』シリーズなどでも知られた故ポール・ウォーカーをはじめとした若手キャストが集結し、劇中では時折、爽やかなロードムービーという感もある『ロードキラー』。スティーヴ・ザーンふんするお調子者の兄の言動はあまりにも軽薄なものだが、その代償は重すぎた。ラジオ無線機から響く不気味な声や、相手が近くに来たことで通信が復活するという小道具を用いた巧みな演出も冴えている。

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あおり運転の“本場”は……

 あおり運転は日本ではもちろんのこと、世界で問題になっている社会的なトラブル。だが、映像作品を通して馴染みがあるのは、先にも触れたようなアメリカ映画の数々だ。そのイメージの源泉にあるのは、やはり『激突!』でも舞台となったような茫漠たる荒野のハイウェイの光景だろう。『激突!』ではカリフォルニアへ向かう道程が描かれたが、この果てしなく続く逃げ場のない世界が物語に想像力を提供するのだ。

 ファッションデザイナーのトム・フォードが監督した『ノクターナル・アニマルズ』(2016)に登場する劇中劇では、テキサスのハイウェイで2台の車から嫌がらせを受ける恐怖が描かれている。この場面は視界の悪い夜であることに加えて、銃社会における身の危険も恐怖に拍車をかけることになる。1990年代の『激突!』と評されている『ブレーキ・ダウン』(1997)や、『スリーピー・ホロウ』(1999)、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)などのキャスパー・ヴァン・ディーンが主演した、その名も『ロードレージ』(2000)などでも、物語の舞台はやはりハイウェイだ。

ノクターナル・アニマルズ
『ノクターナル・アニマルズ』まさにアメリカという光景 - Focus Features/Photofest

 そんななか、『ブロークバック・マウンテン』(2005)などのランディ・クエイドなどが出演した『ブラック・キャデラック』(2002)では、吹雪が舞うなかで黒塗りのキャデラックに追いかけられるという一味違うスリルを味わうことができる。

 日本で紹介される作品もアメリカ映画が多いものの、あおり運転の恐怖は万国共通であることを教えてくれるのがオランダ映画の『ロード・インフェルノ』(2019)。家族での帰省中にあおり運転をしたことから、実家にまで追いつめられてしまうという恐怖が描かれる。この作品でもハイウェイが舞台で、問題の引き金は自分たちの一瞬の感情による軽はずみな行為であることに加えて、必要以上に自信家であることで悪い結果を生むことになるのは、どこも事情は同じことなのだ。

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変わり種も!

 ほかにもピーター・フォンダウォーレン・オーツなどの個性派が共演し、悪魔崇拝者集団による恐怖の追跡を描く『悪魔の追跡』(1975)や、ヒッチコックの新たなる後継者と謳われたリチャード・フランクリンによる『ロードゲーム』(1981)、ニューマスター版の公開も話題を呼んだ『ヒッチャー』(1985)、フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮を務めた『ジーパーズ・クリーパーズ』(2001)、クエンティン・タランティーノ監督が1970年代から80年代のB級ホラーにオマージュを捧げた『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)などなど、あおり運転が劇中に登場する映画は数知れず。

クリスティーン
『クリスティーン』逃げてー! - Columbia / Photofest

 さらなる変わり種も。『悪魔の追跡』と同様に、70年代のオカルトブームに乗じて誕生した『ザ・カー』(1977)では、中西部の田舎町に突然出現した、無差別に殺人を繰り返す黒塗りの自動車が恐怖を巻き起こす。保安官を好演してジェームズ・ブローリンの演技が見どころ。また、車そのものが生命を宿すという設定で言えば、ジョン・カーペンター監督がスティーヴン・キングの同名小説を映画化した『クリスティーン』(1983)も見逃せない。内気な高校生が58年型のプリマスに「クリスティーン」と名付け、特別な愛情を持ってその車に接するうちに性格が攻撃的になっていく姿が、青春映画さながらの雰囲気もたたえながら描かれている。

 『アオラレ』をはじめ、あおり運転を描いた映画は恐怖感情を高めるとともに、その恐ろしすぎる運転手の圧倒的な存在感で笑って堪能できもする。だが、現実問題としての迷惑行為は笑えるものではない。映画作品の悲劇を教訓に、清く正しい安全運転を心がけたいものだ。

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